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【触覚とアート(さわる美術鑑賞について)ワークショップ&トーク】アーツ千代田3331

「触覚」をひらかれるのかな~。多様な感じ方を知ることができるのかな~。な感じで行ってみたら。
それどころじゃなかったです。
頭をおもいっきりぶん殴られるような衝撃をありがとうございます。
(って、ものすごい優しい穏やかな会だったんですよ)
(私の内部が衝撃だっただけですよ)

視覚に障がいがある方とアート鑑賞に行ってみたいなと思っていたものの、なかなかタイミング合わずでしたが、友人がこのイベントを教えてくれて。いや~、本当に良かったです。
創作ワークショップもトークも、「なるほど。。」だらけでした。

●イベントの概要(Webより)※ちょっと省略

登壇者:西村陽平(美術家、日本女子大学名誉教授)/光島貴之(美術家、鍼灸師)/保坂健二朗(滋賀県立美術館 ディレクター・館長)

近年さわる鑑賞活動も増えてきていますが、美術作品にふれる行為は視覚で捉えられること以外に作品鑑賞にどのような影響を与えるのでしょうか。視覚以外の感覚を頼りに、手でみる美術鑑賞についてディスカッションしていきます。
長年、視覚に障がいのある方々とのワークショップを牽引してきた西村陽平氏によるミニワークショップを実施します。トークでは、美術家としても国際的に活躍する西村氏と、視覚に障がいがあるアーティストとして発表を続ける光島貴之氏、そして2021年より滋賀県立美術館ディレクター(館長)に就任した、鑑賞を含む障がい者芸術文化活動に造詣の深い保坂健二朗氏によるクロストークを行います。

●感想①:見ないで触り描く。そのときに人が使うもの。感じるもの。(ワークショップ)

ワークショップは、4人で一つのグループ、5つほどのグループに分かれ、各自絵を描き、感想をシェアするというものでした。

まずは全員アイマスク装着。本日のお題を持ったスタッフの方がそれぞれの席に回ってくれ、お題を触らせてくれます。

そして私たちは目隠しをしたまま、画用紙に鉛筆で感じたものを描きます。

数分後。描き終わって目隠しを取ると。
一斉にワイワイ話が始まります。知り合いでも何でもないけど、ついしゃべっちゃう。
「え、紙の真ん中に描いてたつもりだったのに!」「こんなにみんな違うの?」「遠くから聞こえてくる音が気になって」「手にめちゃついてた!」などなど。

私たちは一体何を触ったのか。お題はこれ↓

無印のダメになるソファに入っているビーズのようなものです。

そして描きあがったものがこれ↓

私のグループでは、
感触を鉛筆の「シャーシャー」した感じで表現した人、
箱の上からかきまぜたつぶつぶの様子を表現した人、
つぶつぶ感を描いた人、
段ボールの中の空間を探った軌跡を描いた人(私)、がいました。

見事に全員違う。
何を感じ、何を表現するのか、全然違う。

感想をシェアしている時におもしろい事を言っている人がいました。
「色があるものと想像してたのに、実際は真っ白だった。。」と。
確かに~。なぜか感触で私も色を想像しました。不思議。

スタッフの方々もこの時、様子を見て回ってくれます。
「音は気になりました?」そう言われてハッとしました。

そう。この一連のインプット&アウトプットのときに使っていたものは触覚だけではなかったのです!

最初にお題をが自分のところまで回ってくるまでの間、目隠しされながらそわそわ待つ。触った人の「わー!」とか反応する声が近づいてくる。
描いている最中も。「ガー!ガー!」「シャ、シャ、シャ」「こつこつこつこつ」。いろんな方向から様々な鉛筆音が聞こえていました。

そうだよ。音だよ。
それが私にとっては一番の衝撃でした。
目を使わない。触覚アート。でも実は耳をかなり使っていたんだなって。

そういえば、以前いった光島さんの展示会では釘がたくさん壁に打ち付けられていました。それを友人が爪で鳴らしていたなぁ~、と思い出しました。
音。振動。それもとっても大きな情報なんだよなって。

そしてまた、今回のこのお題、絶妙すぎます。
これ、逆に「見た」だけじゃ描けないかも。

●感想②:触って美しいものとは?(トーク)

ワークショップの後は、3人によるトーク。
今回のワークショップをつくった西村氏、視覚に障がいがある美術家の光島氏、滋賀県立美術館の学芸員の保坂氏。
これまでの活動から、触覚を使ったアートで何が起こっているのか、どんな可能性があるのか、それぞれの活動の軌跡から今後に至るまで、更には参加者からの質疑応答まで興味深い話が盛りだくさんでした。
まとめきれないので、以下にメモします。

・触るアートで、晴眼者は手のひらの中心だけを使っている場合が多い。光島さんは指を使っている(保坂氏)。それは奥行き、深さ、高さを確認しているから(光島氏)。

・(「さわって面白い美しさ」とは何か?という問いに対して)「触って面白いものは見ても面白い」(西村氏)

・大きな作品を触るとき、順番に触って行って、徐々に全体像がわかる。分かった時に感動する(光島氏)。

・触ることによってエモーションが動かないとダメ(西村氏)動く、動いている、振動を感じる、体の内部を感じている(保坂氏)

・杖は反響音を使ってモノとの距離を感じてる。空間認識。音響工学の人とコラボしたい(光島氏)

・ピーマンの中身がないことは触って初めてわかる(西村氏)

・今、美術館は対話型鑑賞などでひらいて行こうとしているが、「感覚への気づき」という方向も目指したい(保坂氏)

・(見るだけでなく)肉体をつかってわかることもある(西村氏)

●まとめ

「見る」以外の感覚、「触る」と「聴く」を使って何かにふれ、絵を描いてみて感じた事は。
まず、そもそも触らないと、聞かないとインプットできないことが色々あったんだよなっていう当たり前の事を全く意識できていなかったなって。衝撃。音と触覚で世界の広さと深さを改めて。

「触る」というのは、単に表面のつるつる、すべすべなどのテクスチャー感を確認するだけではなく、その大きさ、固さ、深さ、重さ、それが何であるのか、全体像を把握することでもあったのだ、という驚き。

何かを捉える、感じる、というのは果てしなく広くて深い。

私はもともと二次元のアートよりむしろ空間の方が好きなくらい、3次元な人だと思ってたのに、ぜんっぜんわかってなかったわ。
という、頭を思いっきりぶん殴られるような気持ちの良い体験でした。










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