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子どもに丁寧に教えればできると思ってる罠

子どもの教育というものは、長期的ではありますが、ある意味一発勝負で、やり直しがきかないシビアな面がありますよね。特に最初の子どもなんかは、親にとっては子育て自体初めてなんですから、自分の経験や知識を元に、なんとなく教育っぽいことに取り組みがちですが、そこには多くの人が陥る強力な罠が潜んでおります。

私自身、様々な教育に携わる仕事に関わりながら、個人的には20年以上に渡って失敗を重ねつつも16歳差の4人の子どもを育ててきたのは大きな知見だと思ってまして、これから子育てや子どもへの教育を本格的に考えている親御さんのお役に少しでも立てればと思い、記事にさせて頂いた次第です。

ちゃんと教えればちゃんとできるはず

よくある、というか、親になってまず多くの人がこの罠にかかります。特に最初の子ほどこれをやりがちです。

例えば、多くの子育て未経験(あるいは浅い)の方の中には、「デキが悪いのは親がちゃんと教えてないからだ」という思い込みがあります。
これを言い換えると「親が子どもにちゃんと教えればできる」なのですが、これが大きな落とし穴です。

当初は、どんどん理解し、覚えの早かった我が子も、ある時から答えを間違えるようになり、トンチンカンな答えをし始め、しまいには子どものやる気のなさ、態度の悪さに「ブチキレ」となるこのパターンは子育て経験者であれば誰でも身に覚えがあるのではないでしょうか。

子どもが間違えたことには原因があるから、その原因(理解していない、覚えていない等)を見極めれば良いと思うのですが、何度言っても何度説明しても理解しないし、あるいは「わかった」とか言うのに、何度も同じ個所で間違えるといった事がしばしば起きます。

この正体は実は単純で、多くの場合、子どもの能力(この場合「脳」)の成長が追いついていないことが原因です。
子どもの理解力や集中力というものを、親の方で勝手にハードルを上げてしまっており、「今まではできてたから」とか「ちゃんと教えたんだから」という理由で、子どもに高ハードルなことに取り組ませてしまっているケースが非常に多いのです。

いやいや、そんなことわかってるよ!
それくらい気を付けてるよ!

皆さんそうおっしゃるかもしれません。
しかしこれが意外と簡単に落とし穴にハマってしまうのです。

子どもは簡単な理屈も難しい

そもそも、子どもの脳は発達段階にあるため、大人にとっての簡単な論理思考ができなかったりします。
たとえば「5+1=6」を聞いて「5+2=7」は実に当たり前に見えます。足す数が1増えただけなんだから、答えも1増えるだけに決まってるじゃん!と大人は当たり前のように考えますが、子どもにこの「当たり前」は通用しません。

うまく頭の中が整理できてない子どもは、「足す数」と「答え」が同じ数だけ連動している、という理解・認識ができてない場合が多く、場合によっては「5+1=6」なんだ、という「記憶」だけで答えを導いてしまっている場合も多々あります。

同様に、「6時の30分後は?」という質問には「6時30分!」と即答できるのですが、「6時15分の15分後は?」という聞き方になると途端に答えられなくなる子どもが増えます。
これも時計という複雑な概念を正確に理解できてないことが原因です。

そしてこの概念を言葉で教え、理解させるのは、ものすごく難しいはずです。
丁寧に教えるとか「教え方」の問題ではないですし、もちろん子どもの頭が悪いとかそういう話でもありません。
そもそも、こういう概念をスムーズに理解できる子どもの「脳」の成長がそこに達してからでないと非常に難しく感じてしまうのです。
これを無理やり言葉で説明し理解させようとするから、親子ともに大きな困難にぶち当たってしまうのです。

事実、通常の大人で時計が読めない・わからない、なんていう人は非常にまれでしょう。

「能力」を鍛える前に「脳力」育てよう!

じゃあ、どうすればいいのか?
難しいことにもチャレンジさせず、頭のスタミナも鍛えず、子どもが育つがままに任せればよいのか?

もちろんそうではありません。
アタマを鍛えなければ日々鈍化し、年齢とともにできることもできなくなってしまうかもしれません。
しかし、ここでお伝えしたいことは、「能力」を鍛えることにばかり目が行ってしまい、子どものポテンシャルの根本である「脳力」を育てることがおろそかになっているのではないのだろうか、ということです。

鍛えれば伸びるのはその通りだと思いますが、あくまでそれはその子どもの持つ「脳」の物理的な状態に依存しているということも心に留めておかなければなりません。筋肉が育たなければ、早く走ることができないことと全く同じです。

そして子どもの脳を育てる上で、最も重要なことの一つが「睡眠」だと言われています。

科学的にも睡眠は脳の情報整理のため行われていると言われており、我々大人以上に日々新しい情報を得る子どもたちにはなおさら睡眠は重要な要素であるのは間違いありません。
特に昨今の日本人は世界的にも睡眠不足と言われており、それは子どもたちも例外ではないでしょう。
米国国立睡眠財団のデータによれば、3-5歳で10-13時間、6-13歳で9-11時間が推奨睡眠時間とも言われています。

夜10時に寝るという子どもも、10時に「布団につく」だけであり、実際は10時半くらいになっている子供も多いのではないでしょうか。
小学生が10時間睡眠して朝7時に起床するのであれば、遅くとも9時には寝ていたいところ、つまりは逆算すると8時半くらいには布団に入っているのが脳の健康には理想的なのかもしれません。

子どもへの教育の目的は何なのか

子どもに学習の機会を与え、勉強をさせることはとても重要です。
しかし一方で受験勉強とは、その子の潜在的な勉強の能力を浮き彫りにさせるだけで、本人の根本的な能力向上にはあまり役立たないという意見もあります。

受験勉強で得られるものも非常に大きいとは思いますが、本人の根本的な「脳力」の向上を期待するのであれば、何かを教え・詰め込むのではなく、本人の理解の速度や脳へのストレスも配慮した上で、気長に子どもの学習を見守るのが最高の教育となり得るのではないでしょうか。


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