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私はJ.J.エイブラムスを心底信じてきたし、これからもずっと彼に身を委ねてゆこうと思った2015年末――『スターウォーズ/フォースの覚醒』

 謹賀新年。さっそくだが昨年末、『スターウォーズ/フォースの覚醒』を見た。すごかった。最高すぎた。あまりにもおもしろくて「こんなにおもしろくていいのか」となぜか涙が止まらず3Dメガネが曇って困ったので、ぜひ近いうちにもう一回2Dで見直そうと思っている。

 私はスターウォーズに関しては〝にわかファン〟でしかない、と正直に告白するところから始めたい。出会いは今から18年くらい前、高校生の時のこと。当時約20年ぶりに製作される新3部作が話題になるなか、慌ててエピソード4~6(特別篇・1997)を見て「ベイダー卿もいいけどボバ・フェットが一番好き」などと嘯き、『エピソード1 ファントムメナス』(1999)公開時にはお祭り気分でペプシのボトルキャップ収集に熱中、その後は冷めたもので、エピソード2・3(2002・2005)を鑑賞したのはだいぶ経ってからDVDでだった。往年のファンからするとハナクソみたいな にわかっぷりだと思う。

▲ この正月、実家で探したらたくさん出てきたボトルキャップ

 とはいえ青春時代に受けた衝撃は大きく、もうつくられないはずだったエピソード7~9の製作が発表された時には、新たな世代があのサーガを引き継いでゆくのかと思うとにわかファンなりにも胸が熱くなった。が、このエピソード7~9には、私にとってはそれ以上に感慨深い要素がある。監督を引き受けたのが、あの J.J.エイブラムスだということである。私は彼がプロデュースした米テレビドラマ『LOST』(2004~2010)にドハマりして以来、この人が好きだ。彼のなかには、子どもを楽しませることに無上の喜びを感じる親戚のおじさんがいる。繊細にして大胆な時計職人がいる。8ミリカメラ片手に駆ける永遠の少年がいる。そんな私の勝手なイメージは、J.J.が監督・脚本を手掛け、スティーブン・スピルバーグが製作総指揮を務めた『SUPER 8』(2011)によって不動のものとなった。極上のエンターテインメントを謳っておきながら、その実、手ぬるくてしかも悪びれない詐欺師が跋扈するこの現代社会にあって、J.J. は稀有な存在だ。小道具や脇役の見事な活かし方、昨日までに作られた無数の作品に敬礼するような演出、子どもが思いついていつの間にか忘れてしまった遊び心あふれる謎――J.J.のどこを切り取っても本物だ。完璧だ。彼についていけば間違いない。

▲ J.J. エイブラムス

 ……誉めすぎた。誉めすぎたけれども、思わず過剰に誉めまくりたくなる瞬間が、彼が手掛けた作品を見ていると度々訪れることは確かである。そして今、『スターウォーズ/フォースの覚醒』を見た私は彼を誉めまくらずにはいられない。これはスターウォーズにわかファンがいうことではないだろうが、ほんと恐れ多いが、この勢いに乗ってあえていいたい。スターウォーズ・サーガを締め括るのに J.J. 以上の適任者はいない、と。

▲座席はもちろんJ列

 ここまで、私は『スターウォーズ/フォースの覚醒』の作品内容に一切触れずに J.J. のことばかり書いてきた。もちろん、「あの場面のあれがいかにもJ.J.らしくて素敵だった」とか「この人をこんなふうにこうするなんてさすがJ.J.、ニクいね J.J.」とかなんとか、J.J. ファン目線で魅惑的な細部を並べ立てるのは簡単だし、そうしたい。でも、作品内容に関する情報をシャットアウトしたうえでスクリーンに対面できてよかった、おかげでとことん無邪気に驚き楽しめた、と思える映画体験を味わった身として、今回それは我慢しなければならない気がする。やはりこのまま『フォースの覚醒』を監督した人物がいかに素晴らしいかというテーマを貫き、以下、個人的に大好きな『LOST』と『SUPER 8』の紹介でもって J.J. 讃歌を補強して、本稿を閉じることにしよう。

■ 『LOST』

2004~2010年/アメリカ/製作・監督・脚本:J.J.エイブラムス(一部)、製作局:ABC/出演:マシュー・フォックス他

 島とはいったい何なのか? なぜ彼らは島に引き寄せられたのか? ――そんなことほんとどうでもよくなるくらい、全篇に散りばめられたSFやオカルトや文学・哲学・宗教的テーマ、そして過去のA・B・C級映画へのオマージュが愉快で、それぞれに傷を抱えた登場人物たちが実に素敵で、それら・彼らすべてを綿密かつ行き当たりばったりに結び付け掛け合わせるチームJ.J.の手腕と遊び心にひたすら感嘆しながら、全6シーズンを駆け抜けた。
 かつて、電気技師だった J.J. の祖父は愛する孫に「?」と記された箱を与え、しかもそれを開けることを固く禁じたという。まさに J.J. の、そして『LOST』の原点ともいえるエピソード。謎はただそこに謎として、「?」としてあり続ければそれだけでいい。『LOST』の魅力は、謎の箱の中身にあるのではなく、箱の周囲を右往左往一喜一憂しながら健気にがんばる人々のがんばり様にあるのだ。

 もちろん女性陣の活躍も素晴らしい。『フォースの覚醒』の主人公が女性だと知った時から、さぞ J.J. 好みの活発で伸びやかなヒロインが飛んだり跳ねたりするのだろうと楽しみにしていたら――

 ――案の定、予想通り、そして期待以上に新人女優のデイジー・リドリーが最高に素敵だった。よかった。

■『SUPER 8』

2011年/アメリカ/監督・脚本・製作:J.J.エイブラムス、製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ/出演:ジョエル・コートニー、エル・ファニング他

 1979年、オハイオ州。スーパー8ミリカメラでゾンビ映画制作に熱中する少年たち、謎の鉄道事故、偶然撮影してしまう〝写ってはいけないもの〟。間もなく小さな田舎町に巻き起こる怪物騒ぎ、それを解決しようと奔走する保安官。『E.T.』や『ジョーズ』、『未知との遭遇』といったスピルバーグ作品へのオマージュとトリビュート、そしてかつて16歳にしてアマチュア映画祭で注目された J.J. 自身の郷愁だらけの映画。どこまでも古風で安定したテーマと展開のおかげで、見ててなんか落ち着く。

 あとこの映画を見て一番の収穫だったのは、エル・ファニングを知ったことだ。いつもつまんなそうにしてる大人びた美人で父親が酒乱、という憧れの女生徒の典型がピッタリはまっていた。彼女がゾンビメイクでうめき声をあげながら、主人公の少年(特殊メイク担当)の肩に噛みつく演技をしてみせるシーンには見惚れた。


 『フォースの覚醒』をこれから見ようと思っている人も、もう見た人も、ぜひついでにこれまでの J.J.エイブラムス作品をあわせて楽しんでみてほしい。ここで紹介したものだけでなく、『ミッションインポッシブル3』や『エイリアス』、『スタートレック』もとっても楽しいよ!

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