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歴史は考えてこそ面白い。読了日記『歴史を何故学ぶのか。』本郷和人

ざっくりこの本に書かれていること。

歴史学者の著者の日本史に対する課題提起


日本史は資料が多すぎるが故に、資料を基にした事実のみに依拠した文脈で歴史をまとめる動きが現在も強い。教科書編纂にもその影響は強く、歴史としての事実のみをまとめたものになっている。しかし、本来その資料と資料の間を考えたり、余白を事実関係との因果をもとに推測しながら、物語を紡いでいくことにこそ歴史の面白さがあるのではないか。それが歴史を考えるということなのではないかと主張している。著者自身は歴史研究者について次のように述べている。


私が歴史の本を読むなら、その著者にしか語り得ない視点や考え方が紹介されているものを読みたいと思っている。つまり、私でなければ語れないことを歴史研究者は語るべきだと思います。それが歴史研究者のプライドであり、歴史研究者の腕の見せどころであるはずです。

『歴史をなぜ学ぶのか』

上記の考えのもと、歴史を考える楽しさを伝えるべく、日本史の大枠の流れを掴むための本著が書かれている。

6つのターニングポイント(自分用質低いメモ)


①壬申の乱とそれ以降の出来事
 壬申の乱によって、関東という概念の誕生。天皇という概念の拡大。(古事記、日本書紀)

②平将門の乱
 西高東低の日本において、関東だからこそ、朝廷の影響を受けずにある程度ライジングできる素地が平将門をきっかけに勃発。彼らの身分が武士。

③鎌倉幕府の成立(保元の乱、平治の乱、治承・寿永の内乱、承久の乱)
複数の乱を通して、武士の立場の向上。頼朝の朝廷との距離感の作り方。天皇との関係性には複数の説あり。

④応仁の乱
幕府秩序が崩壊し、地方勃興の流れが生まれる。朝廷と幕府を中心とした日本という感じではなくなった。

⑤関ヶ原の戦い
天皇はほぼ登場しない。江戸時代ほぼ出てこない。

⑥明治維新
ペリー来航という外圧によって、天皇が再び登場。江戸時代の国学が拍車をかけた。

全体に通じるのは日本という国の大きなアイデンティティーとして天皇がある。万世一系という世界でも類を見ない特性を持っている。これが良いか悪いかの議論はさまざまではあるが、この天皇と時々の権力者の距離感と関係性が上記6つのターニングポイントによって変化することが重要である。


感想(考えたこと)

国家のために思想が生まれ、思想のために国家は滅ぶ

  • 幕末に訪れたぺリーという巨大な外圧。

  • 志士たちの危機感。「このままだとやられる!」

  • 迫られる国家体制の変革の必要性。

  • 国学という学問の隆興。「これだ!」

  • 天皇中心の中央集権国家の確立。

幕末から明治はわかりやすく物語を感じる。巨大な敵に立ち向かうため、これまでの当たり前を破壊して、新しい形で敵に挑む。そんな大きな物語。その物語の超重要登場人物が天皇なのだ。天皇の存在によって日本をまとめ、江戸幕府を滅ぼし、明治新政府を作った。

その後、近代化に成功した日本は各戦争に勝利。アジアの大国として、国際連盟常任理事国にも名を連ねた。

しかしそこから数十年で今度は天皇のため、国のためと多くの国民が命を落とした。原爆を投下された。その局面の政治家が愚かであったとか勇敢だっただとかいう判断もあるだろう。

が、それよりも西洋から国家を守ろうとしたが故に国学を基に天皇を建てて、結果多くの成功と多くの失敗が産まれたのは示唆深い。

著者がいう物語を私は繋がりと解釈している。Aという事象があって、Bが起こり、BによってCが起きる。その繋がりが学べば学ぶほどあらゆる方面で見えてくる。その面白さは確かに物語そのものと言っていい。この面白さを砕いて伝えて興味になる力が欲しい。まだまだ勉強。

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