「顔パンツ」の拡散 SNSの力(U35メイキングトホホ日記その5)
12月6日の朝、声のよく通るデジタルデスクTが階段を駆け上がってきた。「マスクの画像、他にないすかー」。U35のデスクA(私)に、やはり大きな声で言う。「結構、読まれてるんすよ」
マスク生活が長引き、素顔を見られることに抵抗を感じる若者が広島でも増えている、という記事のこと。Yahoo!ニュースに出したら反応がいいので、画像をもっと加えたいと言う。デザインチームのSさんと慌てて画像をつくっていたら、ほどなく「ヤフトピ」に取り上げられた。見出しはこうだ。マスクは「顔パンツ」若者呪縛。
U35担当のR記者は、広島市西区の会社員女性(24)から次のような話を聞いていた。「顔を覆う安心感に慣れきってしまって。ノーマスクだと下着なしで外出しているようで落ち着かない。もはや『顔パンツ』ですよ」。言い得て妙である。
そして「顔パンツ」という言葉は、ネットの波に乗った。Yahoo!ニュースと中国新聞デジタルのツイッターの「顔パンツ」の投稿が、どんどん拡散されていく。瞬く間にトレンドワードとなった。
その日のうちにテレビ局数社から記事の使用依頼が寄せられた。それから相次いで、テレビのワイドショーや情報番組で取り上げられることに。
R記者「これが拡散なんですねー」
デスクA「そうだねー」
2人はいつも通り隣り合った席に座り、ぽかんとしていたのだった。私たちの手をとっくに離れて、言葉はひとりでに育っていく。
U35を始めて2カ月。「顔パンツ」はちょっと特異な例としても、SNSでの発信を、私たちのチームはとても大切に考えてきた。新聞を読まない若い世代にも、ツイッターやインスタグラムでの発信なら届くかもしれない。そんな期待があるからだ。
SNS発信について考えていたときに出合ったのが、広告クリエイター牧野圭太さんの著書「広告がなくなる日」。牧野さんはSNSという「インフラ」についてこんなふうに書いている。
牧野さんは今の社会では「ユーザー(ファン)こそが最強のメディア」ともつづる。
U35という試みの根底には、これまで新聞は「知ってもらいたいこと」に重きを置き過ぎてきたのではないかという自問自答がある。もっとユーザーの「知りたいこと」にこたえられたら…。
ツイッターというメディアは、1人1人のユーザーが主役だ。自分の感覚にフィットすれば「いいね」をし、「リツイート」で別の誰かに伝える。U35のツイッターでも日々発信しているが、それが届いているのかどうか、毎日試されている感じがしている。
投稿しているのは、U35世代の記者4人。同世代に届くよう、できるだけ自分たちらしい言葉で140字をつづっている。
ただ何せ、よちよち歩きでフォロワーもまだ1000人に満たない。「顔パンツ」でトホホだったのは、U35でもツイートしていたのに、リツイートされまくったのは、Yahoo!ニュースと中国新聞デジタルのツイートだったこと!
ともあれ、私たちは私たちのペースで、私たちの言葉で、興味を持っていただける1人1人に記事を手渡していけたらいいなあと思っています。そして、誰かに手渡したいと思えるような記事を紹介していけたらと。よかったら、ぜひフォローをお願いします。
U35スタートの年、私たちの発信に接してくださった皆さま、本当にありがとうございました。よいお年をお迎えください。