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エンタメと芸術、内向型と外向型

Netflixで「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」のアニメが配信されていたので、久しぶりに見てみた。

2011年のフジテレビノイタミナで放送されたアニメで、放送された当時は泣けるアニメとして私の周りで話題になっていた。

それから何度か見ているのだけど、やっぱり今回も泣ける。一話目から泣いてしまった。

続きが気になる!!というようなストーリーの展開はそこまでないのだけど、幼くして亡くなってしまった少女めんまを想う、友人家族それぞれの感情が上手く描かれていて、のめり込む。登場人物それぞれの感情が、思春期特有の恥ずかしさや湿っぽさ、緊張感、甘酸っぱさといった青春の空気と共に、ぐあんと心に迫ってくるのだ。

最後まで見終えて、私が号泣しながら面白かったと言うと、彼に「そうかな? まあまあだな」と言われた。

うそ。衝撃である。

「このアニメってどんな人が見るアニメなの? オタク向けなの?」

と言われ、

「いや、もうこの世の全員が見てる名作アニメだよ」

とおおげさに返す。

それで、確かにこのアニメって私の周りでは話題になっていたけど、どのくらい人気のアニメなのだろうと気になってきたので、検索してみた。

ヒットしたのはアマゾンのページで、レビューを見てみると意外にも賛否両論。「最高!」という人もいれば「退屈」「ストーリーがない」という人もいた。

このレビューを見て、私は心から……なるほど、と思ったのだった。

思い出すのは、大学のときに人格心理学の授業を受けていたときに学んだ、ユングのタイプ論。

人間は大きく分けると「外向型」「内向型」という二つのタイプに分類されるという話。

簡単にいうと、外向型の人は、意識が外界に向いている人。人と会話したり関わるのが得意で、周りの状況や意見に合わせられる人。

それに対して内向型の人は、意識が自分の内側に向いている人。自分の内面についてよく考えていて、自分の意見を持っている人。

更に噛み砕いて今どき風に考えると、外向型=陽キャラ内向型=陰キャラ、といえるかもしれない。外向型の人は、クラスの中心で盛り上がり、友人も沢山いて部活に打ち込み学校生活を楽しめる人で、内向型の人は、クラスのはじっこで色々考えていて中心の人たちを馬鹿にして斜に構えて見ているような感じだと私は思っている。
極端に言えば、外向型は営業マンタイプで、内向型は芸術家タイプ、みたいな。


そこで、エンタメと芸術の違いを私はよく考えるのだけど、最近思うのは、

エンタメ=他人を楽しませる為に作るもの →外向的に作られたもの

芸術=自分の世界を表現する為に作っているもの →内向的に作られたもの

なのではないか、というのが自分の中で濃厚な説になっている。


エンタメは、ストーリーに驚くべく展開があったり、ハラハラしたり、ときめいたり、受け手の感情を大きく動かすような仕組みがある。つまり、誰かを楽しませる目的を持って、他人の為に作られたものである。

それに対して、芸術は、アーティスト独自の、簡単には表現しきれない感覚や感情、思想などを緻密に描くもの。それは一概に楽しい!となる単純なものではないけれど、受け手はその作品に触れて、こんな感性や感覚もあるのか!こんな思想もあるのか!と感心したり知的興奮を得られたりする

芸術はどちらかというと内向型の人にしか理解しづらいところがあるので、大衆的にヒットしたりお金をたくさん儲けたりということにはなかなかなれず、瀕死の危機に面してしまうことも多い。私の専攻していた純文学も死にかけているとよく言われるし…

私は、きっと内向型人間のはずで、アクション・SF・恋愛・ミステリーとかのエンタメ作品や、J-POPの爽やかなメロディーがなかなか苦手で、昔からマイナーな音楽やわかりづらい映画などが好きだった。

そんな私でも、エンタメだけど、これは大好き!というものは確かにある。

先ほどあげた「あの花」もそうだし、最近のディズニー映画や「進撃の巨人」とかも好き。

それはなんでなのかが、この「あの花」問題に直面してようやくわかった。

私がエンタメでも面白い!と思うのは、人間の心理が上手く描かれているものということが共通しているのだった。
ディズニーとか進撃の巨人も、心理の掘り下げがきちんとされているんですよね。登場人物の性格と生い立ちがきちんと決められていて、それが作中でわかる要素が多いから腑に落ちる。

人がどんなことを考えているのか、その人はどんな人でどんな人生をたどり、どんな道筋でその思考や感受性が出来上がっているのか、というのを、昔から分析したり考えたりするのが好きなので、そういう登場人物の掘り下げが少ないとストーリーの起伏があっても、基本的に私の中ではつまらない作品になってしまっているということに気づいた。

それは作品の良し悪しでなくて、単純に私の内向的な気質に合うか合わないかということだ。

世の中には、本当に複雑で様々な気質を持った人々がいて、作品はストーリーに起伏がないと面白くないという人もいるし、私のようにストーリーに起伏があっても人間のリアルが描かれていなければ面白くない人もいる。新しくなければ価値がないと思う人もいるし、古典へのリスペクトがなければいけないと思う人もいる。

エンタメでも芸術でも作品には正解がないものだけど、何か作品を通して好き嫌いの評価をするときに、作品を鏡にして自分はどういう人なのかがわかるのは面白いことだ。

最近ツイッターでこんなツイートを見つけた。


色んなことが理解できる人になりたいと心から思う。

色んな経験をして、色んな知識を得て、色んな人のことを理解して。


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