こんにちは、サユリです。

わたしは、もとアパレルブランドのプレスで、もと映画ライター。なので、チョコレートと同じくらい、映画もファッションも、そして、劇中のシネマモードも大好きです。映画ヒロインのファッションについての考察は、わたしの得意ジャンルでした。

映画のヒロインがまとうお洋服は、ファッションを超えてキャラクターや人生、時に運命も命運も表現していますから、物語と同じくらい大切な役割を果たしています。

2022年、Netflixが実話をドラマ化した『令嬢アンナの真実』では、若干25歳、ゴージャス詐欺師のアンナ・デルヴィ事件が描かれています。

これを観ると、なるほど、着るものをコントロールすることで、人の心もコントロールできるのだと、感じさせらます。



本当は全9話を一気見したかったのですが、一話ごとに考えさせられるので、インターバルを置きながら視聴完了しました。




NY上流階級を手玉に取ったミレニアル世代の偽令嬢。その経緯を取材していく臨月のジャーナリストとの対比も素晴らしく、現代社会とSNSの虚栄心、そして何よりもファッションの持つ魔法のようなパワーについて考えさせらました。

アンナが注目されたのは、詐欺罪で訴えられ、裁判になった際の法廷ファッション。専用のインスタアカウントがバズり、傍聴席にはメディアやカメラマンが殺到。

ミウミウのミニドレスにチョーカー、サンローランのブラウスにヴィクトリア・ベッカムのパンツといった（私も欲しいッ！）プロも唸るコーディネート。というか、裁判のためにわざわざトップスタイリストをご指名してスタイリングしたとのこと。

このドラマが配信になった当初、ファッションエディターたちがこぞってどよめきました。わたしもしばし、アンナに魅せらるままに彼女のSNSをググり続けました。

ファッションセンスって、まさに知能犯なのです！

アンナはもともと知性も美意識もIQもズバ抜けています。４カ国語を話し、フォトメモリー能力を持ち、ファイナンシャル用語をごく自然に使いこなしていたそう。

美意識も超一流。
美術品の審美眼はまさにアートディーラーか経験豊かな美術評論家と同じレベル。ハイスクールの頃からCHANELをトレンディに着こなしていたそうです。

プライベートジェットをタダ乗りし、高級レストランでタダ食いし、高級ホテルにタダ泊まり。ドレスもバッグも常にハイブランドの最先端。

まさに、タダ者ではありませんね。

ファッションに関してはトレンドやアイテムではなく、「こなれ感のある富豪令嬢スタイル」のコンセプトを徹底的に貫いたのでした。

皆がアンナに魅せられ、とにかくファッションセンスをベタ褒め。彼女は洋服ではなく自信を着こなしていた。あれは生き方そのものだと✨

ドイツ令嬢と名乗りながら、実はロシア移民のアンナ。自らの財団を作るというアメリカン・ドリームのために奔走し、夢が叶う直前での逮捕となったけれど、もしこの事業が成功していたならば、これは詐欺事件ではなかったのでは？……とも、微妙に考えさせられる物語です。

実は、アンナと出逢うことで、自らの生き方を変えた人物も多数います。アンナはそれだけの影響力を持っていたのです。アンナは間違いなく天才です。（ついでを言えば、Netflixにドラマ化権まで売ったところも天才ですね）

釈放後は、回顧録の出版予定や、刑務所内でコツコツと描き続けた自らの絵を販売したり、インタビューアーからはしっかりとギャラをもらったりと、セルフブランディングの天才は健在です。

さて、第一話の冒頭、アンナと女性ジャーナリストが刑務所で初対面します。自分は囚人服を着ているくせに（しかもお洒落で可愛いすぎ✨）、セリーヌの黒縁メガネ越しに、全てを見透かしたように小娘アンナが言い放ちます。

「その格好だと、貧乏人に見えるわよ」

ファッションであろうと、そうでなかろうと、わたしたちが身にまとうもの全てについて、核心をズバっと突き刺しています。

女性ジャーナリストは役柄通り。
着るものには無頓着で、太見え（実は妊娠中）して、安月給でやりくりしています。衣装スタイリストはそれに見合った衣装を調達しています。
洋服のミスマッチなサイズ感、靴のヨレ具合までをも、忠実に。

これが映画でなく、リアルな人生だったらどうでしょう？


あなたは、どんな役柄を演じていますか？

お読み頂き、ありがとうございます。
ファッションを考えるきっかけになれば幸いです。


「令嬢アンナの真実」2022 Inventing Anna
（全9話）Netflix配信
ジュリア・ガーナー 主演