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「デロイト…どしたん?」の件と、大手総合系コンサルファームを取り巻く現況をどう見るかって話

どうも、外資系うさぎのちょこさんです。

気が付けばもう半年も前になるのですが、大手外資系/グローバル系コンサルファームの海外オフィスのレイオフニュースを受けたnoteを公開していました。

昨今、国内ファーム、というかデロイトの不調を報じるニュースがちらほら飛び交うようになってきたので、ここらでまたこの状況をどう見るのがよいか、ちょっとまとめてみることにしようと思います。


もう結論的な話になってしまいますが、ちょこさんとしてはQuerie.meへの質問などで定期的に回答しているとおり、

・さすがにコンサルバブルとも言えるような過熱した採用はもう落ち着いた

・国内のコンサル市場が一気に縮小するわけではなさそう

・3~5年くらいのスパンでの景気や採用の波はやっぱりあるから、一時的なアベイラブル増は「そういうこともある」と捉えるくらいにしておこう

という見方には変化なしといった感じです。
ただ、デロイトだけはちょっと「どしたん…?」って言いたくなってしまう状況ではありますね…。

と、そんなあたりを、ちょこさん的な視点で解説していきますね。


さて、本編入る前にいつものコピペです。
この記事も有料設定していますが、全文無料で読むことができます。もしいいねと思っていただけた場合は、ちょこさんの大好物のおいしいチョコレートを一粒調達するための費用としてカンパいただけると大変うれしいです。

では、本編をどうぞ。


◆まずはデロイトにまつわるニュースをおさらい

- の前に、ちょこさんとのお約束

いきなり身も蓋もないことなのですが、SNSにはちょっと過激だったりネガティブだったりする言説が飛び交ってるので、そういう情報を真に受けてしまいすぎないように常に眉に唾を付けておくのを忘れないようにしましょう。

なんだか情報通っぽいアカウントのツイートを見かけたとしても、本当に特定ファームの内部事情をツイートしているのであればそいつは単なるやべぇ奴ですし、そういったツイートにファクトが含まれているとしてもあくまでその発言者から見えるファクトに限られるので、一時が万事とばかりに捉えてしまうのはよろしくないですからね。
関係者からのタレこみ募集、みたいなのも同様です。

なるべく、公開されている一次情報だったり、それなりの情報源を取材した結果の記事なんかを自分でも探してみるようにしましょう。

OpenWorkあたりの転職口コミサイトも参考にはなるものの、あくまで転職を考えている従業員が他社の口コミを見るために自社の口コミを書いている、という背景もあるので、母集団の偏りや記入者のバイアスが多分にかかっている、という前提で読まないと知らず知らずのうちにミスリードされるかもしれないので要注意です。


たぶんこのnoteを読んでいるのはコンサルの同業者か業界志望者の方が多いと思うので、そういった情報との向き合い方は基本所作にしておきたいものですね。

もちろん、ちょこさんの発言も無条件で信じ過ぎず、可能な限り自分でも裏を取りに行って腹落ちしてから信じるようにしてくださいね。


では気を取り直して、ダイヤモンドオンラインの記事をふたつ見てきましょう。

- 予算未達、アベイラブル、人員削減の件

有料部分もありますが、要約すると
・23年6~9月期の全社売上が目標に対して13%程度の未達
・インダストリーよりオファリング(ファンクション)で苦戦
・特にSAM(ストラテジー・アナリティクス・M&A)の未達が大きい
・テクノロジー全体は未達だがSAP導入領域のみ目標達成
・稼働率も、SAP導入以外は全体的に未達
・全社の業績目標を下方修正
・SAMを中心に、一時期アベイラブル800人
・全体で500人の削減計画(自然減&リスキリング)
・パートナーの賞与50%カット

といったところですね。

要約引用なのでこれくらいにしておきますが、記事中ではもっと生々しい表現で書かれているので、購読中の方はぜひご自分の目でご確認を…。


ちなみにこれ、どうみても内部機密情報だろって感じの資料から取ってきたっぽい雰囲気満載だったのですが、以前のアクセンチュアのグローバルでのリストラメールの流出の件も含め、各社ちょっとお行儀悪い方が混ざってるような状況を何とかした方がよいんじゃないかと思うんですよね…。


- 採用抑制の件

こっちはもうツイートした内容が全てなのですが、2023年9月時点で対前年比人員数が
・アクセンチュア、KPMG:9%前後の増加
・PwC、EY:3%台の増加
・デロイトはほぼ増減なし

という感じです。

通常、各社とも従業員数は非公表で、ダイヤモンド編集部が独自に集計したということでしたが、どうやらソースは日本年金機構のようです。
詳しくはこちらのツイートから。


- 本当に問題は「未経験若手の採用しすぎ」なの?

