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組織図は企業の未来を示す設計図!中小製造業の利益(付加価値)を生む組織形態とは?

1.製造ライン組織から開発型組織へ脱皮する

中小製造業の利益(付加価値)を生む組織形態へ転換させるためにはどうすればいいでしょうか?

中小製造業では、今まで、取引先企業から受注した製品を図面通り加工し、納期に合わせて生産するための組織を構成し、運営してきました。

受注生産に適した組織とは、取引先からの受注窓口である営業部門、納期通りに生産するための生産管理部門、図面に合わせて加工組み立てを行う製造部門、検査や品質管理を行う品質管理部門などが、主な組織です。

今まではこのようなライン組織があれば、十分に受注生産に対応が可能でした。

しかし、現在はライン組織から、図面通りの品物を作って納期通りに納入しても、付加価値を生み出すのは難しく、また新たな顧客獲得は困難な状態で、ひたすら注文が来るのを待っているしかありません。

中小製造業のほとんどは、このような取引先からの受注品を加工して納入
する形をとってきましたが
受注は減少傾向、儲からない、取引企業からのコストダウン圧力など、コロナ禍以降、一層厳しい環境下で、苦しい経営を強いられています。

そこで、当研究所では下記の記事において新たな付加価値業務の取り組み
の提案を行っています。

 ★製造業から「受託製造(サービス)業」に変身する4つのポイント
   http://factorysupport-takasaki.com/article/477739046.html   

その中で、これからはどのような組織形態へ転換が必要なのか、詳しく解説します。

この図は、受注開発設計型企業の組織図です。

この組織の、右側は従来の受注生産に対応する組織です。
左側は、新に創設する組織で、新たな顧客対応、新製品・サービス対応の組織です。

従来の工場機能は、設備自動化やIT化によって生産性を高めていきます。
そこで余力が生じた人材を新たな組織を構成する人材として教育し、配置を行っていきます。

この組織形態へ転換するためには、「自社の強み(独自技術)の発見と育成」「人材へ投資強化」「新顧客獲得のプロモーション機能」について強化していき、その機能実現のために必要な組織を作っていくことが必要になってきます。

結果として、従来のライン組織は縮小し、その代わり人材は付加価値を生む受注開発型組織へシフトさせます。
上の組織の例では、新たに「開発営業」「開発」「工程技術」の新たな組織を創設しています。

開発営業課
主な業務は、インターネットを介して顧客との会話、受注獲得、新技術提案
などを行います。

これからの営業は、自社固有技術を背景にWebマーケティング機能を強化し
ネットからの問合せや受注活動に注力していくべきで、新たな顧客をネット
を介して獲得していくことが求められます。

開発課
顧客に対して新たな技術、加工方法の提案を行い、試作等を顧客と共同で
実施し顧客とパートナーとしての信頼関係を構築、新たな受注に繋げて
いきます。

工程技術課
新たな製品の製造工程設計、必要設備の導入、治工具の準備、作業指導など
を行います。顧客の要求するQCDを満足するための事前準備を万全な形で
実施します。

これら組織の機能は、それぞれの担当者の高いスキルと経験に支えられておりそのような人材を以下に育てていくかが最大のポイントとなります。

ここで、組織を作る目的について改めて考えてみましょう。
組織図をつくるということは、単に部署と責任者の名前を書いた四角いボックスとそれらを結ぶ線を張りめぐらした図を描くということではありません。

組織とは、仕事をよりうまく進めていくための人の集まりなので、そこでは  
 ・どのような役割の分担をするのか
 ・どのような意思決定の責任と権限があるのか
 ・どのようにすれば人が育ち、よりよく仕事をしていけるのか
が定まっていなければなりません。
そうしたことを踏まえた組織図であるべきなのです。 

中小企業では殆どの企業が組織や権限を規程化しておらず、業務の範囲と課長、係長などの職位の権限範囲が極めて曖昧です。

人手不足で、組織を決めても結局、全員でものごとを進めなければならないので大企業のように組織を作ってもムダ!という考えがあります。

形式的には各機能毎に分離独立して一応の組織形態をなしてはいますが、実際面では部門の責任者を飛び越えて、社長や他部署から直接あるいは間接的に指示や命令が出されるようなことがしばしばあります。
残念ながら、組織図が単に人の配列表の役目しか果たしていないのです。

こうなると、組織の独立性も尊厳も無視されて、組織の責任者が全く関知も関与もしていない業務命令が存在するという摩訶不思議なことが起こるのです。必然的に組織は混乱しバラバラになってしまうのです。

中小企業の基本的な弱さの原因に、ルールやしくみがないことがあげられます。そのいちばんの根源は、どの部門は(だれが)何の役割を分担するのかということと、どんなことはだれが決定する権限をもっているのかが、あいまいであることです。

