見出し画像

短編『何も気にならなくなる薬』その169

朝のコーヒーは美味しい。
科学的根拠はない。結局のところ気持ちの問題だ。
どんなに美味しい料理も環境次第でいくらでも不味くなる。
実際のところ私としてはコーヒーを淹れるところまで楽しんでいるところがある。

一日のコーヒーが飲める限界というのはある。
個人差もあるだろうが一日に一、二杯も飲めば十分過ぎる。
三杯飲んだことがあるが、気持ち悪くなってしまった経験がある。

朝のコーヒーは個人的にお得だ。
出先でコーヒーを飲みたくなるが、朝飲むことでもう今日はいいだろうと思える。
家で淹れるコーヒーは外で飲むよりリーズナブルだ。
結果的に節約になる。
なによりカフェのデザートの誘惑が強すぎる。
しかし、カフェはカフェで雰囲気を楽しめるから捨てがたい。
なんてわがままなのだろう。
---
日向

成長戦略

イヴ・サンローラン

「香水変えた?」
「あっ、わかります」
「なんか知ってる匂いだから、なんとかローラン」
「イヴ・サンローランですか」
「そう、それそれ」
「っていう会話が帰るときにあって」
「それで脈なしだと」
「だってこの流れからして恋人いるじゃないですか」
「昔の話じゃないの?うろ覚えだったんでしょ」
「男の人ってそういうの覚えてなくて当然ですよ。あーあ、また日陰の生活か」
「何?日陰って」
「だってそうでしょ、あんなふうに男女で表を歩いてさ、日向にいる人ってああいう人を指すと思うんだよね」
「あんまりそういう暗い考え良くないんじゃない」
「でもさー、看護師って男女の出会いも少ないし、患者に恋する理由にもいかないでしょ」
「確かに患者はどうかと思うけど、恋人がいるかもしれなくてこっちからアプローチ掛けられないなら、こっちが魅力的になって、向こうから来るの待ってみたら?向こうから来るってことは脈があるんじゃない。ほら、午前の会議で言ってた成長戦略ってやつ」
「成長戦略かぁ」

「あの、よかったら今度一緒に食事でもって」
「やったじゃない」
「でも、どうやって気持ちを確かめよう」
「腕でもなんでも掴んで、好きかどうか聞いちゃいなよ」
「わかった、頑張ってみる」

「あ、あの」
「ど、どうしたの急に腕を掴んで」
「脈があるかどうか確かめたくて」

美味しいご飯を食べます。