見出し画像

Mirko Leuzziの漫画風日記と官能的女性の展示を見る

先日、Mirko Leuzziという若いアーティストの展示を見に行った。
会社から割と近くの、アパートの一角にあるギャラリーで行われていた展示で、訪れた夜はちょうどオーナーが不在で、彼女の父親という初老の男性が対応してくれた。そのため、説明らしき説明は得られなかったが、カラフルで笑える文章がたくさんあり、"型破りで挑発的な個性を持つアーティスト"という紹介がされていたので、少し作品をお見せしようと思う。

Mirko Leuzzi(1992-)
Roma生まれ。
自分の創造的欲求を理解するために旅を始め、2020年、ほとんど偶然に、友人から最初のキャンバスと数色の絵の具を与えられる。
その日以来、絵を描くことをやめず、最初のLockdownにより、この新しい表現方法に慣れ親しむようになる。

HPのbioを抜粋

作品は、自画像をコミック形式というか日記風に仕立てた色鉛筆で描かれたいわば男性的パートと、大きなキャンバスに描かれた色とりどりの服を着た官能的な女性たちの女性的パートの二つに分かれる。

まずは男性的パート(作者本人)からご紹介しよう。

右上→僕が書くものを読むには、漫画が欠かせないのさ。
右下→もしわかってないなら言うけど、僕が君の神だよ。この本を閉じるか、君の羊飼いについていくんだな。
上の左から時計回りに。
・プレゼン
・これが僕の自画像だよ。Mirkoだよ。なんてこった、唇をピンクに塗っちゃった。
・実際、これらのデザインを見ると僕だってわかるよ。
・そんなにデザインはうまくないんだ、あはは。よく見るとわかるけど、毎回僕の顔を描くと違う風に見えるんだ。
上の左から時計回りに。
・ぼくがデザインしているんだ、だから僕が全部決めるんだ。君に僕の能力をわからせるために、このピンクを残しておくことに決めたんだ。
・消せるし、唇をこのピンク色にしないことだってできるし。
(下品なので割愛。デザインを見て想像してください…笑)
・君に言おうとしていることは、ぼくがデザイナーでも漫画家でもないってことだよ。僕は作家なんだ、イェーイ、んなわけないだろっ、僕はなんでもないよ、単なるバカだよ。
近景①
近景②
上の2つを左から(下は下品だから割愛)。
・不安に苦しむから手に汗をかくんだ。このシミは汗によるものだよ。
・これは僕の本だから、好きなようにやるし。
・僕のこの大きな不確かさは鬼才として世界に映し出されるんだ。きっと素晴らしい何か、本/漫画/映画とかになるよ。僕のお葬式では教会が爆発するよ、だって僕が偉大だからさ。
・僕は自信のない弱いナルシストだよ、勝つんだMirko!(下品な箇所は割愛)
上の2つが面白いので、左から意訳を付けよう。
君たちを海か山へ連れていけるよ。
どんな綴りのミスもできるし、句読点を付けずにどんな暴言もはけるし、女性器も描けるし、ぼくが望む誰しもをあざ笑うことができるよ。
近景

Lockdown中に独りで呟きながら描いていた感が強い作品だと思う。
言葉遣いが若く、くすっと笑えるのと、実際に私の若い男友達の何人かもこういう話し方をするので、彼らを思い描きながら読むと結構笑えた。

次に女性的パート(官能的な女性像)に移ろう。

位置的にうまく撮れなかったけれど、結構なまめかしいですよね。
虎柄のベッドに包まれた白目をむきだした女性なんて。。。
近景
今夜の私、どうかしら、ちょっと近くで見てみる?みたいな(笑)
壁と作品の間が50センチくらいしかないから、隙間に入って撮るとどうしても斜めになる。
お前、やるのか?なにをー?と言っているような虎と黒豹、強そう。
私、今日は毒キノコような強力な力で、獅子のように攻めるわよ、うふっ(本当か?)
おしとやかに見えて、私、どんな虎だって手名付けちゃうのよ。だからあなたなんて朝飯前よ。
ちょっと疲れちゃったわ、横になってていいかしら?

彼女たちの衣装や寝具が実に色とりどりで、一様に見開かれた目の白目部分が大きく、不穏な雰囲気を醸し出しているけれど実に官能的だ。
ちなみに、ヴィンテージの布地がアーティストのフェチだそうだ。自分がこだわっているものを敢えて女性たちの身にまとわせ、そこにライオンや虎等の強い動物をモチーフに多用しているところを見ると、彼女たちに誘われたい、もしくは襲われたい願望が強くあるでは、と思われた。

作品をご覧になられて気づかれた方も多くいらっしゃるかもしれないが、自画像シリーズにも女性シリーズにも言えるこのアーティストの作品のポイントは白目にある。絵画でもコミックでも、彼のスタイルの特徴として、白目は意図的に鉛筆で残されている。それにより生み出された「目の暗黙的な深みと無表情さとのコントラストは、人間の経験の複雑さと豊かさを強調している」という一文が、この展示が伝えたい裏の意味なのかな、と想像する。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?