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飲み会のバリュー

緊急事態宣言以降急速に少なくなり、最近(2020年11月)は増えつつありましたが、感染者数の増加傾向から、また少なくなっていくことが予想される「飲み会」。

オンラインでは味わえない、リアルに酒を交わすことの独特の楽しさをあらためて感じている人は、僕だけではないはずです。

今日は三連休の最終日に徒然と、リアルに空間を共にする「飲み会」の楽しさはどこから来ているのか?飲み会の価値(バリュー)とは一体何なのかについて、自分なりに考えてみたいと思います。

バリューの構成要素

飲み会のバリューの構成要素を以下の考えでまとめてみます。

【立場による分類】

飲み会では、次のような立場の違いによって、得られる価値が異なるであろうと考えました。すなわち、(1) 情報を発信する側が得る価値、(2) 情報を受信する側が得る価値、(3) 飲み会のグループ全体で得られる価値、の3つです。

【価値の種類による分類】

次に、飲み会で得られる価値(バリュー)自体も、大きくは次の2つに分類できると考えました。

①損得・利害に直接的に影響があり、理論的な効用を得る「理論的バリュー」

②感覚的な気持ちよさや一体感等、感情的な効用を得る「感情的バリュー」。

分類結果は、以下の表の通りです。

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各々のマトリクスの内容について補足説明します。

①- (1) 発信者の理論的バリュー

飲み会における自分の損得を考えた上での発信者としてのバリューは、相手への営業とまとめられるかと考えました。自己をアピールすることにより良い機会を得ることを目的としていたり、自身の作品やプロダクトを説明することにより相手に広めてもらうことのような場面を想定しています。

② - (1) 発信者の感情的バリュー

飲み会で話をすることにより得られる感情的バリューとして、まずはそもそも自分の話をすることにより得られる爽快感が挙げられます。誰しもが自分の話を聞いてほしい欲求はあります。やや脱線しますがキャバクラのメインのニーズは、「話を聞いてほしい(できれば綺麗な子に)ニーズ」なのかと考えています。また、それだけではなく、マウンティングと言われている行為は、営業目的は無いにも関わらず、情報発信により相手よりも優位に立つこと自体を目的としています。つまり飲み会におけるマウンティングは、優越感(もしくは承認欲求)という感情的なバリューのために行われていると考えてます。他にも、相手に対して味方であることを示す目的の情報発信もあります。営業的な目的が重なることも多いのですが、味方感の醸成自体がバリューとなる場面もあるため、こちらに分類しました。

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①- (2) 受信者の理論的バリュー

受信者の損得としては、大きく2つの類型があると考えました。単純に知的好奇心を満たすような新しい知見を得ることと、自分や自分のグループにとって得になる情報を得ることです。自分の専門分野にとって有意義な情報だったり、貴重な競合情報だったりが後者の例です。

② - (2) 受信者の感情的バリュー

受信者にとっての感情的バリューとしては、共感を示し味方感を醸成することがあると考えます。味方であることは、話に対する同意や同調だけでなく、表情、距離感、仕草等のあらゆるチャンネルによって相手に表現されます。個人的にはこの点こそが、オンラインに代替され難いリアルな飲み会の価値の大きな部分を占めているように感じています

ここで、表を再掲します。

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①- (3) グループ全体にとっての理論的バリュー

次は、グループ全体が得られる価値についてです。飲み会におけるグループ全体の理論的なバリューとしては、情報共有を一度に行える効率性や、グループ全体で同じ情報を保有できるため情報の標準化というバリューもあります。さらに、企画当初には意図していなかったような偶発的な会話や発想等のような偶発性を向上させることも飲み会のバリューと言えるでしょう。

