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インスタ見てたら

ある日、インスタグラムを見ていたら、赤ちゃんの画像が流れてきた。「娘が産まれました」同級生でも、結婚して子どもが産まれている人もいるんだなとユーザー名を見てドキッとした。私がかつて好意を抱いていた人だったからだ。

かつて、想像以上にかつて、小学6年生、12歳の頃、私はうさぎ係の仕事をライフワークにする勢いで、毎朝早くに登校していた。うさぎ係はもう一人女子が担当することになっていて、一緒に担当している女の子とは席も隣で、なぜか私の方をよく見てくる不思議な子だった。いつしか私に会うなり肩を叩いて来たり、授業中足をコツコツしてきたりした。小学生女子なりの微笑ましいアプローチなのだが、私は単純ボーイなのですぐさま好きになってしまった。毎朝が楽しみになり、一緒にお話するのも楽しくなった。「好きな女の子いるの?」って質問にも答えられるようになった。

そんな我が世の春を謳歌している私にあることが起こる。とある日、体育の時間だったかは忘れたが、私は怪我をしてしまった。周りから何故かあまり心配されない中、私に声をかけてくれた男の子がいた。彼はティシュやらハンカチやらを貸してくれて、先生のもとまで連れていってくれた。

そこまではよくある話なのだが、その後である。どうも彼の事を見るのが恥ずかしい。お話するのも恥ずかしい。彼の近くに行くとドキドキする。
よく分からなかった。ただ、それ以来、好きな女の子の事ばかりだったはずの頭の中が、彼の事でいっぱいになった。

どこか他の男子とは違う大人びた、自分より背の高い野球クラブの男の子。私は彼の事が好きになっていた。

女の子が好きなはずなのに、男の事が気になるなんて、そんなはずはないだろう。そう思った私は、それ以上深く考えないということにした。(私が女性も男性も好きになるタイプの人間だと納得するのは、大学に入ってからである。)

ただ、彼とは話したい。いつしかうさぎ係の女の子そっちのけで、その男の子に「靴下かっこいいね!」だの「野球のルール教えて」だの話しかけまくっていた。(恋する乙女モードである)

この手の話題で、受け入れられず悩んだという話を聞くが、私はその様なことはあまりなかった。もちろん、同性の事を「そんなふう」に見てしまう事に抵抗はあった(ある)が、どこか開き直っていた。

そんな事は記憶の彼方にしまってあったのだが、数ヶ月前、その彼が結婚し子どもが産まれたという投稿を見たことで、色々記憶が引っ張り出されてきた。彼のアカウントをフォローしていた事も忘れていたのだが、彼は進学校から高卒で公務員になり、マイホームを建て、高校時代の彼女と結婚していた。(私は男を見る目があったのだ!)

私が好意を寄せていた男の子が、大人になり結婚し子どもも産まれていると知り、なんだか不思議な気分になった。

人のライフイベントは人によって内容も、タイミングも違う。そんなことは分かっている。
しかし、今現在働けていないこと、結婚どころか、誰とも交際したことがないこと、自分自身の障害の事など、考え出したらきりがない。
メインストリームにいる彼と、そうでない私とをどうしても比較してしまうのだ。

ただ、仕事も恋愛もその他諸々、今焦ってやる事かと考えるとそうではない。今は自分の足場固めの時期だ。

私はそれ以上深く考えないということにした。

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