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奥が深い

コラム:フェスティバルディレクター 三浦宏之


 真夏日、猛暑となった6月24日。西荻窪。
 JR西荻窪駅は東京23区内では最西端の駅ですね。西隣の吉祥寺駅は武蔵野市。東京都は大きく2つに分けて東側に23区があり、西側は市町村によって構成されています。面積的には東側の3分の1が区。西側3分の2が市町村といった感じでしょうか。しかし東京都の居住者の割合をみると、市町村居住者が3分の1であるのに対して、23区内居住者が3分の2と面積に反比例しています。また、東京都内には区の数23に対して、市町村数は26市、3町、1村です(諸島部を除く)。
 これら(諸島部を除く)東京都の30市町村を総称したものが「多摩地域」ですね。この「多摩地域」は1893年(明治26年)までは、神奈川県管轄であったとか。神奈川から東京への移管の理由は、東京帝都の水源として多摩川・玉川上水を東京府の管理下に置くためだそうです。
 調べてみると多摩地域の歴史も色々あり、面白いものです。もう少し時を遡ると、現在の中野・杉並あたりも1872年(明治5年)に東京に移管されたのだそうです。西荻窪のある杉並区が発足したのは、1932年(昭和7年)。東京都成立の歴史を紐解いてゆくと、ここから先の未来への指標が見えてくるような気がします。100年後、東京はどんなことになっているのか想像してみるのも楽しいですね。

 いつものように長い前置きとなりました。今日の前置きは、続く本文とはあまり関係ありません。。。
 さあ、今回の街歩きは「西荻窪」です。

雑然の中の居心地

 この駅で降りて街に出ると、いつも何故か最初に足を踏み入れてしまうのが南口西側エリアにある飲み屋街。この路地を一通り歩くことで、西荻感のようなものに身体をひたすようなものなのかな。お風呂に入る前に、桶に湯を汲んでからだを流すような感じに似ています。ある種、儀式的な行いと言ってもいいかもしれません。もちろん、この儀式の効能には個人差があります。。。

 高架をくぐって駅の北側に抜けると、西荻窪北西エリア。伏見通りを西に向けて歩いてゆくと小さな商店街が続きます。しばらく行くと右手に「西荻北中央公園」があります。

大都市の小さなオアシス

 今日のように蒸し暑い日には、こういった緑深い小さな公園はまさにオアシスですよね。実際に公園に足を踏み入れて、緑の木陰に入り込んでゆくと、温度と湿度が少しだけ低く感じられます。ほんの少しベンチに座って休憩すると、汗が引いてゆくのが分かります。

 公園で休んだ後、伏見通りを駅方面に戻ってゆく道すがら、ぽつぽつと並ぶ飲食店を物色しているうちに無性にお腹が空いてきました。カレーの匂いやら、オーガニック食材のランチやら、街中華の暖簾やらに目移りしていると、路地を折れたところに小さなお店を発見。

住宅街の小さなレストラン

 民家の一階で営業されているお店(おそらく自宅件店舗かな?)ですが、西荻窪の街にはこういった民家(もしくは元民家)を利用した店舗が沢山あります。こういったお店が多い街って、やっぱり商売と土地がしっかり繋がっているというか、お店が街に根ざしているような気がします。古くなって空き家になった建築物をリノベーションして、店舗利用してゆくというのは、今流行りのサステナビリティの文脈で語られることが多いですが、それ以外にも地域コミュニティの醸成にとってもとても有意義なことなのだろうなと思います。

建物の再活用

 すべての景観が現代建築に塗り替えられてしまうのも、なんとなく味気ないものですよね。こういった街と、建物、そこを利用する(あるいは通りすぎてゆく)人たちが、その地域と時間を大切にしてしっかりと関係してゆくことも、残してゆかなければならないだろうと思います。

 路地を折れたところで、話も脇道に逸れてしまいました。

 結局荻窪駅北口まで戻ってきてしまったので、北銀座通りの一本西の商店街を北に向けて進みます。少し進んだあたりで、匂いに釣られて入店したのがこちら。

純白の暖簾が涼しげです

 支那そば「いしはら」さん。
 店内はカウンター席のみ8席ほどの小さなラーメン屋さんですが、私が入店した後、店の外には行列ができていました。
 ラーメンにするかどうか悩みましたが、あまりに暑い日だったこともあり、つけ麺(味玉トッピング)をいただきました。

麺の量も程よい感じです

 胡椒が効いていて少しピリ辛で、とても美味しかったです。ラーメン好きの人、おすすめします。隣のお客さんが餃子を食べていたのですが、餃子も美味しそうでした。。。

 腹を満たして、商店街を北に向けて歩いてゆきます。
 その途中で目に止まったのがこちら。

西荻窪に岡山県高梁市?

 岡山県高梁市のアンテナショップ「高梁館」。 
 ご存知の方もいるかと思いますが、私は2009年~2018年まで岡山県に住んでいました。岡山在住当時、インスタレーション作品を高梁市歴史美術館で展示をしたことなどもあり、思わず入店。
 お店の方に話を伺うとこちらの建物は高梁市出身の弓道の先生「吉田能安」さんのものだったそうで、1985年にお亡くなりになった時に、建物と土地を岡山県高梁市に寄贈されたそうです。

天井にある梁は弓の形なのだそう

 「何故、西荻窪に高梁市のアンテナショップがあるのだろう?!」という疑問は吹き飛び、大いに納得してしまいました。
 アンテナショップの隣には、吉田先生の遺した弓道場もありました。少し覗かせてもらったのですが、とても立派な弓道場でした。

立派な弓道場

 アンテナショップでは月一回、高梁市から直送された有機野菜やお酒の販売もあるそうです。また今度行ってみよう。

 その後ひたすらに北上してゆき、前から気になっていたギャラリー「みずのそら」さんを訪問。突然伺ったにも関わらず、ギャラリーを拝見させてもらい、色々とお話しを聞くこともできました。こちらのギャラリーには長方形の大きな池があって、とてもいい雰囲気のギャラリーです。いずれClafTでも利用させていただきたいなと思っています。

 ギャラリーで沢山話をさせていただき、気がつくと最集合の時間が迫っていました。

こちらは、とても気になった場所です

 北銀座通りに出て、一直線に西荻窪壁へ向けて戻ったのですが、その道すがらにも小さな劇場やアートスペース、ギャラリーなどが点在していて「やっぱり西荻窪は面白い街だなー。」と思いました。まだ沢山入ったことのないギャラリーやお店がある。そこには、まだ出会っていない人たちがいる。できることならば、それらの場所に入って、色々な人たちと出会いたいものです。

 いやあ、西荻窪、奥深く、美味しく、そして面白い。
 再訪するたびに、再訪したくなる街です。

西荻窪で拾ったアートの種

程よくくたびれた暖簾と自転車
無意識の配置と造形
森さんの表札
どこか違和感(良い意味で)

Center line art festival Tokyo(中央線芸術祭)2023 は「The time to sense.」をテーマとし中央線沿線地域で美術展示やパフォーマンス、ワークショップ、トークイベントなどのプログラムを開催します。
市民生活へと深く浸透する芸術創造の場を創出し、東京中心部における文化圏を西東京地域に緩やかに拡大してゆくためのプラットフォームとして継続することによって、地域コミュニティ、民間を主体とした文化創造を促進してゆくことを目標におきながら、西東京地域から全国に向けた発信を市民とともに行ってゆきます。 

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