SNS上の反応としては、「デロイトは採用方針ミスって、未経験若手を採用しすぎてアベらせてしまっているのでは?」というものが多かったと思います。

たしかに、ここ1,2年の超売り手市場の影響で、大手各社とも採用基準が下がってきているのは事実でしょう。
そして、大量に採用した未経験中途が立派な戦力になるまでの育成にも苦慮しているのも同様と思います。

一方で、2つ目に貼った記事を見ればわかるとおり、デロイトだけが従業員数がほぼ横ばいなんですよね。

以前のリストラ記事でも言及しましたが、最近のコンサルファームの離職率は数%台と言われています。
間をとって5%とすると、各社とも毎年従業員数の5%を採用してようやく、対前年比の従業員規模を維持できるというわけです。
従業員数20,000人規模のアクセンチュアの場合、体制を維持する目的だけで年間1,000人の採用を継続しないといけないってことですね。

アクセンチュア+Big4の中でデロイトだけが従業員数を増やせていない&一時期から採用を抑制しているという状況を踏まえると、「デロイト、採用しすぎて自滅したのでは…?」説はちょっと違和感があるのが正直なところです。

もちろん、正確な人員推移やその内訳が全て公開されているわけではないのであくまで想像の範囲を出ないのですが、デロイトはただ単に退職者数を埋めるに足る人員を採用できなかったのではなく、
・採用は大量にした
 ↓
・しかしそれ以上に退職者が出た
 ↓
・残った従業員に対する未経験者の割合が想定より高くなった
 ↓
・デリバリーの品質維持が難しくなった
 ↓
・状況悪化を防ぐため新規採用は抑制し既存社員の育成強化に路線変更した
 ↓
・育成の結果が出るまではアサインも難航しアベイラブル人材が増加した

というストーリーもあるのではないかな、と…。
きっと、採用数以上に退職者が出るだけの、何か大きな問題でも起きたということなのでしょう…。

1つ目に貼ったダイヤモンドの記事でも、「デロイトの業績悪化は外部環境によるものではなく、社内に様々な問題があることが原因」と書かれてしまっていますし、全10回くらいの超特大特集で続報が出るらしいので、今後の更新を待つことにしましょう。


◆他社の状況はどうなの?

同業他社の状況や事情もチェックして比較しておきましょう。
こういうときに、上場しているファームだと決算情報を直接参照しに行けるので捗ります。
ありがたいです。

- アクセンチュア

アクセンチュアは北米が大苦戦している以外は全体的に好調のようです。


ダイヤモンドの別記事でも特集されていましたが、グローバル全体で見た時の業績悪化のあおりをうけ昇給や賞与の原資引き下げ、ただし日本の貢献度が高いことを考慮し特例として昇進枠を確保ということのようです。

こういうところが、グローバルとの資本関係がなくネットワークへの加盟という形式のBig4と比べたときの、完全に親会社子会社という関係のアクセンチュアの体制的な弱みと言えるかもしれませんね。

多少のアベイラブルは出ているという噂も聞こえてきますが、内部崩壊するほどまでヤバいという話も聞こえてこないので、アサインのバッファとして許容可能な範囲のアベイラブル数なのでは、と思います。

というか、20,000人規模のファームになると全社としてヤバいのかヤバくないのかってそもそも現場レベルからは見えてこなそうですけどね。



- ベイカレント

こちらもちょうど半期決算出たばかりで、情報の鮮度が高くてうれしいですね。

なんと前年比20%↑の増収増益というものすごい結果でしたが、決算発表直後に株価がストップ安をつけその後すぐ戻るというなんだか大変な状況だったようです。

みんかぶ-ベイカレント・コンサルティングより


これまたダイヤモンドオンラインの記事によると、
・年初以降、株価は過剰ともいえる高値圏で推移していた
・決算はよかったが、市場の期待はもっと高かった

ことから株価の下落につながったのではないか、と言われています。

また、同記事では、中途採用における未経験者割合の高まりと、それに伴う育成負荷や提案の難航という、こっちは急拡大に伴うイメージどおりのチャレンジに直面しているのではないか、という分析もあります。

一方、そういうのも織り込み済では?というコメントも入っているので、今後のベイカレントの動向にも注目していかないといけないですね。

アクセンチュアやBig4の前年比人員数伸び率が一桁%のところ、ベイカレントは(集計対象がコンサルタント数のみですが)30%弱も伸びているので、うまくいけば大量採用した若手や未経験中途をどう使いこなすか、のモデルケースとなるはずです。


