【OW2】新ルール”プッシュ”解説

こんにちは、AkihabaraEncountのclankです。
Overwatch(無印)からコーチ、大会解説、解説記事といった形で活動をしています。現在は個人での活動が主です。

今回の記事ではタイトル通り、OW2から導入された新ルール「プッシュ」の解説となります。

流れとしては、
基本ルールの確認→プッシュのゲーム性のお話→プッシュのセオリー
といった感じです。
正直セオリーに到達するまでがめっちゃ長いのでセオリーだけ知りたいんじゃいって人は飛ばしちゃってください。

それでは目次を挟んで本編です。

基本ルール

概要:ロボットの制御権を得ることでプッシュバーを押し、ゴールを目指す。

制限時間:10分
勝利条件
・時間内にゴールまでプッシュバーを押し切る。
・プッシュバーを敵より遠くに押し込んでいる状態で試合終了となる。

重要なルール
・ロボットがチェックポイントに到達すると10秒間停止する
・ロボットがチェックポイントに到達すると第2リスポーンが解放されてそこでリスポーンできるようになる
・第2リスポーン解放後、ロボットを中央まで戻されると第2リスポーンは閉鎖され初期リスポーンからのリスポーンとなる
・時間切れになるとき、負けている側が1人でもロボットに触れているとオーバータイムに突入する

細かい仕様
・ロボットは試合開始から30秒間中央から動かない
・ロボットに近づくことでロボットが敵拠点に向けて動き始める
・ロボット周辺に敵味方が混在する場合、ロボットは動かなくなる
・ロボットの歩行速度とプッシュバーを押す速度は1人でも人数を増やしても変わらない

大体こんなところかと思います。
とりあえず今の段階では、「はえ~ロボットを相手より遠くに運べばいいんですねえ~」くらいに理解できていれば大丈夫です。
この時点で「理解わかっちゃった」って人は天才です。

以降はこれらを踏まえた上で、
「じゃあ結局プッシュってどんなゲームなんだい?」
ということについて掘り下げていきます。

プッシュの特殊性

大前提としてプッシュはOW2に現状存在する4つのベーシックなルールの中で(というか無印のアサルトを含めても)非常に特殊なルールです。

何が特殊かというと、
唯一、勝利条件が二つある。
ところです。まあ、片方はある意味エクストラウィン(特殊勝利)とも言えるものですが。

ここで、「いやいや、エスコートやハイブリッド(あとアサルト)は攻撃と防衛で勝利条件が2つじゃないか」
と思うかもしれませんが、あれらはそれぞれの立場に別々の勝利条件が存在する(勝利条件と敗北条件が表裏一体になっている)だけで、1つのチームに与えられる勝利条件は、ゴールして勝つか、ゴールさせずに勝つかのどちらか1つだけです。

しかし、プッシュは違います。

プッシュは明確に1つのチームにゴールして勝つリードを守って勝つかの2つが与えられています。

ここが、プッシュが非常に難しく、そしてそれ以上に非常に面白く感じられる(個人の感想です)ルールになっている原因だと思われます。

プッシュの実質的にたった1つの勝利条件

さて、先ほどプッシュの特殊性に触れ、プッシュは唯一2つの勝利条件があるルールであるという話をしたばかりですが、
が、しかし、それでも、あくまで、個人的な見解ではありますが、プッシュにおける勝利条件は実質的に一つです。それは、

1度奪ったリードを守り切って試合終了を迎える。

これがプッシュにおいて最も現実的な(あくまで競技的には)勝利条件となります。

なぜかというと、
プッシュでゴールして勝利する、またはリードを奪われた状態から逆転するには”連勝”が必要で、しかし”連勝”が難しいからです。
とくにゴールはエクストラウィン級に難しいといえます。

まずは連勝が必要な理由を解説したのち、連勝が難しい理由の解説となります。

プッシュでゴール&逆転するには”連勝”が必要

なぜゴールと逆転には連勝が必要なのか、まずは逆転をするときの状況を赤が味方、白が敵の以下の状況で考えてみましょう。

初動に負けてプッシュバーを押し込まれている状況

このプッシュバーを押し込まれている状態から逆転するには
①敵をロボット付近から排除する
②ロボットを味方プッシュバーまで移動させる
③プッシュバーを押し込みながら、ロボットを止めに来た敵を排除する

