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もし時間を戻せたら 中編

前編はこちら↓

LINEをするようになって数日が経った頃。
Iくんの最寄り駅から少し歩いたところにあるカレー屋さんがずっと気になっていたので、
それを口実にIくんをごはんに誘ってみた。

断られたらどうしようと思っていたが、すぐに乗り気な感じの返事が来た。
(Iくんのがかなりのフッ軽だということは、後になって分かった。)


ごはんという名の初デート当日。
めいっぱいおめかししてドキドキしながら待つわたしの後ろから、至近距離でヒョイッと顔を覗かせてきたIくん。

あれはずるかった。流石に心臓に悪かった。

Iくんとの時間は当たり前に楽しかった。
お互いにペラペラ話して、笑って、ちょっと顔を寄せてお互い好きなアーティストの新曲を聴いて。

最高に幸せな時間だったなぁ。
余韻に浸っていたくて、解散した後もその新曲の歌を何度もリピートした。


その初デートごはんを皮切りに、
私達は何回かデートをした。
カラオケに、映画に、ラーメン。
毎回誘っていたのはわたし。
Iくんは誘われるがままに、二つ返事でOKして会ってくれた。

おそらく相手は、わたしの好意に気づいていたと思う。
わたしも自分でダダ漏れだなと思っていた。


そして2月、バレンタイン。
わたしはIくんに手作りのお菓子を渡そうと決めていた。

しかし、そこで告白しようとは全く考えていなかった。
相手に嫌われている感覚はなかったけれど、
単純に自分の容姿に自信がなかったのだ。
もっと可愛くなってから告白したかった。

ちょうどバレンタイン前にデートがあったので、
その帰り際、手作りのスコーンを無事に渡すことができた。

「はい、これ。」

えっ!とかなり驚いた表情のIくん。
もしかして本命かな、って思うよね。

そこで私は、つい口走ってしまった。


「バレンタインの毒味!」

まさかの発言に、Iくんは笑っていた。
今振り返ると、苦笑に近い感じだったかも。

この一言が、後ほど大きな引き金となって
わたしは後悔することになる。


後編につづく

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