見出し画像

『うた新聞』2023年1月号

茫々のこころ鎮めに読むものは内田百閒身辺雑記/茫々のこころ鎮めに舐めるものはハーゲンダッツのアイスクリーム 小池光  一首目だけだとしみじみ系だが、二首目を続けて読むと笑える。三句六音、四句八音の間延び感がすごい。Haagen-Dazs、icecreamならそれぞれ二音節だが。

②竹内亮「玉城徹の歌」〈玉城徹の評論『近代短歌とその源流ー白秋牧水まで』に短歌の陶酔を非難する箇所がある。〉〈少し前に「エモい」という語が流行した。飯間浩明さんがツイッターに「『エモい』は『いとおしい』『懐かしい』など種々の感情語の上位概念で」あると書かれていた。(2020年3月29日)。陶酔は「エモい」に似て感情の上位のカテゴリーで、強い陶酔があるとき、精緻な観察とは相反するということがいえるのではないか。陶酔を呼ぶ短歌において、感情が精緻になりにくいことをが、玉城が陶酔を回避しようとした背景にあるのだと思う。〉
 玉城徹の話ではあるが、現代短歌全体に関わる内容だと思った。強い陶酔を基調にした短歌において、陶酔の放出以外の部分が、観察というよりイメージでざっくり詠われてしまっているというのを最近よく感じる。これも一種の流行なのだろうか。玉城の時代から変わっていないということかも知れない。

きみに切るメロンの肉のやわらかさこの人生を良かったと思う 虫武一俊 果肉という語があるからメロンの肉でも問題無いはずだが、どこか生々しい印象のある表現だ。やわらかさ、と続くからだろうか。まだ終わっていないのだが人生を良かったとまとめたくなるー幸福感が高いのだ。

2023.1.29.Twitterより編集再掲