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「キングスマン:ゴールデン・サークル」(2017年)

楽しい映画ではあったが、前作ほどのインパクトはなかった。

内容としては、
前作で立派なキングスマンになったエグジー。前作でともに候補生だったチャーリーに襲われる。彼はゴールデン・サークルという麻薬組織に入っていた。
ゴールデンサークルに狙われて、キングスマンの組織は壊滅的な打撃を受ける。そこで、アメリカの諜報機関であるステイツマンに助けを求める。
一方、ゴールデン・サークルは、莫大な売り上げを立てていたが、それでは満足できず、世界中に売りさばいている麻薬に特殊な薬物を仕込む。その解毒剤を渡すという条件で、アメリカ大統領と取引をする。
キングスマンはステイツマンと協力して、解毒剤の入手に乗り出す。
といったもの。

基本的にはキングスマンが世界を救うために戦う、というもので、前作同様のプロットだ。監督もマシュー・ヴォーン。イギリスのユーモアが散りばめられており、観ていて飽きることはない。

なぜインパクトに欠けるのか。

決定的な違いは、エグジーだ。
前作では、エグジーは、キングスマンの一員だった父親を失い、労働者階級の低所得層の家庭で、将来の夢や希望もなんとなくやめてしまい、なんとなく暮らしているダメな奴だった。そんな彼がキングスマンのメンバーに迎え入れられて、世界を救う戦いに挑むという物語だった。
タグラインにまとめると、「底辺でだらだらしていた若者が、紳士としての教育を受けて、世界を救う」というものになる。面白そうな映画だな、という気がしないだろうか。
逆に今回の「ゴールデン・サークル」は、「イギリスの諜報機関の一員になった若者が、アメリカの諜報機関と協力して、世界を救う」というものになる。観れば面白いのかもしれないが、タグラインだけでは意外性がなくて、普通のエンタメ映画だと感じる。

前作は「紳士とはなにか」といった問いを、イギリスの階級制度とあわせて考えさせられる内容だったし、なによりも、「人は生まれの貧しさで人生が決まるわけではない」という熱いメッセージがあった。
今回は、エグジーは紳士になってしまったし、金持ちだし、ストーリーは前回と似たようなものだし、というわけで、楽しくはあるが、それ以上のものがなかった。

本作の製作費は156億円。興行収入は618億円。
前作が製作費120億円で、興行収入620億円だったことを考えると、期待されて作った割には売れなかったというところか。もちろん、十分な売り上げではあるが。

次回作も予定しているというので、今度は切り口を変えて、あらためて「紳士とはなにか」といったことをイギリスならではの文化をまじえながら表現する作品になってくれることを期待している。

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