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結婚しました

白く光る空から大粒の雨が降り続く、2020/10/10の朝に、結婚した。

駐めた車から区役所まで歩く道、あまりの大雨にドン引きながら、傘をさしても濡れてしまい、きゃーと騒ぎ、時間外受付のある地下へと進んだ。窓口のおじさんはとても感じがよく、次から次へとカップルが婚姻届を持って現れ、こんなに結婚する人がいることに驚いた。
「We’ve just married」と書かれた絶妙にダサい花柄の撮影スポットがあって、その前で記念撮影。区役所の人が気を利かせて作ってくれたと思うとかわいくて笑えた。

彼とは付き合って2年半で、同居して1年と少し。
結婚に対して、キラキラした幻想や世間体を気にするなどの概念は私にはもうなく、自分たちがどうありたいか、いっしょに過ごしてやっていけそうか、時間を設けて考えた結果、このタイミングで結婚することにした。

恋人を選ぶときの条件ってなにって聞いたら、だいたいの人がスラスラと口から出てくる。
私も社会人になってから付き合う相手は、親が気にいる相手、結婚して安定的にやっていける相手、誠実で優しい相手、などなど条件を頭で考えて、恋人を選んでいた。
結婚できないような相手と付き合ったっていつか別れることになるし、結婚を見据えて相手を選ばないとね、という感じで。

彼と出会ったとき、私は彼の話し方や身にまとう雰囲気から、天日干しした布団のようにカラッとした、裏のない素直さと明るさのようなものを感じて、そこに惹かれた。
今まで我儘に生きていた自分が、初めて自分よりも相手を大切にしたいと、人を愛おしく思うような感情がふわっと降りてきたのだった。
でも出会った当初の彼は、ほぼフリーターで貯金もなく毎日のように遊んでいて、今までの条件でいえば明らかに付き合ってはいけない類の人間だった。

いつもだったら友達でいいやとなるのだけど、そのときの私は「親がどうとか、結婚がどうとか、お金がどうとか、そんなこと考えなくていいのなら、私は誰を選ぶのだろう?」と初めて自分に問いかけたのだった。
親は自分より早く死ぬし、結婚相手に会うのはたかが年に数回だけ、毎日一緒にいるのは自分だ。しかも残りの人生60年ほども長く一緒にいる相手。
どれだけ条件が良くても、一緒にいて好きと思えなかったら、何か嫌なことがあったときに関係はガタガタと崩れ出す。
どれだけ条件が悪くても、一緒にいて好きと思えたら、何か嫌なことがあっても協力して立て直せる。これが全てなんじゃないか、という結論に至り、自分の感性に従って相手を選んでみよう、と付き合うことにしたのだった。

でも、付き合ってみたものの、お金もないしこのままだらだらと過ごしていたら明らかに未来はない。どんなに好きでも結婚せずにいつか別れることになる。
どうするべきかとかなり頭を悩まし、友達に相談して泣く夜もあったりして、ある日、私は彼と将来について話し合うことにした。
切り出すのはかなり勇気がいることで、付き合って数ヶ月のまだ相手の腹の内も全てわからない頃に、ラブラブな関係をぶち壊すかのように現実的な話をする。
胃が痛くなるような重苦しい空気の中、車の中で彼と話し合いをした。

まず、結婚をする気はあるのか、というところから始まり、
今はよくてもこのままの生活を続けると5年後10年後にどうなると思うか、将来はどうなりたいのか、など彼の大雑把な考え方を聞いてみたり、
親が出してくれた今までの学費はどのくらいのお金がかかっていたか、世帯を持って生活するにはどのくらいのお金や貯金が必要なのかを説いたりして、
最終的にはどのような仕事で稼いでいくのか、など具体的なことを話して、話し合いは終了。
彼の答えは全部「何も考えていなかった!」というような感じで絶望していたけど、素直に私の話は受け入れてくれた。

それから一緒に仕事の計画を立て、毎月の生活を報告し合うことで生活を立て直し、付き合って半年の頃に、2025年までの2人の人生プランを立てたのだった。
毎年の仕事と貯金、同居と結婚のプラン。そしてプラン通りに、2019年後半に同居をはじめ、2020年後半に結婚することができた。

目的や目標を持たないと、着地点を決めないまま闇雲に走っているようなもので、どこへ行ってしまうかわからないけれど、目的や目標を持つと、行きたい場所へ行ける確率が高くなる。
目的や目標を持っていても、人生は何が起こるかわからないし、気づけば見たこともない景色へ来てしまった!ということも多いので、着地点を決めつつも、想像通りにはいかないことも踏まえて楽しんで過ごしたい。

昨今は、男女平等や人種差別、LGBTへの偏見をなくそうという個人主義の世の中ですが、我が家もなるべく男女平等でありたくて、生活費も家事も全て折半で、力仕事以外は夫も妻も同じようにやっている。
男性だからといって、料理掃除洗濯ができなくていいということはないし、女性だからといってお金を稼がなくていいということもないので、お互いに指摘し合いながら、いつか1人になったとしてもきちんと生活ができるようにしている。

会社では離婚してる人が多く、夫婦関係は冷め切っていくものだ!なんてことを、よく言われる。
未来のことはわからないけれど、不満を溜めることなく話し合って、2人が納得できるように生活していけば、上手くやっていけるのではないだろうか。大きな問題にならないうちに、軌道修正は小まめに。

お互いが、自分よりも相手に優しく。

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