ただ、この曖昧なことと「組織を決めても結局、全員でものごとを進めなければならない」ということは根本的に違います。

「全員でものごとを進めなければならない」ということは、中小企業の人材は「多能工」であると言うことです。

でも、何を行うにしても、そこには組織(責任者)が存在し、その責任者が中心となって、組織力を動員して仕事を完成させなければなりません。

結果が悪かったら、責任者は組織として、何が不足していたのか?を明らかにし仕事のやり方を改善していかなければなりません。

そこから、組織の成長、人材能力のアップが図られます。責任者が不在の、仲良しクラブ的な集まりで仕事をしていたのでは、会社は良くなりません。

そこで、組織図ができたらぜひとも、会社の基本的な運営ルールをつくられることをお奨めします。

主な必要ルールとしては
 ・業務分掌(部署ごとの役割分担を数行で表現)
 ・役職者権限規定(承認行為、業務計画立案、部下教育など)
 ・組織階層(次長、課長代理などは廃止し、シンプルに)
 ・スタッフ部門(ライン業務以外の組織)
 ・辞令(組織を正式移動する場合の通達)
 ・組織図は経営計画書に毎年入れて、変更点、変更理由を説明する

2.組織設計の手順

組織体制を整備するための手順を考えてみます。
2,30人の会社であれば、社長がすべて一人で決められる範疇ですが、100人を越えて来るとそうはいきません。スタッフ数人でチームを組んで作業します。

(1)現状認識
組織的な経営を行うためにまず現状組織の認識が必要です。
現状の組織図が無い場合は、各部署課・責任者・人員数等を把握し、表にまとめます。
また、経営方針や年度計画に照らし合わせて、それを実行するための必要な機能や人員を洗い出します。

(2)組織の見直し、再構築
組織図を基に専門家等の意見を聞き次の事項を確認します。
この作業は、総務(人事)部門のスタッフを中心に、不足する場合は、スタッフを他の部署から招いて、プロジェクトチームを構成して作業に当たります。
 ①不足・重複している部署を洗い出し、新たな部署の設置統合案を考える。
 ②責任者不在部署・人員不在部署を洗い出し、人員移動補充案を考える。
 ③経営計画等に適さない業務範囲と職務権限委譲が起きていないか調べる。
 ④内部牽制機能が働く組織・人員配置となっているかを判断する。
 ⑤自社の業種・業態・規模に適した組織になっているか判断する。
など これらを踏まえあるべき組織図案を作成します。

(3)他規程との整合性
社内規程[社内規程の作成]に謳われている条文と照らして、矛盾(業務分掌
と職務権限等)がある場合は修正します。不足してる社内規定があれば、新
たに作成します。

(4)承認
取締役会の承認を得て施行・徹底します。
新たな組織や移動によって業務が変わる場合は、その組織の責任者(予定者)にトップより、組織の役割や権限について説明し、理解させ動機づけを行います。トップは、全従業員に対して、新組織の目的、役割について説明し徹底を図ります。

3.日本とアメリカの組織の違い

従来より日本企業の多くでは職務の役割や機能が明確では有りません。それは日本企業の組織や仕事の分担が人を起点に考えられているからで
「今いる人」に仕事や役職を割り振るから、「副○○」や「○○代理」といった職責の曖昧な肩書きが氾濫することになるのです。

アメリカの企業では「組織は戦略に従う」という原則があります。
まず明確な戦略があり、それに最も適した組織を設計する。その組織は、役割や機能がはっきりとした職務で構成され、それぞれの職務に適任の人が就く。日本企業が「人ベースの組織」であるのに対し、米国企業はあくまで「職務ベースの組織」なのです。

組織力を高めるには?
組織力を高めるとは、目的達成のために、そこに集まる多様な個人の力を結集し個人の力の総和以上の力を発揮することです。そのためには、個人1人ひとりの役割がはっきりと認識され、その役割が全力で果たされなくてはなりません。
役割とは、機能(例:生産、マーケティング、セールス)だけでなく、階層によっても異なります。

ただ気をつけなくてはならないのは、個人個人に明確に役割が分担され、その役割が果たされる=組織力が高い、とは必ずしもならないことです。
繰り返しになりますが、「役割を明確にする」ことは大切ですが、組織に必要な機能、仕事のすべてを明確にすることはできません。

その意味で、組織力とは「個人個人の役割がきちんと果たされること」だけではなく、役割としてはっきり規定できない隙間が埋められ、さらには「個人個人の仕事を組織の力として結びつける」ことがどうしても必要になります。

組織図は、その企業を映す鏡と言われています。
組織図をみれば、その企業の業績が分かります。それほど組織図は重要なものなのです。自社の組織図をよく眺めて、どこに問題があるのかよく、考えてみてください。

(1)理念の共有:経営トップの戦略・ビジョンを、組織を通して浸透させる
(2)コミュニケーション:進捗や問題をメンバー間で情報交換できる
(3)組織の役割:誰がいつまでに何をするのか、責任と権限が明確
(4)社内論理の排除:顧客志向の組織になっている
(5)成長する組織:明日の幹部を育てるしくみになっている
この要素がどれか1つでも欠けると、組織形成のメリットがほとんど無くなってしまいます。

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