の三段階が必要になり、逆転には最低でも2連勝が必要なことが分かります。

これがプッシュバーとロボットの距離が離れたり、大きくリードを奪われている状況になれば、必要な連勝数は増えていきます。

ゴールするときはもっと単純、
①ゴール目前までプッシュバーまたはロボットを運ぶ
②ゴール目前でロボットに触りに来る敵を排除しきる

となるため、最低でも①に至るためにすでに1勝した状態で、②でもう1回勝つ必要があります。

このようにプッシュルールは、
”ロボットをプッシュバーまで運ぶ”という工程が必要になることで他ルールにあるような、”さっき戦闘に負けたけどあと1回だけ勝てば勝ち”という状況が生まれず、ゴール&逆転するには必ず連勝が必要になることが分かります。

プッシュは(OWの攻めは)連勝が難しい

ここまで読んで、じゃあべつに連勝すればいいじゃない、と思うかもしれませんが実際はそうもいきません。
先述した通り戦闘に連勝することは簡単ではありません。

その理由は主に以下の三つです
・アルティメットの存在が連勝を邪魔する
・ロボットを押しこむほどリスポーンが遠のく
・ロボットを押している側は地形的な不利を抱えやすい
一つ一つ説明していきましょう。

アルティメットの存在が連勝を邪魔する

そもそもOW(2)はプッシュに限らず連続で戦闘に勝つことは難しいゲームとなっています。
それはアルティメットアビリティ(以後ULT)が戦闘の勝敗に大きく関わってくるからです。

ULTは非常に強力で戦況に影響を与えやすい反面、毎回の戦闘で使えるわけではありません

そんなULTを複数使うことで1回勝つことは容易でも、そうすると必然的にULTが無い、ULTの数や相性で不利、といった戦闘が生まれるため、そういったULT不利な戦闘に勝たない限り連勝は難しくなるのです。

ロボットを押しこむほどリスポーンが遠のく

ロボットとプッシュバーは敵陣に向かって進んでいくため、必然的に味方リスポーンから遠く、敵リスポーンに近い位置で戦うことになります。

つまり、3対3などの少人数戦になったとき押し込まれている側(以後、防衛側)のほうが早く合流しやすく人数有利を作りやすくなります。

また、押し込んでいる側(以後、攻撃側)は戦闘に勝ったとしてもデスが発生していた場合リスポーンが遠いために次の戦闘に合流が間に合わず、強気にプッシュバーを押し込めないなんてことも起こりやすくなります。

ロボットを押している側は地形的な不利を抱えやすい

攻撃側はプッシュバーを押し込むため、または不意に押し返されないために常にロボット付近にいる必要が出てきます。
つまり、攻撃側の陣形はロボットの位置に強く依存するということです。

防衛側もリードを広げられないためにできるだけ早くロボットに触ったほうが良いとはいえ、戦闘に勝ちさえすれば被害を最小限に抑えられるためにその陣形の自由度は雲泥の差があります

また、基本的にOW2のマップはプッシュに限らず防衛側が良いポジションを取りやすく、攻撃側が不利になりやすいように設計されていることもこれに拍車を掛けます。

プッシュは”リードを守る”ゲーム

以上のことから、プッシュにおいて”ゴールを目指す”というのがいかに難しいか、また、逆転もゴールほどではないにしろ中々難しいということを理解していただけていたら幸いです。(もちろんだからと言ってゴール目前にして消極的にプレイするか?リード奪われたら負けか?というと全くそんなことはないです)

ということで、押し切るのが難しく、また逆転が難しいゲームであるならば、
逆に1度奪ったリードを守るのは比較的簡単であるといえます。

ここまでさんざん語った攻めにおける障壁がメリットとして働くわけです。

そしてプッシュのセオリーとは、この守りのメリットを最大限活用し、効率よくリードを守りつつリソースと時間を運用することに主眼を置いたものがほとんどになります。

プッシュのセオリー

セオリーの基本は先述した通り、防衛側のメリットの最大化と、リードをしているときの時間稼ぎです。
基本的には、リードをしている側はロボットに触れている時間を増やす、戦闘の回数を増やすことで効率的な時間稼ぎができます。
逆に、リードを奪われている場合はできる限り戦闘の数を押さえ、できるだけ防衛側をロボットに近づけないようなポジショニングと作戦が求められます。