② - (2) グループ全体にとっての感情的バリュー

次は、グループ全体の感情的バリューについてですが、個人的にはこの点こそがリアルで飲み会を開催することの一番の価値であるかと考えてます。

飲み会には、各々のグループや業界によって様々なプロトコルやルールが存在します。上座下座、ビールの注ぎ方だけでなく、リアクションの取り方、適切な話題の振り方などなど。つまり、飲み会とは、ある程度の型(プロトコル)があり、それらをどれだけ実践しているかを言外に確認しあう行為でもあると考えます。正直下らないとも感じていたこれらのプロトコルですが、飲み会では重要なバリューを担っていると考えるようになりました。それらのプロトコルの実践確認を通して「自分たちは同じ価値観を共有しているという一体感」を感じることが飲み会のバリューとなっているという仮説です。プロトコルは、仕草だけでなく表情や会話の振り方や定番の受け答え、カラオケの選曲等も含まれます。日本の特定の業界における飲み会芸も、それ自体や会話の内容自体にはあまり価値はなく、価値観を共有する一体感こそが求められているバリューであり、味方であることを示す踏み絵のような役割も担っているとすら考えています。

※ 今回はコミュニケーションに重きを置いて整理していますが、当然、グループで同じ食べ物や飲み物の飲食体験をシェアすることもバリューの重要な要素です。

飲み会におけるギャップ・違和感の正体

僕は今までに数限りない飲み会を経験してきて、様々なギャップや違和感にも遭遇してきました。芸能人等の特に中身の無い会話のためになぜ集まるのだろうか?というギャップ。逆にみんなで盛り上がろうと集まっている合コンで、目当ての相手がおらずそっけない態度の人がいる時のギャップ。これらのギャップは、それぞれの人が飲み会に求めているバリューの違いに起因していると考えられるようになりました

中身のない会話で盛り上がる飲み会とは、そもそも理論的バリューである損得ある情報を求める場ではなく、会話のやり取りやプロトコルの実践状況によってグループ間での価値観の一体感を得るという感情的バリューに重きを置かれている飲み会なのです。そのため、そのような場に行く際には、そもそも理論的バリューである新たな知見の獲得等を目的に赴いてはいけないのです。飲み会はバリューに応じて取捨選択したり、自分自身もチューニングしていく必要があるのです

また、飲み会の幹事は立場上グループ全体の一体感や盛り上がりという感情的バリューの向上を目指しますが、参加者は自分にとって得のある情報や出会いを求めて参加した場合、立場の違いによって求めるバリューにギャップが生じてしまいがちです。

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考察まとめ

.飲み会には、自分の損得につながるような理論的バリューと、感覚的な気持ちよさなどの感情的バリューがある。

リアルな空間での飲み会のバリューの大部分は、会話内容・表情・距離感・仕草等のあらゆるチャンネルから発せられる価値観のシェアにあり、一体感を醸成する感覚こそがバリューであるこの点こそが、オンラインに代替され難いバリューであり、逆に理論的バリューはオンラインでも価値を失いにくい

.飲み会にはグループごとにプロトコルが存在し、プロトコルの実践確認を通して、グループで同じ価値観を抱いている安心感や一体感を感じることも飲み会のバリューである。

.飲み会の参加者によって求めるバリューの不一致があることが、問題が生じる背景。立場による違いや、認識と実態の違い等のバリューの不一致が考えられる。

最後に自分について少し

さて、自分が飲み会に求めているバリューについて、最後にまとめてみます。自分は、若かりし頃は明らかに感情的バリューの一体感を感じることを飲み会の主目的としていました。しかし、30代頃を境にして、急速に理論的バリューである新たな知見の獲得を主目的とする飲み会が増えていきました。時折、求めるバリューを間違えて会に参加してしまうことがあり、その時は満足感が得られず、なぜ周りに合わせられないのか…と不安に感じることもありました。

しかし、今回考察したように、単に求めるバリューの違いなんだと考えることで、異なるバリュー目的の会を避けるのではなく、異なるバリューにも可能な範囲で貢献してみようと、前向きに捉えられるようになりました

今後は、求めるバリューをきちんと把握した上で、相手にとっても自分にとってもバリューを最大化できるように飲み会に参加していきたいです。

- 安藤

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