ひょっとして「沈んでるテンションを無理やり上げさせられて、体揺らされたい」みたいな映画とか探してますか?
《映画の話は、往々にしてネタバレになりやすいので、気になる方は読まない方が良いかもしれません》
気分が沈んだときに、どのように気分をアップするか、その方法にも人それぞれ秘訣なり相性があるのかと思う。
往々にして言われることが「人生が幸せかどうかは、結局はその人の気持ち次第」とか何とか。
今回は「目の前の問題は何も解決していないが、とにかく何だか気分だけ少しだけ良くなった」という効果のありそうな映画を5作紹介したい。
気付けば、悲しい気持ちは吹っ飛び、体がノリノリで自然に揺れている、ってな具合になるかもしれない。
『ブルースブラザーズ』
(監督:ジョン・ランディス 1980年・アメリカ)
主人公は、カトリック系の孤児院で育った兄弟。
冒頭は、強盗で服役していた兄が、刑期を終えて刑務所を出所し、弟がそれを迎えに来るシーンで始まる。
兄弟はかつて自分たちを育ててくれた孤児院に出所の挨拶に行くが、その孤児院がお金の問題を抱え、閉鎖の危機にあることを知る。
兄弟は孤児院を救うため、かつてのバンドメンバーを勧誘に行き、バンドを再結成し、お金を稼ごうとするわけだが、道中で様々なトラブルを巻き起こし、最終的に別のバンドや警察、軍隊にまで追われ始めるというコメディ映画である。
名前でピンとこない人もいるかもしれないが、黒の帽子、サングラス、黒のスーツ上下という全身黒ずくめの2人組のキャラクターを見たことがあるかもしれない。
あー、あの2人か、とここでピンときた人は、その2人でたぶん合っている。
さて、実は私は小学校2年の頃からこの映画が大好きで、少なく見積もっても何十回も見ていると思う。
子供の頃などは、見終わった直後にビデオを巻き戻し(懐かしい!)、3回立て続けに見たということもあった。
この映画の“ブルー・ルー” マリーニという人のサックスの音が好き過ぎて、サックスの魅力に取りつかれ、自分でお小遣いを貯め続けて、テナーサックスを買ったくらいである。
この映画のことを語り始めるだけで私はテンションが上がるが、この映画はコメディであると同時に音楽映画である。
全編、R&Bやソウルミュージックが流れ続け、ジェームズ・ブラウン、アレサ・フランクリン、レイ・チャールズ、キャブ・キャロウェイ、
ジョン・リー・フッカーなどの黒人アーティストの大御所も歌いまくる。
黒人の音楽が好きな若い世代の人が今見ても、心に刺さるものがあると思う。
さて、私はこの映画をいつ見ても、全編通して体揺らされ続けるわけであるが、とにかく盛り上がり方のスケールが最高にバカバカしい!
楽器屋の店長を演じるレイ・チャールズが、店のキーボードを弾きながら歌い始めるシーンがあるのだが、段々と店内のバンドメンバーがノリ始め、店の外の通行人もあわせて踊り始め、最終的には町中の人たちが踊り始める。
これを見て、子供の頃のイノセントな私は「アメリカって、何て楽しい国なんだ! アメリカ人、素敵!」と思った記憶がある。
登場人物が世界中で踊り出す、というインド映画っぽいノリも混じっている?かもしれない。
因みに、この映画が原因で子供の頃に買ったテナーサックスは、今は吹かれることもなく、青春の名残として、実家に眠り続けている。
2.『フェリスはある朝突然に』
(監督:ジョン・ヒューズ 1986年・アメリカ)
ジャンルとしては、青春コメディ映画と言ったところか。
主人公は、シカゴの郊外に住んでいる高校3年生の男の子で、彼はある朝突然、仮病で学校を休むことに決めた。
うまく恋人を学校から連れ出し、親友を家から誘い出すなどした挙句、親友の父のコレクションであるフェラーリを勝手に乗り込み、シカゴの街へと走り出す、、、といったストーリーである。
1作目のブルース・ブラザーズと同様、本作も舞台はシカゴである。
私はシカゴに短期間だけ住んでいたことがあるのだが、そのとき、1人の日本人女性に「シカゴに来たきっかけ」について話したことがある。
私はブルース・ブラザーズ愛を熱く語ったのだが、彼女は本作がきっかけとなり、シカゴに興味を持ち始めたとのことだった。
年代も同じくらいのその女性が、自分とは別の映画に心を動かされ、シカゴにたどり着いたというエピソードが面白いと思い、この映画を意識するようになった。
この映画で体揺らされる場面は、ラストのシカゴの街を横断するパレードのシーンだ。