ロボット運用

・可能な限りロボットに張り付く
→攻撃はもちろん、防衛側もできる限りロボットを止めながら戦うことのメリットが大きいです。特に負けている状態なら逆転が難しいルールなので1mでも奪われるリードが少ないほうが後々楽になります。
が、早く止めすぎて不利地形に突っ込む、味方と連携が取れなくなるといったことには気を付けましょう。
マップによりますが、ロボットを止めやすい地形、防衛が極端に有利になりやすい地形もあるので、早く止めれば止めるほど良いかというと難しいところではあります。

・ロボットを運ぶのは1人で十分
基本ルールで確認した通りロボットの運行速度は常に一定です。グループアップしているほうが強い構成、状況でない場合はロボットは1人に押させて次の戦闘で有利が取れるポジションや、敵の侵攻ルートを塞ぐポジションを取りに行きましょう。

・負け確状況ならロボットを止めながらデスする
プッシュは他ルールに比べてオブジェクティブの進行速度が速いので、リグループを優先した結果ディレイキルされると、その分リグループが遅くなるだけでなく、その分リードを縮められ、場合によっては致命的な敵のリードを許すことになります。
リグループも速い機動力のあるヒーローが最後に止めながら倒されるのが理想的です。
また、チェックポイントより奥にロボットがある状態なら第二リスポーンでリスポーンできるので、可能なら狙って止めながらデスしましょう。

リソース運用

・チェックポイント取得の攻防に命を懸ける
チェックポイント到達時はロボットが10秒間停止するため、先制で到達できた場合、敵のチェックポイント到達時と合わせて20秒間時間稼ぎができるため非常に恩恵が大きくなります。
また、先制到達側はこの停止時間内にデスすると第2リスポーンからリスポーンできるために損が少なくなるので、このタイミングは集団戦を起こしやすいと言えるでしょう。
逆に防衛側はチェックポイント到達直前の集団戦は勝てば爆アドですし、負けても停止時間によって押し込まれる距離を最小限に抑えられるので、何が何でもチェックポイント到達前にロボットを止めにかかりましょう。

・リードの逆転が発生する可能性のある戦闘には全身全霊を込める
逆転が難しいルールなので当たり前ですが、リードを奪える、奪われる可能性のある集団戦で出し惜しみはご法度です。
特に防衛側は、このタイミングでだけは絶対に勝てるようにULT管理をする必要があります。

・負けそうな戦闘では1killを全力で狙う
攻撃側のリスポーンが遠くなっていくことを逆手にとって、防衛側は1killとるだけで次の戦闘が大きく有利になるだけでなく、ロボットの侵攻を抑制する効果もあります。

応用編

ここからは裏目が大きく慎重に行うことが必要になるセオリーです。(もはやセオリーと呼んでいいのか?)
野良ランクより、チーム向けと言えるかもしれません。

・リード状況で時間切れ間近ならできるだけULT温存
リードしているなら最後のオーバータイムで勝てば勝ちなので、無理にULTを使ってまでリードを広げる必要はなくなります。もちろんロボットを押し返したほうが良い状況も少なくはないため、非常に難しい状況判断となるでしょう。

・地形有利で戦うためにあえて引き込むorロボットを押さない
リードをしている状況で効率よく時間を稼ぐために行われることがあります。特にコロッセオをの中央から自陣側にかけてのエリアは時間稼ぎに非常に向いており大会でもよく行われています。一方で、プッシュバーとロボットの距離を稼げないので、負けた場合そのままリードを奪われる直前まで行くことも。

・リード状況の時間切れ直前ではロボットを押さないほうが良いことがある
かなり稀なケースで行われる作戦です。ロボットは敵リスポーンに近づいていくので、敵がロボットに触れやすくなりオーバータイムが延長される可能性があがるため、オーバータイムでは下手にロボットを押さないほうが良いといえます。とはいえ、大抵の場合はあまり勝敗には関与しないことも多いです。

あとがき

以上、プッシュの解説でした。

プッシュはかなり特殊なルールであり、だからこそ戦略的に非常に深みのあるルールと言えます。
まあ実際はちょっと複雑すぎて野良での評判は現状あまりよくないんですが…この記事をきっかけに少しでもプッシュは面白いと思える人が増えたらいいなあと思っています。

まあこういった戦略性の強いルールはセオリーが浸透し始めてから、セオリーを盾にした駆け引きが始まってからが本番だと思っているので、もう一段階は面白くなるかなと、勝手に期待しています。

というわけで、ここまでお読みいただきありがとうございます。

OW2のランク配信をしたり、OWLが配信しているときは裏で観戦配信をしていますので興味ある方は見に来ていただけると嬉しいです。

それでは。

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