- その他の競合

他のところは公開情報や各メディア特集での生々しい数値やすっぱ抜き速報なんかが出てきていないので、今のところ可もなく不可もなくと見ておくのがよさそうです。


- 国内の市況的な話は悪くない感じ

IT投資、というやや閉じた領域ではありますが、ちょうどよいタイミングで2024年に向けた国内企業のIT投資動向に関するレポートが発表されています。

このレポートでは、2024年は、2023に引き続きIT投資の増額基調が継続されると予想されています

IT予算額の増減(2022~2024年度予想)


同様に、2023年は社内業務やシステムのDX推進だけでなく、ビジネス領域でのDXテーマに取り組む企業が増えてきた、とのコメントもありました。


DXテーマの取り組み状況の変化


ビジネス領域のDXテーマ、確実な効果を早期に創出するため、企画から実行までの一気通貫での支援が求められる、まさに総合系コンサルファームが獲得に力をいれていきたい案件になります。

もちろん、IT投資動向の調査だけですべてを判断してはいけないのですが、コンサルファームを取り巻く市況も、そうそう急激に悪化していくわけでもなさそうだ、と思いませんか?


引用したコメントや図表は下記リンクより確認できます。


詳細は割愛しますが、こちらのレポートでも、非金融業における設備投資や生産拠点の国内回帰、デジタル化、人的投資などの2022年実績、2023年計画、2024年予測などが取り上げられています。


ITRのレポートも含め、取り上げられている予測値等のすべてがコンサルファームへの発注に関わってくるわけではないですが、国内企業が今後、成長のための投資を大きく引き下げるような方針は見られないようです。

一方、2022年⇒2023年と比べて2023年⇒2024年の投資の伸び率は落ち着きを見せるか横ばいくらいという状況でもあるようなので、ここ1,2年のような大手ファーム各社が2桁成長を維持、みたいなことにはならなそうですね。

上記の投資予算がどこにどれだけ振り分けられるのか、ってのは別の話ではありますが、コンサルビジネスはそもそもクライアントサイドの投資の意向や計画がどの程度あるか、が重要ですからね。


◆結局、今後何がどうなっていくの?

結論としては、冒頭で書いたとおり

・さすがにコンサルバブルとも言えるような過熱した採用はもう落ち着いた

・国内のコンサル市場が一気に縮小するわけではなさそう

・3~5年くらいのスパンでの景気や採用の波はやっぱりあるから、一時的なアベイラブル増は「そういうこともある」と捉えるくらいにしておこう

といったところを意識して各自、自分の身の振り方を考えていきましょうね、ってところに変わりはありません。

今回のnoteも長くなったので詳しく掘り下げはしませんでしたが、アベイラブルに備えた身の振り方、みたいなnoteもこの次にでも書こうかなと思っています。


そしてデロイトの件は、本当に「どしたん…?」という感じなので、ダイヤモンドさんが話を聞いてきてくれるのを待ちましょう。


業界全体というか、一部界隈でDEKAPAIと呼ばれるような大手総コン界隈では、先ほどのベイカレントの特集記事で強めに書かれていたとおり、大量に採用した未経験者をいかにして促成栽培的に育成し、前線に投入し収益を上げさせていくかが命運を分けることになるのは間違いないでしょう。


さらに、ここ1,2年で未経験者として採用された側も、今後はより一層パフォーマンス向上への期待が高まっていくことが容易に予想されるので、自己啓発も含めて、どうやってインプット/アウトプットをともに増やしフィードバックを受け成長に繋げていくかを考えそして実行する、というサイクルを継続していくことが求められていきます。

前時代的な働き方を推奨するわけではないですが、業務外の時間も含めて、自己の成長のために時間を使っていくことって一定必要な世界ですからね。

これからしばらくは各ファームとも、筋肉質な体制に移行するための引き締めのフェーズになるでしょうから、その変化の中で生き残り、成果を上げていくことができるよう、しっかりと備えていきましょう。

お互い、よりバリューを!
そして、よい生存戦略を!

◆オススメの1冊

なんだかもう締めの雰囲気になってしまったので、サクッといきましょう!

もはやコンサル界隈のド定番とも言える、タカマツボンです。

ケーススタディを疑似体験するかのように、自分の頭の使い方を客観的に振り返りながら読むことができる、気分転換をしつつ頭を鍛えるのにもってこいの本です。
アベイラブルの方も、絶賛デリバリー中の方も、思考技術を磨いていきましょう!

(実はこの本、ちょこさんのお名前がどこかに載っているとかいないとか…)


というわけで、ではまた次回!
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