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新世紀の寺子屋(第14回)

子供向け金融教育「新世紀の寺子屋」の第14回の授業の一部を公開します。
今回は、まず「バブル」を取り上げることにしました。
日経平均株価がバブル期の史上最高値を更新したことで、何かと「バブル」という言葉を耳にする機会も増えました。ちなみに、生徒さんたちに、バブルについて質問したところ、やはり小学生はピンとこないようでした。

バブルは、シャボン玉が膨らむように、人々の期待が膨張し、やがて熱狂に転じ、本来の価値に見合う価格から大きく乖離していく現象です。永年に継続しているバブルはなく、どんなバブルも最終的には失望に終わり、価格は適正水準に回帰します。

ところで、バブルという言葉と似たような言葉に「フロス」というものがあります。歯の間の食べ残しを取り除くやつではありません。フロスとは「泡ぶく」みたいなものです。市場で言えば「期待により膨れている状態」でしょうか。フロスは市場ではたくさん生まれ、大半は自滅していきますが、中にはバブルに成長していくものがあります。昔、FRBの当局者と面談した際に、当局の担当者は「大きくなっていくフロスを事前に潰すことが大事」と仰っていました。当局目線ですね。市場参加者においては、バブルはリスクですが、フロスはチャンスです。バブルに成長していく過程が、大きく株価が上昇するからです。

さて、バブルに必要なものが3点あります。人々の熱狂ですね。この熱狂の中には、楽して儲かるというような欲望や、他人が簡単に富を築くことへの妬みなど、色々なものがごちゃ混ぜになっています。
そして、それだけでなく、何らかのストーリーや神話的なものが必要です。喩えは適切でないかもしれませんが、怪し気な新興宗教がお札や壺を高額で信者に売るような事件がありましたね。あれなお札を買えば、地獄行きが免除されるとか、救われるなどのストーリーがあるから、信者は買うのです。
そして「金融の力」もバブルの形成に欠かせない要素です。レバレッジや信用取引、デリバティブなどです。小学生には難しいですね。

世界三大バブルを取り上げました。一番有名なのは、何と言っても17世紀オランダのチューリップ・バブルでしょうか。

チューリップバブルは17世紀のオランダで起こりました。ピークは1634年~1637年です。日本では徳川家光時代、中国は明の末期ですね。米国ではピルグリムファーザーズが新大陸で悪戦苦闘している頃です。
チューリップは、もともとオランダにはなく、トルコに咲く珍しい花でした。これが、何故かオランダで流行し、チューリップは貴族の嗜みのようになりました。

チューリップの種類の中でも最高とされたのは、赤に白い線が入った「センペル・アウグストウス」です。今の価格ですと、1本が3億円ほどらしいですよ。(知らんけど~)異常ですよね。

大事な点は、何故バブルが発生したかです。繰り返しますが、17世紀のオランダは非常に栄えていたことです。そして、ヨーロッパにチューリップがないという希少性がありました。そして貴族たちの間で、少しでも珍しいチューリップをゲットして、他の貴族に自慢したいという虚栄心の競争が起こりました。また、当時は科学的に自由に珍しいチューリップを栽培できるわけではありません。珍しいチューリップは偶然、出来るのです。これは庶民においては宝くじのようなもので、球根を仕入れ、珍しいチューリップが咲いたら、一攫千金も夢ではないわけで、大衆を引き込む要因になりました。そして、先物市場の存在も無視でしません。

小学生には難しい先物市場の話です。チューリップの花も、その球根も「あるもの」を取引するだけなら、取引額は限定的になるでしょう。花にも球根にも数に限りがあります。しかし、そこに先物市場があると、どうなるでしょうか?現時点では、まだ存在しないものを取引できるのです。例えば、来年の球根は、まだないのですが、それを現時点で取引することで、取引の市場規模はぐんぐん拡大します。これが「金融の力」です。人々の熱狂があり、ストーリーがあり、金融の力で無限に拡大できる。こうなると、もうバブルはどんどん膨れますね。

結局、チューリップバブルは崩壊しました。結局、すぐに腐る花なのですから。国民は大パニックになりました。チューリップもイメージの悪い花になったようです。しかし、今でもオランダが世界のチューリップ生産で世界ナンバー1というのは面白いですね。

次に南海泡沫事件です。ここでは割愛しますが、この南海泡沫事件に巻き込まれて、大損した有名人がいますね。誰でしょうか?

