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CIVILSESSION 32: SIGHT

開催日:2021年11月27日
開催地:SHIBUYA Valley

CIVILSESSIONはクリエイティブチームCIVILTOKYOのメンバーが様々な分野の方と行うアートセッションです。決められたキーワードを元に、発表者たちが一週間で作品を制作します。キーワード発表から一週間後にそれぞれの作品のプレゼンを行い、参加者の投票でグランプリを決定します。

第31回目のキーワードは「SIGHT」。
CIVILTOKYOの3名とゲスト参加者4名の計7名で行いました。

・SSAADN (サーダン)
 ラッパー
 https://www.instagram.com/ssaadn00/
・ハマモトソウタ
 現代詩人
 https://www.instagram.com/syakyaknohana_/
・Masahide Tsurumoto
 photographer/videographer
 http://masahidetsurumoto.com/
 https://www.instagram.com/tsuru_massa/
 https://www.instagram.com/massa_tokyo_photography/
・MOKA
 作家/花屋
 https://porororo888.wixsite.com/tomoka-watabe
 https://www.instagram.com/atelier.m.o.m.o/

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グランプリはSSAADNに決定しました。

前回と同様、屋外会場であるSHIBUYA valleyにて開催された第32回。キーワードは「SIGHT」。単純な訳語は「視覚」ですが、各プレゼンテーションでは視覚に伴う音についての作品や、音楽の演奏、視覚に頼らない体感を取り上げた作品もあり、解釈方法の多様さを改めて確認できる回でした。

冒頭に『情報社会化が進むにつれて人間は視聴覚を使うことが多くなってゆくが、体を動かして感覚的に体感するということも重要』と話したSSAADN。ワイヤーから成る「宙に浮かぶ蜘蛛の巣」のような構造体を事前に会場で構築し、自身の制作活動の経緯と重ね合わせながら今回の作品のコンセプトを説明。最後にはSSAADN自信がその宙に浮かんだ構造体に乗って見せ、観客を圧巻。見事グランプリを獲得しました。

通常、視覚から入ってくる情報には音を伴う、と話したハマモトは映像作品を制作。これまでにハマモトが撮りためた複数の動画を構成して作った映像内で、環境音やBGMが止まり、無音になる時こそが「視覚だけの瞬間」として発表しました。

SIGHTを風景や景観と捉えたMOKAは、人々が都市で生活する上で感じるメトロポリタンストレスに着目、またその解決のために考案した簡易式の温室「Mobile Oasis」を発表。不織布やオーガンジーで植物を囲い、オフィス内にも設置可能という憩いの場を会場に配置しました。

杉原はSIGHTを視点と捉え、在日韓国人である自身の「日本人としての視点」と「韓国人としての視点」を織り交ぜながら、自分の現在までの生い立ちをテーマに落語のような一人語りを展開。自身を2つの角度からコミカルに見つめ直し、多くの笑いを誘いました。

Tsurumotoは人間が1秒間に視覚野から取り入れる情報量を、ポシュロムの研究データを元に数値化。これを文字データと画像データに置き換えて用紙に出力・貼り合わせ、巨大な一連の情報データのシートを制作。会場では観客を取り巻くように掲示して観客を驚かせました。

根子は自身のデザインの仕事上で「視覚的に良いもの」を提案する上で、常に「なぜそれが良いのか」というロジックが必要に成るモヤモヤを説明。そのロジックを完璧に組み立てられれば、そもそもデザイナーは必要ではない、という仮定の元、デザイン作業を自動化するツールを制作。

伊藤はキーワードが「SIGHT」に決まった直後、10年愛用したメガネのフレームが真っ二つに割れたことを告白。自分の視力の象徴とも言えるこのメガネに別れを告げるために弔いの歌を作曲、発表の場で自身のギター演奏と共に歌い上げました。



① ハマモトソウタ(現代詩人)/00000sight00000

【①語源「見える(意外な)もの」
 ②英意「The ability to see 」
 ③邦意「視力、視覚、情景、見つける、目指す」】

「はじめに」
私達には視野があります
目で見るか、カメラで捉えるか
その違いはありますが、
どちらにしても、限られた範囲しか
臨むことはできません

しかし、
私達は見たものを記録したり、
思い出したりすることができます

そして、
思い出の中の像(sight)は
時に音楽と共に反芻されます
 
音楽の無い中、
ぼんやりとsightだけが浮かんでくる
とき、
私達はsightそのものと向き合うことに
なるのかもしれません


「あとがき」
sightという言葉に直面した時、
私は音楽を欲しました
自分の視る力が試されていると知り
つい、
耳が敏感になってしまったのです
目に注力すればするほど
私の緊張は止まらなくなり
音楽はそんな私を見かねてか
しばらくの間、隣に居てくれました

