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『うた新聞』2021年10月号

①中西亮太「1932年の恋人たち」〈柴生田稔の青年時代の作品は実に印象的なものが多い。ただ問題はそれらの歌がしばしば『春山』から漏れていることだ。〉その歌人の歌を全て初出にあたって全歌集をまとめることは、その歌人を後世に残そうとする、周囲の意志だ。歌集は本人や、師にあたる人が選んで編む。しかし、ここで中西が指摘しているように、しばしばいい歌が漏れてしまう。歌集を読み、全歌集を読めば、おのずとその歌人について見えてくることがある。そのことを改めて思った文だった。

最寄駅の改札に入(い)りて行きしわれ十一時間のちに出(い)で来る 田村元 朝の出勤の時に改札をくぐってから11時間後に同じ改札に帰って来た、という内容なのだが、どこかから他人の目で自分を見ているような歌い方が面白い。自分の身体をモノのように見ている視線だ。

 11時間は働き過ぎでしょと思ったが、一杯飲んできたのかも知れない。

2021.12.2.Twitterより編集再掲