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娘からチョコレートをもらえるんです。

「ただいま、帰りましたよー」というと、娘6歳が玄関まで駆け寄ってくる。何やら後ろ手に隠しながら。何か言いたそうな顔と目。ん?1日早くないか。
「はい、パパ、バレンタインのチョコレートだよ!」
「おお~、ありがとう」
「きょう、ママとつくったんだよ。ほんとはバレンタインは明日なんだけど、もう今日わたしちゃうね!」

まだ晩御飯を食べてないからちょっと待ってね、といいながら、スーツを着替える。娘はとにかく早く食べてほしいようだ。バレンタイン前日に準備したけど、もう待ちきれなくて渡してしまう娘。なんてかわいいんだ。

小さく、かわいらしい袋の中には、チョコレートが6個入っていた。僕の世代だと「チョコフレーク」と表現してしまうのだが、今はフルグラとか、そういう類の商品名になるのだろう。サクサクする食感と、ドライフルーツの酸味が合わさったものを、湯せんで溶かしたチョコレートに混ぜて、型に入れて固めてつくってくれたらしい。ボコボコしていて隕石を思わせるような無骨な形であるが、それがまた愛らしい。

手早く晩御飯を済ませて、さっそくチョコレートをいただくとする。ピンクやシアンといった色の、宇宙の砂のようなトッピングがのっていて、食感としては、雨が降った後の最悪なコンディションのスキー場を滑るような、ガリガリとした音を立てているけれど、味は意外と美味しい。思わず「おいしい!」と笑顔で言えた自分にホッとする。食リポの芸人の気持ちが分かる。娘6歳は、満足げな表情を一瞬浮かべたけど、すぐに他のチョコレートも食べろと急かしてきて、その調理過程の説明に夢中になる。

平和だ。実に平和なバレンタインデー。なんて日だ。好きな人から愛を告白されなかったり、待っているだけだったり、気付かないふりをしたりする人がいるのだとしたら、申し訳なく思う。そんなヒリヒリした1日を過ごしている人もいるのかもしれないが、我が家は平和そのものだ。

つまり、バレンタインデーというのは、5、6歳の女の子が、パパにチョコレートを贈る日なんだと思う。まだパパが大好きで、その好きな気持ちを形にできたことが嬉しくて、またパパが好きになっちゃう、ありがたい日なのだ。

それでいて、6歳の娘は、まだスレた様子もない。来年、小学1年生になったら少し変わってしまうだろうか。パパは最近太り気味だから、トッピングは少なめにした、なんて言われてしまったら、日経平均株価がいつもより1,000円安くなってしまうかも。他の男子に贈るチョコレートが優先されてしまったら、45歳にしてジブリ映画のように大粒の涙があふれるかもしれない。

やっぱり、いつかは、ほろ苦いカカオの味が復活するのか。。甘すぎて一気に食えないなーって思ってたけど、今はしっかり味わって食べることといたします。

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