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ミニシアターランキングで堂々2位!『チャンシルさんは福が多いね』に共感するワケ〜緊急事態宣言関西Day4

 1月16日、コロナ禍で始まったのはセンター入試ならぬ「大学入学共通テスト」。センター入試は30年間続いたというが、その前の共通一次試験を受けていた世代からすれば、なんだかニュアンス似てるじゃんと思ってしまう。あつかましいか・・・。蜜を避けるということで、1月17日に毎年行われる阪神淡路大震災慰霊行事を、今日の夕方5時46分に12時間前倒しで行った場所も多かったという。実は今日から短縮営業となった映画館も多い。20時に終了となると、いわゆるレイトショーはなくなってしまう。そうなると公開延期作も増えるわけで、緊急事態宣言が解除されるまでの新たな道のりがはじまったのだ。

 そんなミニシアターに昨年の大ヒット韓国映画『はちどり』同様、じわじわと広がっている韓国映画がある。韓国の名匠、ホン・サンス監督のプロデューサーを務めたキム・チョヒ監督の初長編作『チャンシルさんは福が多いね』は、1月8日に公開され、ミニシアターランキングで初登場なんと2位に輝いた。主人公のチャンシルは、名匠と呼ばれる監督を支えるプロデューサーとして、40歳まで好きな映画の仕事に打ち込んできた女性だ。新作のクランクイン直前に監督が急死、ずっとやり続けるはずだったプロデューサー業をなんとクビにされてしまう。今まで自分が培ってきたことは何だったのかと自問しながら、家賃の安い、坂の上の一風変わった大屋さんがいる家へ引っ越し、唯一の友達といえる年下女優のもとでお手伝いの職を得るが・・・。

 女優にフランス語を教える短編映画監督の年下男性とほのかな恋が芽生えるかと思いきや、映画の趣味が合わず、クリストファー・ノーランが好きだと言うのを聞いた時の反応たるや。小津安二郎の『東京物語』を愛するチャンシルが「ノーラン???」はぁ〜という気持ちのイントネーションも完璧で、映画好きあるあるなのだ。さらに、今までの人生を省みて、どこにも進めないチャンシルの前に、白いタンクトップと白いパンツの男が現れる。まさかまさかの『欲望の翼』ヨディを演じたレスリー・チャン風男を「愛の不時着」耳野郎役のキム・ヨンミンがチャーミングに演じているのだ。心の中のアイドル、レスリー・チャンは映画のことを忘れようとするチャンシルに映画への情熱を改めて突きつける。それはとても親身で優しく、そして風のように。

 人生の小休憩のような時間を過ごしているチャンシルが、少しずつ福を見つけていく姿、そして映画愛に満ちたディテール、絶妙のコメディセンス。小林聡美のような飄々とした味わいでチャンシルを演じるカン・マングムにも共感度大の観終わって心がホコホコするような素敵な映画。エンドクレジットの韓国民謡のような抜け感のある音楽も言葉がわからないのに口ずさみたくなる。これもまた、肩肘張らずに楽しめる一品なのだ。

(C) KIM Cho-hee All RIGHTS RESERVED / ReallyLikeFilms

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