フクロウ屋
先日、鳥を見ながら歩いていて、ある観光寺院を通り抜けました。
おそらく全ての観光客に同じ事を言っていると思うのですが
「うちはフクロウがいるの」
そうに言われて、思わず足を止めてしまいました。
置物がたくさん並んだお土産屋さんで、奥では食事ができるみたいです。
「ホウって鳴くの」
「えっ???」
店内を覗き込んだら、少しふくよかな女性が腰掛けていて、この人がフクロウだなんてまさかと慌てました。
私に声をかけた女性はフクロウの置物コーナーの一番上を指しました。
置物が目をぱちくり。
「動いた!」
フクロウの置物の中に本物がいてびっくりしました。
ここからはあちらさんの台本どおりなのですが、ご主人がフクロウの木彫りキーホルダーを出してきました。
「このフクロウがお姉さんの家に行きたがっている」
そのキーホルダーは手彫りで、なかなか手に入らない品なのだそう。
「中に何か入っているんですか?」
「いや、これには入っていない、大きいのなら入っているけど」
キーホルダーよりも大きいサイズの木彫りフクロウが出てきました。
木を彫った物で値段が1,000円って安すぎるとあきれました。
「これ、この穴の中から刃物入れて、彫ったんでしょう?」
「そうだよ」
木彫りのフクロウの内部に、小さいフクロウがいるのです。
その手間を考えるとやはりこの価格は安いと考えてこちらを買いました。
ご主人が「これに福を込めるから、願い事を三つ言いなさい」と言いました。
いきなりそう言われたので慌てつつ、私は三つの願い事を口にしました。
「たくさんの鳥と縁がありますように、ケガがなく鳥を見られますように、みんなで楽しく鳥を見られますように」
ご主人は木彫りフクロウでホウちゃんの体を3回さすりました。
「これに幸せを込めておいたからね」
こうして、我が家に木彫りのホウちゃんがやってきました。
それにしても1,000円だなんて安すぎる、いつの価格なんだろうかと考えて、その時、思い出したのです。
これ、父の実家(本家)にあった……
穴の中から刃物を入れて、中の小さいフクロウを彫ったというのは、私が鋭く見抜いたのではありません。
本家のこたつの上にいつもあって、誰か大人が幼い私に教えてくれたものです。
いつもこたつの上にあったので、ようじ立てだったのかもしれません。
お茶請けの漬物をつまむのに爪楊枝が必要ですから。
1,000円の価値が高かった頃の作品かと思いました。
仕入れたのは昭和の高度成長期で、お値段据え置きのまま平成が過ぎ令和になったのかも。
本家の木彫りフクロウはいつもこたつの上で、家族と一緒に過ごしていたので、祖父母は家族の幸せを込めてもらったのかもしれないなと思いました。
私のホウちゃんは今、机代わりにしているこたつの上で、鳥の本と一緒に並んでいます。
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