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[小説:紹介] スティーヴン・キングの小説 (3) [86~89年]

ネタバレ基本的になし

スティーヴン・キングの小説を紹介します。
第三段は1986~89年に発表された分です。

キング作品には作品間のリンクも多々あるので、それもネタバレしない程度に紹介したいです。

◎スティーヴン・キング

◎リチャード・バックマンとは

キングの別名です。
キングは一時期、正体を隠してこの名前で本を出してました。
途中でバレちゃったんだけどね。


1986~89年に発表された作品紹介


IT

1986年発表。

私が最初に読んだキング作品なので個人的に最も思い入れのあるお話です。
メイン州の片田舎 《デリー》 という小さな町で起こる惨劇を描く。

ざっくり説明すると、子供ばかり狙う殺人ピエロと、学校のはみだしグループの7人の少年少女が戦う物語。

『IT』 は 1958年 と 1984年 という2つの時代を主軸にして、時系列がバラバラに語られる。
総勢7人の主人公たちは 12歳 と 38歳 で登場する。

<IT> という代物は、何かトラウマ的な、潜在意識に訴えかけてくる恐怖である。
これはもう、キングの <恐怖とは何か> という哲学。

物語のあちこちに散りばめられた恐怖のキーワード。
それらが紡ぎ合わさって <IT> が構成される。

最初に読んだころ私は十代だった。
心も体も若かった私は、物語に散りばめられたド派手なキーワードに惑わされて、この物語のとんでもなく壮大な世界観に気が付いていなかった。それはあまりに巨大すぎたのだ。

そして月日は流れ、私は何冊ものキング作品と触れた。その中には 『IT』 にとっても重要な意味を持つ 『ダーク・タワー』 という本も含まれていた。『ダーク・タワー』 を読むと見えてくる、『IT』 の向こう側にある広大な世界。そして、襲ってくる再読熱。

『ダーク・タワー』 に限らず、キングの他の作品を読むとなぜだか 『IT』 に戻りたくなる。

そして、そのたびに新しい扉が開く。

再読者だからこそ気がつけることや、キングの他の作品を読んでいないとピンと来ない言葉の数々。
読めば読むほど、『IT』 にはそういう仕掛けがたくさんあることを知った。
〈IT〉 だけ読んでも「?」ってなる箇所あるでしょう? 特に後半。〈亀〉 とかね。

ジェットコースターに乗るように何度も何度もこれを体験したくなる。
走り出したら止まらない、まるで狂気に駆られたモノレールのように。

過去も未来も全てがごちゃまぜになって怒濤の結末へ押し流されていく。
愛する 7人の主人公と彼らを取り巻く人々 + α と一緒に。

下水道の中を。

●映像化は二回。

最初のTVドラマ版(1990年)も味があってチープでめっちゃよい。

二回目は2017・2019年版。原作に近い感じした。

浦沢直樹氏の『20世紀少年』の中に、この物語のオマージュと思えるところがちょいちょいあるなーと感じている。
好きポイントを突いてくるというか…。



ミザリー

1987年発表。
キャシー・ベイツ主演の破壊力満天の映画がヒットしたので知っている人も多いかも。

人気作家が、ちょっとした運の悪さから、熱狂的狂人的なファンに捕まって、監禁虐待されるお話。
サイコホラー。

キングのお話の中でダントツ痛い…!!!!

本当にこういうファンいそうで怖い…。
物語の展開によって、このような恐ろしい想いをする作家さんているんだろうな、と想像する。

ちなみに、『ミザリー』の舞台の町 《サイドワインダー》 は、『シャイニング』のホテルがある山のふともにある。



トミーノッカーズ

1987年発表。

ホラー色の強いSF。

とあるメイン州の山の中でボビという女性が不思議な物体につまづいて、それを掘り起こしていくことで展開していく物語。

人知を超えた得体の知れないものによって変わっていく人々。人が人ではなくなっていく。そして逃げたくても逃げられないブラックホールのような悪夢。

当人たちは新しい能力に満足しても、代償は大きい。なにか触れてはいけない領域のような。ナチュラルではない異様な技術。
ボビはいったい何を掘り起こしてしまったのか…。

これはキングの「チェリノブイリ」だ。
この物語はチェルノブイリ原発事故の翌年に発表され、事故の影響を色濃く受けているんだ。

2011年を経た我々が呼んでもグリグリ心を抉られるのではないかしら。

新しい世界に没頭する人々。思想・信仰・洗脳・依存さまざまな要素によって引き裂かれる家族や友人や恋人たち。

愛する人が良くないと思えるものにのめり込んでいたらどうする??
どうやって手を差し伸べる? どうやって寄り添う??

かなり重たいテーマの物語なんだけど、さすがのキングで、だいぶすっとぼけている部分もある

なお、物語の舞台である《ヘイブン》は、キングでお馴染みの 《キャッスルロック》や、『IT』 の舞台 《デリー》 とも近所なんだ。

映像化されてるみたいだけど見てない。想像はつく…。



ドラゴンの眼

1987年発表。
知る人ぞ知る? キングの児童文学です。

これは当時ティーンズだった(のかな?) 娘のナオミと、共作などで交流のあった作家 ピーター・ストラウブの息子 ベンのために書いたファンタジー。
なので、彼らと同名の登場人物が出て来る。

わりと古典的な王国物のおとぎばなし調なんだけど、ところどころでキング節が炸裂しちゃってて面白い。
優秀な兄、劣等感の塊の弟。二人の王子の確執と、その弱みに付け込んでくる悪意のお話。

キングの超長編『ダーク・タワー』を思わせるところの多い物語である。

悪役として登場する “フラッグ” はキング作品ではお馴染みのキモイ奴だ。
『ダーク・タワー』や『ザ・スタンド』に出て来る。

さらに、『ドラゴンの眼』に出て来る老王と、『ダーク・タワー』 の主人公はどちらも “ローランド” なんだけど、別人。
別人なんだけど、“ローランド” って名前は特別なんだ。


ダーク・ハーフ

1989年発表。

キングの別名 リチャード・バックマン の正体がバレちゃって書いたお話。

noteでも他のSNSでも実名を出してる人の方が少ないかもね。
ハンドルネームって言い方も古いのか…何とい言うのだ? アカウント名というのか?

それで書いている時は、その名前の人格みたいなのってあったりするのかな?
普段の自分とは少し違う…程度のものから、がっつりキャラ作りしているものまで。

自分の別名が自我を持ってこちらを葬りに来たらめちゃ怖っ!!!! というのがこのお話。

キングの想像の町 《キャッスルロック》 が舞台の物語のひとつ。
他の物語との共通の登場人物などちょいちょいある。

主人公の自宅がある町 《ラドロウ》 は『ペット・セマタリー』の舞台。

ホラー映画の巨匠 ジョージ・A・ロメロ監督によって映像化しているんだけど見てない。



以上です。

この中で私的イチオシは『IT』です。
何度も読み返せるお話です。


▽第一弾 70年代はこちら

▽第二段 80~85年はこちら

▽第三弾 86~89年はこちら

▽第四弾 90~95年はこちら

▽第五弾 96~99年はこちら

▽第六弾 2000年代はこちら


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