この作品を通して、
私は二回、音楽を失いました
ご覧になる皆様には、
どこで音楽が消えたか
思い思いに巡らしていただけたら嬉しいです

貴方の見たものについて、
それを見ていない私が
貴方と交感できるものは
きっとあまりにも少ないでしょう
私は、貴方がしっかりと地面を
踏みしめて進んでいくおとを
慈しみ、今はそれを心の内に収めます
そして、
貴方から目を離さないよう努めます

sightは、
貴方への愛で立ち上がりました

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② MOKA(作家/花屋)/Mobile Oasis

sightというのは色々な意味がありますが、今回、私は日々見えている世界、都市の景観という側面から考えました。
この東京で風景、景観ということを考えると、コンクリートジャングルーー直線的・人工的な構造物に囲まれた世界での、"メトロポリタンストレス"をどう解決できるのか。いかに柔らかな有機的な要素を入れられるのか?
 都市の景観において、どこまでが柔らかいもので(自然)、どこまでが硬いもの(人工物)なのか。人為と自然についての定義…そして「緑化」と一言で言っても、本当に色々あります。
緑や自然のある風景、または感じられる風景、は本当に様々なものがあります。日本人の伝統などを考えると、古来から、借景など、自然を建築などの人工物に織り交ぜて取り入れるのが得意でした。
現在、今ここでは、どのようなやり方ができるのでしょうか。
都市の中でも、とくにここ渋谷はscrup and build と言われる街なので、せっかく植えても、建物自体がなくなってしまう可能性があります。
観葉植物業界では、たくさんの美しい観葉植物を植えては、オフィスの移転など、人間の都合で捨てたりしています。土も植物も産業廃棄物です、悲しいですね。 
そんな我々の住まう都市で提案したいのは、破棄せずに移動できる、簡易式、ポータブル式の緑地、[Mobile Oasis ] モバイルオアシスは、フェルト製の鉢に植物を植えて、ビニールで覆った簡易式の温室です。
さらに、都市部の過酷な環境下によって、枯れてしまう可能性のある植物以外で、自然物の様子を表現できないかなあと考えました。
どのようにして、人々は自然、の要素を感じることができるのでしょう。
・光・水・風・土・緑・石
・有機的なフォルム
     ↓
・水、光、風の要素を抽出する 
     ↓
(布の柔らかさや光を透過する性質、風によって
不規則に揺らぐ様は、自然の要素を再現できる存在なのではないか?)
     ↓
・揺らぎを可視化する・不織布、オーガンジーなどの素材
こうして、渋谷バレーに、揺らぐ簡易型ポータブル温室、「Mobile Oasis」が誕生しました。

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③ 杉原賢(ジュエリーデザイナー)/分人視点の発見

在日韓国人であるボクにはふたつの視点(分人視点)があります。

楽観的で無鉄砲な日本人「ケン」と悲観的で慎重な韓国人「ヒョンギ」。対象的なふたりの視点を比較することで、新しい発見があると思い、「14歳から31歳までのボク」をそれぞれがどのように見ていたのかを明文化して照らし合わせてみました。

すると、全てが反対に思えたふたりの視点(意見)がただ一点だけ合致する瞬間がありました。長男の誕生です。

ふたりとも、互いへ「おめでとう」と祝福の言葉を送っていましたが、言葉のニュアンスから察するに、心から歓喜するケンに対してヒョンギの「おめでとう」には幾ばくかの“言わされてる感”がありました。

その発見から、人生には感情を問わず強制的に「おめでとう」を言わざるを得ない状況があることを確信的に認識。本作品では、分人視点で発見したこの認識を「おめでとうの強制性」と定義しています。

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④ 根子敬生(デザイナー)/デザイナー抹殺プロジェクト

私はデザイナーである。
デザイナーは鑑賞者の「sight=視覚」をコントロールする職業だと思うが、それを達成する為には、最終的なアウトプットを目にするユーザーが「何が見えているか」だけではなく「見えたモノをどう解釈するのか」という前提条件を知識としてクライアントに共有しながら、プレゼンテーションを行う。その時に考えるのは、例えば

