ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート2021のテレビ生中継【無観客をカネにできるブランド】

あけましておめでとうございます。2020年11月にnoteを始めましたがわずかな期間でたくさんの方に御覧頂き、フォローして下さるひともいらっしゃり心から感謝します。引き続き御高覧頂ければ幸いです。読者の皆様の御健康と幸せを祈ります。

毎年恒例ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートの生中継を見た。いつもは世界各国から立ち見を含めて満席の聴衆が集まり、世界90か国余りに生中継される、クラシック音楽界で最も有名なイヴェントの1つだが2021年は時勢を考慮して無観客で開いた。

指揮は今年80歳を迎えるリッカルド・ムーティ。ウィーンフィルとの関係は深くニューイヤーコンサートの常連だがさすがに無観客の状況は勝手が違うのかオーケストラ共々音楽運びに硬さは否めなかった。世界のどこへ行っても満員御礼が当たり前のオーケストラなんだから無理からぬ話。

とはいえそこはオペラなどの修羅場を潜り抜けてきた百戦錬磨のムーティ、演奏会の流れやリズムを保つべく曲ごとにうまく間をとり、妙技を見せた楽団員を起立させるなどなるべく普段通りにという意思が感じられた。もし若い指揮者の場合、間がもたずにぎこちない雰囲気となった可能性もあるから、結果的に大ベテランの登板で良かった。

当然無観客だから入場料収入はなくオーケストラにとっては痛手だがニューイヤーコンサートは毎年1月中旬にはCD、続いて映像商品も発売され、クラシック音楽ソフトの年初新譜として世界中で「売れる」商材。例えば2002年に小澤征爾が指揮した際はライヴ録音CDが発売されると日本を中心に大きな話題を呼び、累計80万枚を売り上げた。なお現在はソニークラシカルがニューイヤーコンサートの録音、映像商品に関する独占的な契約を結んでいる。つまり演奏すれば確実にソフト化され、おカネが入るから収支はちゃんと合うわけ。だからこそ無観客でもやる、やりたいという話になるし、その意味もある。長年(とはいってもウィーンフィルは1842年創立でヨーロッパの名門オーケストラの中では新興勢力)の積み重ねで築き上げたブランドをおカネにする術を知っているしたたかさを改めて感じた。

他方日本のオーケストラは制約のある状況で飛車角落ちみたいな内容の演奏会をして赤字を垂れ流し「音楽の重要性」「音楽がもたらす希望」とやらを訴えている。一応クラシック音楽好きの筆者だが正直別に音楽がなくても生活できるし、ましてや日本のオーケストラが必要不可欠な存在だとは少なくとも現在は思わない。学生時代は安い値段でたくさんの演奏、色々な作品に出会るので在京オーケストラの演奏会が重宝したのは事実だし、それには今なお感謝しているが。

使い古したお題目を唱えたり、漫然と「公」の支援を訴えるよりも自身の存在をどうやってカネに換えるかを真剣に考える方が生産的。例えば新日本フィルハーモニー交響楽団はふるさと納税の形で寄付したひとに返礼として小澤征爾などのライヴ録音CDをプレゼントしているが、それより有料で配信したり(会費制でいけるくらいたくさんの良質の音源や映像が揃えば定収入になる)、配信で評判が良かったものをCDリリースしたほうが継続的におカネになるし、オーケストラの価値を高める。東京都交響楽団なんかはYouTubeのチャンネルで過去の名演奏を期間限定で配信しており、その行動自体は素晴らしいがなぜ課金しないのかと思う。せっかくの音楽的財産をカネにする錬金術を身につけないと日本のオーケストラは間違いなく先細り。


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