そうです。万有引力のニュートンさんです。名言を残してくれました。天才でもバブルに乗っちゃうんです。

株式市場には数ある格言がありますね。その中でも、もっとも有名な格言の1つはジョン・テンプルトンの格言ではないでしょうか。超有名ですね。そして、これは何も市場に限ったことではないでしょう。人間の心理なのですから。

ところで、最高の取引ってなんだと思いますか?それはどうしても売らねばならない人から買い、どうしても買わねばならない人に売る取引です。なんか嫌ですけど、これは真理ですよね。
株式市場でも、何らかのパニックで皆が一斉に売らねばならないような局面があります。特にプロの投資家は、ロスカットルール、リスク許容リミットなど、色々な制約を課せられていますので、急激な相場変動に際しては、ポジションを売らねばならないことがあります。そして、それはみな、同じような条件で発動されるのです。そうなると、一時的に市場ではどうしても売らねばならない人で溢れ、価格がオーバーシュートするのです。そういう時は、制約のない個人投資家が買い手にまわる絶好のチャンスになることが多いでしょう。価格は平均に回帰するのですから、一時的に価値から大きく離れて売り込まれた株価は、やがて適正価格へ戻るのですから。

バブルに関する名言はいろいろありますね。誰の言葉かは知りませんが、「バブルは別の顔をしてやってくる」なんかもいいですね。チューリップバブルは二度と起こらないのですが、仮想通貨バブルとか、似たようなバブルを人類は何度も繰り返すのです。

さて、次に経済の勉強で「銀行」を取り上げました。今回のテーマは、「銀行は魔法使い?」です。
銀行は家計と企業を繋ぐ重要な存在ですよね。しかし、預かった預金を、貸し出しに回すだけでは、「魔法」ではありません。

魔法とは、「信用創造機能」のことです。これは、生徒さんも意味不明だったかもしれないと思いました。説明が難しいですね。
A子さんが1000万円を貯金する。スタートはそこだけです。銀行はこの1000万円を預金として記帳しますね。しかし、銀行はA子さんがすぐに全額の預金を引き出すことはないと考えます。従って、A子さんがATMでお金を引き出すことに備えて、100万円だけを残して、900万円は資金を必要とする企業に融資したとします。実際にはこの企業のメインバンクである銀行の口座に入金します。その銀行も、このお金がすぐに全額引き出されることはないと考え、手元に少しだけ残して、他の企業に融資します。

最初はA子さんの1000万円の預金でスタートした流れが、どんどん増えていくのです。これが銀行の信用創造機能であり、経済を活性化させています。これこそが魔法の正体です。


今回の授業の最後は景気循環です。景気にはハワイのように1年中、常夏ということはなく、好況、不況を繰り返します。

景気クイズを何問かやりましたね。下のような簡単なクイズです。

少し難しいクイズもやりました。クラスの景気が悪い、元気がないときに、元気対策委員のあなたは、どんな対策をする?という難問です。しかし、生徒さんからは「おやつを配る」とか、「宿題をなくす」とか、色々とアイデアが出ました。素晴らしい~。

下はクラスを元気にする作戦です。実は、景気が悪いときに国がやる政策も、基本的にはほとんど同じなんです。面白いですよね。ただ、クラスの中では難しい政策もあります。それは中央銀行の金融政策です。これはクラスではなかなか難しいですね。中央銀行は、次回以降に取り上げる予定です。
そんな授業をやりました。

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