厳密には、本作の映画音楽というわけでもないのだが、ビートルズの「ツイスト・アンド・シャウト」にあわせて主人公がはしゃぎ、それに合わせて、街中が盛り上がる大げさ具合は、上で紹介したブルース・ブラザーズと少し似たテイストであるようにも感じる。
因みに、本作は全編通じて体が揺らされる音楽が流れるという映画ではない。
3.『ベビーシッター・アドベンチャー』
(監督:クリス・コロンバス 1987年・アメリカ)
さて、本作もまたまた舞台がシカゴである。
シカゴは体揺らす街のようで、これは仕方がない。
今度は主人公が高校性の女の子であり、ボーイフレンドからデートをキャンセルされてしまった彼女は、友人と過ごそうとするが、母からご近所さんのベビーシッターを頼まれる。
子供たちを連れて移動するさなか、犯罪現場を目撃してしまい、犯罪者グループから追われることとなるといったコメディ映画である。
本作の体揺らされどころは、犯罪者たちに追われる子どもたちが「ブルースバー」に逃げ込んでしまうシーンである。
成り行きでステージに立たされた子供たちに対し、強面のバンドは「ブルースを歌わないと帰れねえぜ」と言う。
「えっ!ブルースなんて歌えない、、、」となるかと思いきや、子供たちはその晩に起こった出来事をもとに即興で「ベビーシッティング・ブルース」
を披露し、バーは大いに盛り上がる。
余談であるが、この逃げ込んだ先が「ブルースバー」というくだりは、私の好きなコメディ映画の「ポリスアカデミー」のお約束ギャグに似ていて、
いつも思わず笑ってしまう。
(「ポリスアカデミー」シリーズでは、誰かが誰かに追っかけられ、偶然逃げ込んだ先がゲイバーで出られなくなる、といったお約束をしつこいくらい
何回もやるのが定番になっている)
本作も全編、体が揺らされる音楽が流れる映画ではないので、ご注意を。
4.『エルヴィス』
(監督:バズ・ラーマン 2022年・アメリカ)
昨年、映画館に見に行き、体揺らされて帰ってきたばかりなので、紹介しておく。
タイトルのとおり、エルヴィス・プレスリーの生涯を描いた伝記映画である。
それ以上でもそれ以下でもないのだが、比較的新しめの映画でもあり、エルヴィスの音楽が好きであれば、普通に体は揺れたぜということをお伝えするために推しておく。
因みに、私は小学校2年生の頃からブルース・ブラザーズが好きだと書いたが、エルヴィスは幼稚園児の頃から親父に強制的に聴かされていた(どんな教育じゃ!)。
子供の頃に、歌詞の意味が全然分からないのだが、エルヴィスのマネして「アドン、ワンノーアザーラ~ヴ」とかやると親父にウケ、嬉しかった記憶がある。
ブルース・ブラザーズのエンディングもエルヴィスの「監獄ロック」で閉めてるわけだが、幼少時代の親父による因縁めいた洗脳のような何かを感じる。
5.『スウィングガールズ』
(監督:矢口史靖 2004年・日本)
今回は最後に邦画である。
本作は、ひょんなことから吹奏楽部の代わりを務めざるを得なくなった高校生たちが、ビッグジャズバンドを組み、次第にジャズにのめり込んでゆくという話である。
私は上に書いた「なけなしの小遣いで買ったテナーサックス」を活用するため、10代の頃にビッグジャズバンドに所属していたことがある。
入部当初、先輩たちに口を揃えて言われたのが、このタイトルの「スウィング」である。
専門的には、8分音符の3連符で弾くとか難しい説明があるわけだが、簡単に言うと「跳ねるようなジャズ特有のリズム」のことである。
大げさに言うと、楽器を「タタタタ」と弾かずに(吹かずに)、「タンタ タンタ」と弾く(吹く)みたいなイメージである。
これに対し「イーブン」という言葉があり、上手く演奏しないと先輩から「全然スウィングしてねーじゃん、思いっきりイーブンになってたじゃん」とかぶった切られるわけである。
本作については、最後のコンサートのシーンで主人公たちのビッグバンドが演奏する「Sing, Sing, Sing (With a Swing)」で、タイトルどおり見事に体をスウィングされる(揺らされる)ことだろう。
以上、沈んだ心をアップしてくれそうな5作を紹介した。
因みに、沈んだ心をムリにアップしようとしなくても、暫くは悲しい気持ちに浸っても、それはそれでよいと思う。
ただし、人生は有限なので、私はできることなら早く気分を回復し、笑ってる時間が長い方がいいかな。
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