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アルベール・エルバスに敬意を込めて

とても悲しいニュースが舞い込んできました。
アルベール・エルバス。彼が14年間手掛けたLANVIN(ランバン)はとてもファンタジックで、アルベール・エルバスという人そのものを表しているようでした。

デザイナーのアルベール・エルバス(Alber Elbaz)が死去したことが、リシュモングループによって発表された。享年59。

エルバスは、「ランバン(LANVIN)」のアーティスティックディレクターとして14年にわたりブランドを牽引。2015年の退任後はファッション業界の第一線からは退いていたが、2019年にリシュモングループとパートナーシップを締結し、合弁企業の立ち上げを発表した。昨年11月に新ブランド「AZ Facotry」を立ち上げ、今年1月にはパリのオートクチュールウィークでファーストコレクションを発表した。

リシュモン会長のヨハン・ルパート(Johann Rupert)は、「アルベールの突然の訃報に際し、衝撃と大きな悲しみを覚えています。アルベールは、この業界で最も輝かしく、最も愛されている人物の一人として評価を得ていました。彼の知性、感性、寛容さ、そして創造性にいつも魅了されてきました。彼は温かさと並外れた才能を持った人物であり、その特異なヴィジョンや美意識は忘れがたい印象を残しています。私は同僚を失っただけでなく、最愛の友人を失いました。アルベール、安らかに眠ってください」とコメントした。

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ルカ・オッセンドライバーと共同で手掛けていたメンズの取り扱いを2008年頃から行い、パリのショールームにも何度か伺いました。ラグジュアリーでありながら肩の力が抜けたリラックス感には、他のブランドにはない余裕と優雅さを感じました。

敷居が高く、パリでのショーは一度も観た事がないのですが、実は2009年に東京の両国国技館でショーを開催しています。幸運にもチケットを頂き、当時のお客様と一緒に観に行った記憶があります。レディース、メンズ合同のショーで、カタカナで書かれた「ランバン」の提灯があったり途中大相撲の行司が登場したり。日本的な演出も素晴らしく、豪華で盛大なショーでした。ショーのために来日、フィナーレに登場したエルバスは、誌面で見るそのまんまでとてもチャーミング。興奮したのを今でも覚えています。

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つい先日、新しいブランドで再出発したばかりでした。悲しくてなりません。そして何より素敵な世界を色々と見せてくれてとても感謝しています。
どうぞ安らかにお眠り下さい。

再出発に向けたインタビューでエルバスが残した言葉が胸に沁みます。是非読んでみて下さい。

アルベール・エルバスが私たちに教えてくれる「5年のブランクで学んだ11の大切なこと」

1. “退屈”こそ、クリエイティビティを生み出す材料。
私はファッションが大好きですが、業界から一歩引いたところで考えたり夢見たりすることで、改めてファッションへの愛を再確認する時間が必要でした。この休暇中に退屈を感じた時こそ、自分自身についてより深く知ることができました。それは、種から花への成長プロセスにとても似ています。光合成には水と太陽が必要ですが、まずは地に足がついていなければ、何も始まりません。
3. 教える立場になって、人は学ぶことができる。
ここ数年でたくさんの新しいことにチャレンジしました。ヨガやウェイトリフトのレッスンを受けてみたり、ビーチホリデーにいってみたり。でも、どれも従来の生活からかけ離れたもので、私には合いませんでした。
そんな時、世界中でレクチャーを開催するようになって、内面も外見も美しい若い世代の人々に出会う機会が増えたんです。彼らにメンターとしてスキルを教えることで、私もまた新しいことを学ぶようになり、刺激を受けるようになりました。新世代の人たちは、ジャンクフードなど健康を害するものを食べないからか、フレッシュなアイデアに満ち溢れているんです!
5. 正反対の人々に囲まれ、本質を理解しよう。
この5年間、たくさんの旅行をしました。中でも忘れられないのが、カリフォルニア州のパロアルトへの旅。そこでエンジニアや発明家の方たちと話す機会があり、考え方が変わりました。はじめは専門分野が正反対なので、会話が成り立たないと思っていました。しかし、美しさや感情、そして直感について語らい、本質的な部分でお互いを理解することができたんです。この体験があって、私は彼らの専門分野のテクノロジー、そして人に対する見方が変わりました。
8. 「Be Big and Small」── 大きくあれ、同時に小さくあれ。
これは母の格言です。最初聞いた時に私は、「痩せつつ、同時に太れってこと?」と問いかけましたが、彼女は違うと答え、その真意を丁寧にこう説明してくれました。

「仕事では大きく胸を張って。でも、日常生活は慎ましく過ごして感謝の心を忘れずに」

私は決して恵まれた環境で育ったとは言えませんが、根本的な価値観はしっかりと植えつけられました。この格言こそ、母からもらった最高の財産です。
11. 仕事は直感に従おう。
スペイン風邪と第1次世界大戦が幕を閉じた1920年代のフランスは、レザネフォル(狂乱の時代)と呼ばれ、文化が非常に活発化していました。ジャズシンガーのジョゼフィーヌ・ベイカーがパリで人気を博した頃です。ジャズとは場との対話であり、直感に頼る芸術で、私も直感に従って仕事に取り組むことを意識しています。

しかし今私たちは、狂乱の時代ではなく、よりスマートに生きるライフスタイルに向かっています。なぜなら、私たち自身が狂乱の一部だったことをこの1年間で痛感したから。自然の流れはコントロールできませんが、直感が示す賢い選択に従うことで、より明るい未来に繋がると思います。


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