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秋の散歩日記

秋、散歩をしていると色とりどりの香りが鼻を掠めて横切っていく。

ピークを迎えた金木犀の甘い香り。
野焼きの香ばしい香り。
どこかから漂ってくるタバコの苦い香り。
昔住んでいた町を思い出させる、冷たい風の香り。

人々が生活をしている。
帰ってくる人、これから出かける人。
この世界は理由があってもなくても生きていていいのだ。
そう思わせてくれる静かな雲。

川の周辺を一周してみる。
散歩をしている人や犬がちらほら。
穏やかな表情もあれば、少し寂しそうな表情もある。
私はどんな顔をして歩いているんだろう。
お腹の中にいる赤ちゃんといつかこの道を手を繋いで歩けたらいいな、そんなことを何度か思った。

気づくと手の甲を蚊に食われていた。
ぷっくりと膨れ上がり、白い月のような形になった。

足が疲れて、河川敷の階段に腰掛けた。
コンビニで買っておいたホットココアを開けて口に含む。
今度は温かくて甘い香りに包まれた。

ふと見上げるとすっかり寂しくなった枝と葉っぱ。
春頃は桜を咲かせていたような気がするが、確信は持てず。

焦らず身を任せて生きよう。
疲れたら足を止めて、また歩き出そう。
自分と大事な人たちに果てなく愛を注いでいこう。

そう心に決めて立ち上がり、深呼吸をした。

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