見出し画像

『ねむらない樹』vol.2 2019.2.(3)

⑪東直子〈この時代の作品をもっと広く捉えて、「ニューウェーブ」を字義通りの新しい作者のための入り口として開放しておくために、ニューウェーブ周辺の作品についての研究や、ニューウェーブという角度以外からのアプローチも必要だろう。〉二点目以外は賛成だ。

 この時代の作品をもっと広く捉えて、「ニューウェーブ」は四人だけの運動として、大きな潮流の一つとして捉え直す。その時、東直子は間違い無く立役者の一人になるだろう。

⑫千葉聡〈残念なのは、シンポジウムの終盤、「ニューウェーブとは、登壇者四人だけを指す」という確認がなされたことだ。〉その言葉を引き出せたからこそ、その後の展開があった。千葉の「ニューウェーブに女性歌人はいないのか」は短歌史に残る冴えた質問だったのではないか。

⑬水原紫苑〈なぜ男性四人なのか。なぜみずから名乗るのか。私は口語短歌派ではないが、長い年月、みんな仲間だと思って来たのに、あまりにも寂しいではないか(…)自分たちの手で、生前の歴史を書くことは、空しい営みではないか。〉この時点でここまで言ってたんだなー。

⑭寺井龍哉〈今後、「ニューウェーブ」に比肩するような、実際の意とはともかく世代を一括するような呼称は生まれるだろうか、ということを折々に考える。〉呼称が実態を見え難くさせているというのはあるだろう。

⑮阿波野巧也〈ライトヴァースは時代の空気とともに口語化が進んだという「現象」だが、ニューウェーブは加藤・荻原らによる「運動」的なものだった。〉この辺りについては深掘りしてみたいところだ。

⑯この特集はニューウェーブを批判した文章も載せていて、懐が深いと思った。二年経って議論は進んだのだろうか。少なくとも、俯瞰する視点は持ち易くなったと思う。

2021.5.30.Twitterより編集再掲