・なぜこういう形になったかという、形状のロジックに関する知識の説明。
・なぜこう考えたか、という前提となるストーリーの説明。
・なぜこれが有効か、というマーケティングを基にした社会動向の説明。

など、「このデザインって、カッコイイヨネ〜!」というような感覚的な思い込みではなく、このデザインが、なぜ / どのように良く、どういった場面で効果を発揮するのか、ということをめちゃめちゃ説明する必要がある。

デザイナーは、何か視覚に関して特権的な地位というか能力というか、特別な存在かと思われることがあったりするものの、実際の仕事の多くは目にするものを前提として、この「言葉」を積み重ねていく作業であったりする。

とするならば、ロジックを組み立てることができれば、デザイン制作の作業においてデザイナーは不要になるのでは?と考え、ツールを使った「デザイン作業」を自動化するプロトタイプを発表した。

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⑤Masahide Tsurumoto(photographer/videographer)/Data of Sight

僕たちが常に見ているこの視覚。あまりにもたくさんの情報が常に溢れかえるように目に入ってきいる。個人的にそんな情報過多にストレスを感じている。そして、その問題は1970年代から危惧されていたようだ。そこで、今回はその視覚情報をデジタルデータに変換してみたらどうなるか。そのためにはまず1秒間のデータ量を質必要がある。ボシュロムの研究データによると1秒間の視覚データ量は約500KB。データ数だけで言われても想像がつかないので、テキストデータへの変換を試みた。
日本語(全角)は2byteであり、先程の1秒間のデータに変換すると約15万6400文字となる。なんと文庫本約2冊分。
10秒間オーディエンスの方々に自由にこの場所を見てもらう。それを予測したデータが今回の作品となる。きっと他の方の作品を見たり、空を見たり、もしかしたら僕を見る人や、携帯の画面を見るひともいるであろう。そんな写真を10枚。1枚あたり500KB分のイメージデータを10秒分テキストの上に配置した。どんな内容であってもデータ量には変わらないが、今回のテーマである"SIGHT"の154万6000文字分をA4用紙154枚分プリントした。
この物理的量を見て、自分たちに常に大量に無意識に流れ込んで来る情報を、再認識できる作品を制作した。

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⑥ 伊藤佑一郎(プランナー/写真家)/BROKEN GLASSES

SIGHTという言葉の意味は、視力、視覚、見ることなどの意味。
目にまつわるこの言葉がキーワードに決まった後に、自分のなかでとても大きな出来事が起こりました。それは10年間愛用していたメガネが、ものの見事に真っ二つに壊れてしまったこと。
このメガネが自分の視力、まさにSIGHTそのもの。
だから新しいの買って、はいさようならではなく、こいつの供養みたいな作品が作れないかと考えました。自分は写真家という一面もあるのですが、このメガネをかけて色々な場所に行き、さまざまな人に出会い、
そしてたくさんの写真を撮影してきました。
だからこいつの弔いは、こいつをかけて見て、撮影してきた写真たちと一緒にやりたいと考えました。弔いの方法はたくさんある。
そのなかでも象徴的なものは「お別れの歌」。人生の最後の時を迎えた時、残された人にどんな歌で別れを告げるのか。

自分はいくつか作ってきた作品の中で、音楽をモチーフとした作品群があります。それらを、画像変換して輪郭だけ残し、その輪郭を鍵盤に当ててメロディーに変換。パソコンの楽曲編集可能な、MIDIという形式で書き出す。
写真から生まれたメロディーをもとに、このメガネの弔いの歌をつくりました。

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⑦ SSAADN(ラッパー)/Sightspidering

現代における人体と都市のコミュニケーションのあり方を模索した。
情報技術は、現代においてはまだスクリーンとスピーカーを主とした視聴覚的なコミュニケーションを人体と行なっている。
都市空間も、それに呼応するように視聴覚的な体験を提供する方向に発展してきている。
一方で、人体には視聴覚の外側にある重力の感覚、体性感覚、温感、深部感覚などの刺激も重要である。
現代では、それらを刺激することをスポーツやサウナなどのレクリエーションとして行うが、その行為をもっとシームレスに都市生活に統合していくことを試み、まずは作者自らがワイヤーという最も簡単に空間を構成するツールの一つを用い、蜘蛛の巣のような空間を生成させた。

Sightseeing、名所をただ見る行為から、Sightspidering、名所を能動的にスパイダーしていく行為へ。

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