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映画「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」

まだ香港に住んでいた20年前頃のある日、デートとして、彼女を連れて、アニメや漫画専門のショッピングモールを散策していました。DVDが流行り始めてから、昔のアニメが次々に発売され、ドラゴンボールや、スラムダンクや、幽遊白書などの人気作品の映像ディスクがよく店舗に陳列されていました。

自分も趣味をよく彼女に押し付けていましたが、そのショッピングモールで、私たちと同じようなある男女を見かけました。その男性は、店舗のドラゴンボールDVDを見るが早いか、同行の女性に「わーわーわー!!!」と叫んでいました。その新大陸発見のような「わーわーわー!!!」という口調を、私も妻も今でもはっきり記憶しています。

「わーわーわー!!!」のような狂喜を、この間アメリカの映画館で「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」を観ていた時、百倍ぐらい目撃しました。アニメの映画なら、映画動員が初週末に集中しているパターンがあるみたいです。私も妻と初日に映画館に行って、たくさんのドラゴンボールのファンと一緒にこの最新作を観ていました。ちなみに、日本のサイトで前売券を買って、2015年と2018年の映画ドラゴンボールと同様、日本で鑑賞するつもりでしたが、コロナのせいで日本旅行がキャンセルされてしまいました。日本の映画館の綺麗さが恋しいですが、観客の反応と言ったら、アメリカの方が好きです。前回の「ドラゴンボール超 ブロリー」を観ていた時、アクアシティお台場シアターの皆がほとんどしーんとして映画を観ていました。逆に、今回のアメリカの映画館のファンは、笑ったり、叫んだり、キャラに声援したりしていました。「4DX」映画館の座席稼働や水の飛び散りの効果は、映画観客の反応をもっと拡大させたかもしれません。クラシック音楽コンサートのようなマナーにこだわったら、そんな環境が嫌でしょう。でも、2年間のパンデミックを経て、長い間家でテレビを観ていた私たちは、同じ空間で他のファンと繋がって「わーわーわー!!!」と一斉に歓声をあげられて、幸せを感じました。

「今回の劇場版を客観的に評価して」と聞かれたら、無理だと答えます。今の時点で「Rotten Tomatoes」という映画評論サイトがこの映画に「92%」という点数をつけていますが、これが賛否の平均値で、所詮主観的な意見の集まりです。ドラゴンボールとワンピースどっちの方がいい、リスと犬どっちの方がかわいい、本田翼と今田美桜どっちの方が美しい、答えがそれぞれあっても、私からすると画然たる答案があります(3つとも前者です)。初めて触れた日本の作品ではなかったですが、ドラゴンボールをテレビで観始めてから、漫画レンタル店で単行本を借りて、ナメック星編のビデオをレンタルして、連載を追いかけるために日本語の週刊少年ジャンプを買って、ファミコンのRPGゲーム「ドラゴンボール3 悟空伝」をわかるように平仮名を勉強し始めて、少しずつドラゴンボールとの絆を深めています。制作側も私のようなファンの気持ちをわかってくれているみたいです。今回のストーリーに出ている昔の組織や、昔の悪人の跡継ぎや、昔のラスボスの新しいバージョンなど、新鮮さより、レトロ感でファンに取り入ってみたようです。小ネタからストーリーの軸まで、旧知の友人と再会できるような気持ちで、大満足でした。

キャラの成長感がドラゴンボールの特徴です。この「成長」は、単に強くなることではなく、文字どおり歳を取ることです。「クレヨンしんちゃん」のしんちゃんはまだ年中の幼稚園児でも、「名探偵コナン」のコナンはまだ小学1年生でも、「ドラえもん」ののび太はまだ小学4年生でも、「ドラゴンボール」の主人公の孫悟空はもう12歳の少年から、結婚して、息子の悟飯を育てて、そして爺ちゃんになっています。漫画で、息子の悟飯を連れてみんなと挨拶したネタがあります。そして、格闘で地球や宇宙まで破壊できるようなドラゴンボールワールドでも、ここ数年間の劇場版で、妊娠、育児、ベビーシッターのようなシーンが少なからずあります。今回の映画で、悟飯ご夫婦が忙しすぎて、娘の幼稚園の迎えをピッコロに頼みました。そして、「いくつになったの?」「三才」とか、「しばらく会ってないと思ったら急に大きくなりやがったな」のようなセリフも、家族ぐるみの付き合いを表していました。悟飯の娘のパンが飛べるようになる場面は、赤ちゃんが歩けるような節目を示していました。自分が子供を持っていなくても、ドラゴンボールのキャラと一緒に、成長していることが実感できます。

映画「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」は初週末の全世界興行ランキングと全米オープニング興収で1位を獲得しました。それは、どんぴしゃりのタイミングで上映スケジュールを選んだ配給会社ソニー・ピクチャーズとCrunchyrollのお手柄だと思います。

これから、ドラゴンボールの人気が下がっていく一方かもしれません。でも、構いません。いつか、日本に移住して、日本の老人ホームに入って自己紹介をする時、「オラ、ドラゴンボール大好き!」と同じ世代の老人に言ってみたいです。年配の方々が認知症にかかっても、まだ悟空の「オラ」という名台詞を覚えていることを、確信しています。老人ホームのテレビで、みんなと「わーわーわー!!!」と叫んでこの懐古アニメを鑑賞することを、楽しみにしています。

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