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全ての女性たちのために負けられない闘いとは?『LFG-モノ言うチャンピオンたち-』ヨコハマ・フットボール映画祭2023

 FIFA女子ワールドカップ2011で日本代表が優勝し、なでしこジャパンと呼ばれて、日々優勝メンバーがテレビに登場していたのはもう12年前。アメリカの女子サッカーが強いことは知っていたけれど、その後のワールドカップで2連覇を果たした上、トランプ大統領の任期中である2019年ワールドカップ開催を前にした国際女性デーの3月8日に、女子サッカーチームの選手たちが雇用主であるアメリカサッカー連盟へ男女同一賃金(イコール・ペイ)を求めた訴えを起こしていたことは全く知らなかった。
 映画祭を通してサッカーを好きになってもらうことを掲げたヨコハマ・フットボール映画祭2023で上映される『LFG-モノ言うチャンピオンたち-』は、ピッチ外での選手たちの連綿と続いてきた女性差別に対する闘いを選手たちの肉声と共に後世に伝える、必見のドキュメンタリーだ。
 

  映画ポスターで人差し指を突き上げ、不屈の精神を見せるのは、2019年のワールドカップでは最優秀選手賞と得点王に輝き、同年世界最優秀選手を受賞したミーガン・ラピノー。彼女を中心に、28名のチームメンバーたちが議論を重ねた上でイコール・ペイを求めるに至ったわけだが、映画では偉大な実績を残したサッカー女子チームの先人たちも既に何度も待遇の是正を求めていながらも、受け入れられずにここまできたことがわかる。彼女たちは世界最強女子サッカーチームであり、男子チームよりも複数年にわたってはるかに素晴らしい実績を上げているのに、待遇の差はあまりにもひどく、職業とするには生活するに足る賃金が望めないと若くして辞める選手も多いという。実力があり、優勝パレードで祝福を浴び、テレビからの出演依頼がひっきりなしでも、彼女たちのたゆまぬ努力が報われているとは言い難い現実を目の当たりにする。

 2019年女子ワールドカップでのアメリカチームの活躍ぶりを改めてスクリーンで観ると、当時見逃していた人でもこのチームの魅力が体感できることだろう。優勝決定後、スタジアムでは「イコール・ペイ」コールが起き、その後の優勝パレード後に行われたミーガン・ラピノーのスピーチも、イコール・ペイだけではなく、LGBTQ差別をなくすことも含め、よりよい未来に向けて力強いメッセージを述べており、活動家としての彼女の姿も脳裏に焼きつくのだ。

 準備を入念に重ねた上で臨んだアメリカサッカー連盟との調停が決裂しても裁判に挑むことを決意し、1年後の3月8日、国際親善試合のシービリーブスカップ開催中に、連盟側から信じがたい差別的な言葉が並んだ主張反論を公表されたサッカー女子チーム。彼女たちが裏返しのユニフォームで示した揺るぎない意志表明は、言葉よりも強く、そして多くを全世界に訴えかける。ビッチの外での女性差別に負けず、闘い続ける証だ。

 選手活動をしながらの闘いを決して諦めず、コロナ禍でどんなに不利な状況になっても諦めるという言葉はなかったサッカー女子チームのメンバーたち。2022年、バイデン政権となり、ついに彼女たちが勝ち取った、サッカーでは世界初となる男女同一賃金の実現。本作でも詳細に描かれた厚い厚い壁をぶち破った彼女たちの努力はアメリカ女子サッカーの未来につながるだけでなく、日本女子サッカーをはじめとする世界の女性アスリートたちの待遇改善につなげていかなければと強く思う。この7月から、FIFA女子ワールドカップ2023が開幕するが、選手たちを心から応援するとともに、日本ではなかなか報道されない選手たちが置かれている状況や、彼女たちがピッチの外で闘っていることにも敏感でありたいと思った。


作品情報

『LFG-モノ言うチャンピオンたち-』"LFG"(2021年  アメリカ 105分)
監督名:アンドレア・ニックス・ファイン、ショーン・ファイン
出演者:ミーガン・ラピノー、ジェシカ・マクドナルド、ベッキー・サワーブラン

上映スケジュール

6/17(土) 19:10-21:27
ゲスト:髙田春奈(WEリーグチェア)、能條桃子(NO YOUTH NO JAPAN代表理事/FIFTYS PROJECT代表)、石井和裕(WE Love女子サッカーマガジン主筆)
6/22(木) 20:00-
シネマ・ジャック&ベティにて追っかけ上映

予告編


ヨコハマ・フットボール映画祭2023 公式サイト

https://yfff.org/film/lfg/


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