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「空の青さを知る人よ」 -31歳の人にこそ観てほしい傑作アニメ-

私は、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(2011年)」という傑作TVアニメシリーズがあるらしいことは知っていた。

そのスタッフ、監督:長井龍雪、脚本:岡田麿里、作画監督:田中将賀による、2019年の長編劇場用アニメである。

ちょうど、新海誠監督の「天気の子」と同じ年だが、この「空の青さを知る人よ」は、優るとも劣らない、たいへんな傑作だと思う。

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ストーリーは、現実的なようでいて、不思議な話でもある。

舞台は秩父市。

高校2年生の相生あおいは、13年前に両親を事故で亡くして、31歳になる姉のあかねと共に暮らしている。

13年前、あかねはあおいと同じ高校のバンドのマネージャーのようなことをしていた。あおいは当然幼かった。

ベースをしていた「しんの」こと金室慎之介にあおいは憧れ、自分もベースを弾きたいと言い出した。

「しんの」は高校卒業と共に、音楽で身を立てるために上京しようとするが、その際にあかねも一緒に東京に行くように求めるが拒まれていた。

13年後、あおいはベースを弾き、上京することを夢見ていた。

そのための練習場として借りた、寺のお堂のような建物の中で、あおいはひとりの青年と遭遇する。

それは、13年前の、高校生の姿のままの「しんの」とうり二つだった。

お堂の中の「しんの」は、どういうわけか外に出ることができない。

まるでかつての「しんの」が、時間が止まったまま、生霊となっているかのようだった

・・・といっても、飯も食うし、身体も触れる存在。

姉のあかねは、市役所の職員をしており、町興しのイベントの担当となった。

それは演歌歌手、新渡戸団吉を招聘するというものだったが、そのバックバンドで、31歳になった「しんの」=金室慎之介はギターを弾いていた。

バックバンドのベースが食べ物にあたって活動不能になり、代わりにあおいが代役を務めることとなる。

果たして31歳になった慎之介と、同じく31歳になったあかねは、どういう関係を求めていくのか?

その一方で、生霊の「しんの」とあおいは、練習に打ち込む。

・・・・まあ、このあたりまでで、ネタバレは止めよう。

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まずは、あかねとあおい姉妹のキャラクターが非常に魅力的。

作画は極めて丁寧で、秩父の風景も繊細で美しい。

そして、音楽の演奏も、実に本格的である。

脚本は、どうしてこんなストーリーと展開が思いつくのかというくらいに独創的であり、しかも緻密な構成力を持っている。

クライマックスで、突如アニメにしか不可能な展開になるのも、ともかく凄い。

本編の物語の終わらせ方が、また潔いのです。

主題歌はあいみょん担当。

演歌歌手の声は、松平健が演じている。

恐らく、観客対象は、あおいと同じハイティーンから、あかねと同じ30代までを見込んでいると思われるが、幅広い層に楽しめる内容だと思う。

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調べてみたら、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」にはじまり、「心が叫びたがってるんだ。」(アニメ版と実写版あり)を経てこの作品は、前述の3人を中心スタッフとする「秩父三部作」というべきものらしい。

できれば前の2作とも観てみたい気がする。



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