見出し画像

日中トラベルサミット2022レポート|テーマ型セッション 地域最前線「地域DX促進と付加価値の創り方」

新たな「地域共創」の場づくりを目指す一般社団法⼈⽇中ツーリズムビジネス協会(東京都新宿区 代表理事 王璇、以下CJTC)は、第5回目となる『日中トラベルサミット2022』を開催しました。2023年2月21日(火)前夜祭と称し中国の旅行会社との商談会、商談会参加者や登壇者、関係者が集う交流会を実施し、2023年2月22日(水)にオンラインフォーラムを開催しました。

C1セッションでは、「地域DX促進と付加価値の創り方」をテーマに、テーマ型セッションを行い、モデレーターのやまとごころ.jp 編集長 堀内 祐香氏を始め、以下4名が登壇しました。

<モデレーター>
やまとごころ.jp 編集長 堀内 祐香氏

<パネラー>
インタセクト・コミュニケーションズ株式会社 海外広告推進グループ越境EC推進室 室長 片倉 一志氏
一般財団法人渋谷区観光協会 理事・事務局長 小池 ひろよ氏
株式会社JTB ツーリズム事業本部 エリアソリューション事業部 観光ICTグループ 地域DX推進担当 北邨 昌子氏

◆各登壇者による取り組みの紹介
まず最初に、各登壇者より現在進めている取り組みについて、ご紹介いただきました。

越境ECが地方において必要となる理由
インタセクト・コミュニケーションズ株式会社 海外広告推進グループ越境EC推進室 室長 片倉 一志氏より「越境ECが地方において必要となる理由」について、ご紹介いただきました。
インタセクト社ではQRコード決済を中心とした、インバウンド・アウトバウンドに紐づく環境を整備・支援しています。
新型コロナウイルスの拡大と同時に、国内外の移動を問わず行動が制限された時期に、ECに参入する事業者が増えました。インタセクト社も、2022年7月より独自モール「優選館」を開始し、各自治体や金融機関との連携も行ってきました。

中でも、中国における越境ECでは一番の購入先が日本であり、さらに今後行きたいところも日本が一位になっているというデータがあります。つまり、この商品が地域を代表する新しい発信の手段になると考えています。
特に、商品発信を目的にしないということと、BtoCから販売実績を作り、大型の取引につなげるということが、地域を盛り上げることにつながると考えています。
これにより、呼び込めていなかった観光客の誘致や、地域商品を海外に展開できるようになるという効果があると考えています。

日本優選館での事例として、例えば金沢では工芸は非常に多くニーズをいただき、食品関係も多く取り扱っています。また、この取り組みが一つのバーチャルツーリズムとして捉えられてきており、今後の観光インバウンドにもつながるのではないかと考えています。

観光地デジタル化支援事業
株式会社JTB ツーリズム事業本部 エリアソリューション事業部 観光ICTグループ 地域DX推進担当 北邨 昌子氏より「観光地デジタル化支援事業」の取り組みについて、ご紹介いただきました。
JTBグループでは、「交流創造事業」を事業ドメインとしています。全国に広がるネットワークを生かして交流人口を拡大し、お客さまの感動あるいは共感を呼び起こすことを目指しています。今回は、地域と旅行者、あるいは地域内をつなぐことで人流創造による地域の活性化を目指している「エリアソリューション事業」についてご紹介します。

エリアソリューション事業部では、ホテルや旅館などの観光事業者さまをお客さまと位置づけ、観光事業者さまへのビジネス展開を通じて、観光地におけるDXや人材インフラなどの課題解決を図り、地域の活性化につなげていくことを目指しています。
事例として例えば、熊本県小国町の鍋ケ滝で行った、観光地の入場予約管理システムの導入事例があります。鍋ケ滝は知る人ぞ知るスポットでしたが、ロケ地になったことから爆発的に訪れる方が増え、休日は駐車場待ちの行列ができるほどの人気が出た場所です。一方で、大渋滞が発生してしまうなど、いわゆる観光公害といわれる状態でした。
そこで、私たちが提供する観光施設の予約管理システムを導入して日時指定の予約機能を活用していただくことで、入場制限を実施しました。これにより、旅行者の利便性向上や地域住民の生活環境の保護といった両面で貢献できたと思っています。

またほかの事例として、宿泊施設の業務効率化も支援しています。「kotozna in-room」というサービスでは、情報提供・コミュニケーション・注文受付機能といったことを、オンラインで可能にするツールです。客室に設置したQRコードでサービスの利用を可能にするもので、多言語対応や非接触といった課題を解決するツールであると考えています。
また、宿泊事業者さま関連のソリューションということで、マイクロサービスと呼ばれるようなものと、宿泊施設の基幹システムとの連携を可能にするハブのようなものの開発も行っています。実証実験では、チェックアウトにかかわる時間を8割削減できるなど、よりお客さまの体験価値を増やすためのリソースを増やすことにつながると考えています。

