見出し画像

バルセロナで学ぶアントレ教育について

2020年の9月からスペインのバルセロナにあるHarbour.Spaceという一風変わった大学院で、High-Tech Entrepreneurship(直訳:ハイテク起業精神)を学んでいる。「Harbour.Space大学ってどこ?」とか「なんでわざわざそんなマニアックな大学院に行ったの?」等の興味を持っていただいた方は、下記の記事で少しだけ経緯や理由などを書いているので、ご笑覧いただければ嬉しい。

尚、ありがたいことにこの記事を書いてから、大学院で行われる授業やMBAとの違いなどについて、質問やレスポンスを複数いただいた。そこで、スペインに着いてから約1ヶ月が経過して大学の生活にも慣れてきたとこでもあるので、振り返り的な意味も兼ねて大学での授業やクラスメイト、授業を受けた所感をばらばらと書いてみたいと思う。

少人数ながら多種多様な同級生たち

初日のオリエンテーションで感じたのが、クラスメイトの国籍がかなりバラバラなこと。総勢50人強の同級生がいるので、正確に全員の国籍を把握しているわけではないけれど、約40カ国くらいのバリエーションがある。バルセロナという地理的な要因もあり、若干ヨーロッパが多めではあるものの、フランス、イタリア、ドイツ、スペイン、イングランドなどの有名どころだけではなく、ジョージア、アルメニア、ウェールズのようなやや馴染みの薄い国(失礼)や、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、キューバ、エクアドルなどの中南米から来ている学生も多い。ちなみにアジアは割合としてやや少なく、日本人は僕一人だけである。そのため、ランチに行くとそれぞれの母国の日常を話すだけで、それなりに盛り上がったりする。

画像1

ちなみに年齢的には一番多い層が20代半ば。でも下は18歳(!!)から上は40代後半くらいまで。30代前半の自分は、当然ながら上から数えた方が早い。コロナ禍の影響でまだスペインに入国できていないクラスメイトもおり、全員揃う日が待ち遠しい。

3週間単位のモジュール制という授業形式

Harbour.Spaceの特徴の一つが、全ての授業が3週間という単位(モジュールと呼ばれる)で行われること。3週間ごとに授業のテーマも教授も都度変わる。生徒は、皆自分の専攻を考慮した上でどの授業に出るかをチューター的な担当者と相談しながら、選択していく。ちなみに、1日あたりの授業は3時間半程度。

このモジュール制という仕組みが取られている背景としては、担当する教授がアカデミックではなく、ビジネス側の人が多いということに起因している。アントレプレナーとして大きな成果を残していたり、有名なプロダクトを手がけてきたようないわばビジネスの最前線にいる人たちにとっては、半年や通年という長い期間で授業を担当することは不可能に近い。けれどテーマを絞って、1日3時間半×3週間ならなんとか時間を捻り出せるのだろう。参考までに教授の一覧のページを下記に貼っておく。

ちなみに、最初のモジュールは、クラスメイトのチームビルディング的な意味合いもあり、全専攻のの生徒が参加しており、複数の教授が担当するなどやや変則的だった。ただ、どの授業も共通して非常にインタラティクティブなコミュニケーションを前提に成り立っており、人数が少ないこともあって発言やピッチなどの機会も多いため、高いレベルでのコミットメントを求められるのは特徴の一つだと思う。

また、昨今のコロナ禍の影響を受けて、オンライン/オフラインのどちらでも参加可能という授業形式が取られている。バルセロナでも10月18日現在でバルやレストランの営業が禁止されるなどやや緊張感は高まっている環境であるが、検温や消毒の徹底、マスクルールなどかなり厳しいガイドラインがありつつも、可能な限りオフラインでの実施にこだわりたいという大学運営側の気概が、随所に見え隠れてしていて、個人的にはとても心強く思っている。

3週間の初授業を受けた所感

最初のモジュールが終わって得た最も大きな所感は、アントレプレナーシップを新しい教育の根幹に据えていること。いわゆるスタートアップの論理やフレームワークのような知識的な内容は当然出てくるのだが、それにも増して、アントレプレナーとしてのマインドセットを深く問われる瞬間が何度もあった。心身に踏み込むような内省を次々と求められるし、クラスメイトとのワークを走らせながら、与えられた知識や理論をどう解釈し、どう使うべきかを何度も議論・体験しながら言語化していく。繰り返しピッチをさせられ、フィードバックの価値を十二分に実感させる。これらをアントレの専攻でないデザインやテクノジー専攻のクラスメイトにも強く求め、一緒に考えさせる。本当にとても貴重な経験だと思う。

画像3

さらに言えば、このHarbour.Space自体が、先進的な大学であると同時にスタートアップそのものであると思う。創業6年目の大学で、私は5期生になるのだけれど、本気で教育にイノベーティブなアプローチを取り入れようとトライアンドエラーを繰り返している。結果として、昨年大学を見学に訪れた時よりも大学の教授の数が飛躍的に増えている。また授業のラインナップも魅力的で、各モジュールでどの授業を取るかが本当に難しいという贅沢な悩みになっている。一方で、昨年開講されたコースが必ずしも開講されるとは限らないし、伝統のある大学院のように立派な図書館やキャンパスはない。また一部の制度が整っていなかったりすることもあるけれど、全ては大学が掲げる「教育システムを変革し、時代に合った教育と環境を学生に提供したい」という思想に基づいて、トライアンドエラーが日々繰り返されていると感じるし、自分はその心意気と姿勢がとても素敵だと思う。

次のモジュールに向けて

この3週間で、2つのスタートアップアイディアで2回チームを組成して、数え切れないくらいピッチをさせられて、鋭いツッコミをクラスメイトや教授から受けるうちに、英語でピッチすることが怖く無くなってきた。(最初はめちゃくちゃ緊張した)ピッチは、慣れとテクニックによるところもかなり多いと思うので、引き続き磨いていきたいと思う。

また「12月までに今のアイディアとチームでワークを続けて、プロトタイプまで作って、ちゃんと検証して発表してね。」といういかにもなスピード感で、アイディアをドライブさせざるを得ない環境なので、チームで一日も早くアイディアを形にしていき、沢山失敗して沢山学ぶことがとても大事なマインドセットだと体に叩き込ませたい。余裕があれば内容もおりを見て、このnoteで公開できたら良いなと考えている。

一方で、多くの海外MBAにいく日本人留学生が抱えるのと同じように、やはり日常会話が一番難しいと痛感する。ピッチはまだプレゼンを準備する時間があるし、双方的になるのは質疑応答という限定的な瞬間だけだが、皆で雑談したりご飯を食べているときに飛び交う高速かつ省略される英語に、どうしてもついていけない時がある。オンライン英会話でありがちな「一人が話している時にもう一人が聞いている」というようなトランシーバー的な会話とは大きく異なり、カットインあり、重複ありの複合技なので、本当に集中していないとすぐに「何で笑っているのかわからない」「もうだめだ、お腹減った」「今日のご飯何食べようか」という悲しい現実逃避に陥りながら、半笑いで空を眺めることになる。要するにできないとストレスフルだし、死活問題なので、授業やクラスメイトとの会話以外にも英語に触れる時間を引き続き確保して、地道に向上させていこうと思っている。

画像4

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?