地域DX促進への取り組み
一般財団法人渋谷区観光協会 理事・事務局長 小池 ひろよ氏より「地域DX促進への取り組み」ついて、ご紹介いただきました。
まず、「渋谷5Gエンターテインメントプロジェクト」についてご紹介します。2019年よりKDDI、渋谷未来デザイン、渋谷区観光協会で「渋谷エンタメテック推進プロジェクト」を立ち上げ、2020年より30社以上の企業とともに「渋谷5Gエンターテインメントプロジェクト」として拡張したものです。目的としては、企業だけではなく、公共性のある街づくりという観点の中、街に対してバーチャルの空間をどのように還元できるかということを、コンソーシアム形式で多くの方と実証実験としてプロジェクト化しています。

中でも「バーチャル渋谷」は2020年に立ち上げた国内初のメタバースであり、行政が一緒になって作っているということが特徴となっています。現在では延べ100万人越えの方々が、このメタバース空間で何かしらのイベントを通じてお楽しみいただけている状況です。

また、渋谷区が運営する地域通貨事業である「ハチペイ」「ハチポ」についてもご紹介します。ハチペイはキャッシュレス決済アプリで、便利になるとか産業支援ということで焦点がより経済を豊かにするということと思っていますが、ハチポに関してはお金の交換だけではない地域資本を増やす、いわゆる渋谷のファンを増やすなど、そこでコミュニティが作られて活性化していくために立ち上げています。例えば、駅前のごみ掃除をして500ポイントをもらい、そのポイントを何かの体験で変えるなどといったことを作っていきたいと考えています。
 
 
◆DXの取り組みをする中での課題とは
北邨氏
デジタル化してできるようになることは、その行動をデジタルで全部補足できるようになることだと思っています。データは各事業者さまにたまっていくわけですが、それを地域で取りまとめることで域内の動きを知ることですとか、そこに向けて多くの観光客に色々なところへ行ってもらう情報などを構築したいと思っています。

ただやはり、合意形成がとても難しいと感じています。総意ではOKだけれども、各論になるとなかなか情報を出しにくいなど、事業者さまの事情もあるようですので、そこを丁寧に一緒にやっていきたいと思っています。
堀内氏
渋谷区では、地域の合意形成というところではどうでしょうか。
 
 
小池氏
最終的には足を運んで何回も説明会を開いて、疑問を払拭するために苦労されていると思いますが、やれてみたときにやっと理解に繋がるようなので、最初は寄り添ってみるということが、後々何倍にもなって返ってくるということかと思います。苦労の先の幸せを描き続けていくことが大切ではないかと感じています。
 
片倉氏
やはり地域の中小企業と一緒になって進めていくためには、中心となる役割を担ってくれる方が必要なのかなと感じています。それは行政であることもありますが、私たちの場合は地域の金融機関などとの連携といったところに力を入れています。
あとはやはり、地域事情というところに対する理解や共感ということがないと、一緒にやろうということにはならないので、まとめていただける方と一緒に、私たちとしてはノウハウと将来性を示すということで、興味関心を起こさせ協力いただけるかと考えています。

◆地域がDXに取り組み意義とは
片倉氏
日本を支えているのは当然、色々な企業様がいてシナジーを生んでいくことだと思っています。その力の源は地方にもあると思っていて、デジタル化ということでそれらを発信をしていくことが、日本経済を盛り上げることにつながっていくと思っています。
北邨氏
いわゆる守りのDXで圧縮したリソースを攻めに転じて、より観光客の方やECを通じて商品を買ってもらう方の体験価値向上が出来たらよいと思っています。
そのような中では、全体設計が非常に重要と考えていて、私たちはそうした役割を担っていけたらと考えています。
小池氏
ご紹介したバーチャル渋谷などでは、ここに来なくてもコミュニティで接点をつなげ、世界中の方と繋がれるという意味で言うと、次に渋谷に行ってみたいなということを、体験を通じてシティブランディングができているのかなと思っています。
一方、地域通貨の取り組みを始めている中でもよい事例が生まれていて、例えば地域の店舗ではこの取り組みによって、これまでのように宣伝広告費をかけずとも売り上げを伸ばすことができているなど、新しいチャレンジをしてくださっている店舗が実績を得られているということができています。このような事例をデータ等で示し、マーケティングしていけるというのも、DXの良いところだと思っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?