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「北海道大学ぶんぶく茶釜研究会」とは何ぞや。


はじめに

 どうも、北海道大学ぶんぶく茶釜研究会です。
大学には落語研究会や映画研究会など、さまざまなサークルがあるわけですが、「ぶんぶく茶釜研究会」と聞いて、それが何をやっているサークルなのか、どんなサークルなのか理解できる人はいないでしょう。ということで、この文章では、「北海道大学ぶんぶく茶釜研究会」とは何ぞや、ということを書いていこうと思います。

北海道大学ぶんぶく茶釜研究会になるまで

 北海道大学ぶんぶく茶釜研究会(以下、ぶん茶研)は、突然生まれたわけではありません。ぶん茶研ができる前に、「北海道大学石仏研究会」と「北海道大学民俗学研究会」という二つの研究会がありました。ここでは、これらの研究会がぶん茶研になるまでの変遷を、箇条書きでささっと記していきます。

前史
2022年12月
川端康成『伊豆の踊子』にハマる(伊豆の踊子ブーム)。

2023年3月
川端康成になりきろうと思い、
旧制高等学校の学生だった川端康成が実際に泊り、『伊豆の踊子』の舞台となった旅館「福田屋」(静岡県賀茂郡河津町)に宿泊する(二泊三日)。
 

福田屋
福田屋周辺の景色

 

伊豆に来たものの、全く予定を決めていなかったので周りをぶらぶらお散歩する。田舎道を歩く中で、いくつかの石仏や石柱、石碑に出くわす。なんだか心惹かれる。


石仏
石碑

 

伊豆二泊三日の旅行が終わった後、東京の神田神保町に行く。そこで、石仏の写真集『石の小仏たち』(森田拾史郎編、芳賀書店、1974年)に出会う。石仏にハマる(石仏ブーム)。




北海道大学石仏研究会

2023年3月~5月
札幌に帰り(1)、石仏を探して、札幌市内やその周辺を歩く。
このような、石仏を探し記録する活動を「北海道大学石仏研究会」と称して行う。
ただ「研究会」といっても、個人の活動。


東区の庚申塚
小樽光明院の庚申塚



2023年5月20日
小樽手宮で「赤石白龍大権現」の石碑に出会う。
赤岩白龍信仰について調べ始める(だいたい8月くらいまで調査)(2)。


北海道大学民俗学研究会

 石仏中心の活動から、赤岩白龍伝説など、民話を中心にした活動へと変化。もはや「石仏ではないな」と思い、「北海道大学石仏研究会」から「北海道大学民俗学研究会」へと改称。
いまだ「研究会」と称する個人的な一人の活動。


北海道大学ぶんぶく茶釜研究会

2023年10月ごろ
縁あって、興味のある方々が集まってくれる。
このことを契機に、「北海道大学民俗学研究会」から「北海道大学ぶんぶく茶釜研究会」へと改称。


北海道大学ぶんぶく茶釜研究会とはどんな「場」なのか

 以上が、ぶん茶研が生まれるまでの変遷です。
 さて、ここからが本題になるわけですが、一体全体、ぶん茶研とはどのような活動を行っているのでしょうか。「ぶん茶研」という名前からは全く推測できませんね。

活動目的
 「ぶんぶく茶釜研究会」という、どうかしている名前の弊会ですが、しっかりと活動目的を持っています。
 それはすなわち、①所属なき活動②アウトプットする「場」、そしてこれら二つを包括して、③サード・プレイス(=変なサークル)であること
これら三つを活動目的としています。

①所属なき活動とは
 所属、これは人間生きていく限り免れ得ない事柄です。大学を例にすると、何かのサークルに所属している、部活に所属している、またそもそも○○大学に所属しているなど、とにかく私たちは所属にあふれて生活しています。この「何かに所属すること」は、自分自身のアイデンティティに繋がり、また所属しているコミュニティ内で人間関係が構築されるなど良い面がたくさんあります。
 しかし一方で、所属は、少し煩わしいもののようにも感じます。所属したコミュニティの中での人間関係(例えば、上下関係)、義務責任感、内輪ノリなど、所属には、少し「なんだかなぁ」と思うところもあります。また、そもそも集団になじむことが難しい、つまり所属することが苦手という方もいるのではないでしょうか。
 このような所属による煩わしさを排した、もう一つの場所として弊会の活動があります。

②アウトプットする「場」
 もう一つが、アウトプットする「場」ということです。
 個人的な印象なのですが、大学生はインプットする機会は多いけれど、アウトプットする機会が少ないように感じます。本は読むけれど、勉強はするけれど、そのことを誰かに話したり議論したりする機会がない。そのことを、サークルの仲間や同じ学科研究室の友人に話すのも気が引ける。
 このような誰かに話したい、議論したいというアウトプットする場として弊会を位置づけています。
 また、このアウトプットする「集団」ではなく「場」である、ということが重要です。集団には所属の煩わしさがありますし、そこにいるのは知っている人です。しかし、場は集団よりも所属の煩わしさは弱いだろうし、そこには、顔見知りの知っている人だけでなく、さまざまな人が訪れます。そのような「集団」ではなく、「場」でアウトプットするということが大切だと感じます。

③サード・プレイス(=変なサークル)であること
 最後は、サード・プレイス(=変なサークル)であること、です。
 サード・プレイスとは、社会学者レイ・オルデンバーグの提唱した概念で、自宅(ファースト・プレイス)でもなく、職場や学校(セカンド・プレイス)でもない、第三の場所という概念です。ぶん茶研は、今までのサークルや部活動とは異なる、第三の場所、サード・プレイスとして存在しています。
 まず、現状の大学サークル(特に北大)を見ると、「普通のサークル」があまりにも多すぎるように感じます。もちろん、「普通のサークル」を何の特徴のないありふれたものとして批判したいのではありません。そうではなく、「普通のサークルしかない現状」を問題視しているのです。①所属なき活動のところでも書きましたが、「普通のサークル」になじめない、溶け込めない、またいつもの「普通」とは違う別の場所が欲しいという人はいると思います。そのような時に、大学内に「普通のサークル」しかなかった場合、そのような人たちを受け止める場所がないことになってしまいます。この状況こそが問題なのです。そこで「普通のサークル」とは異なるサード・プレイスとしてのサークルが必要になるわけです。ここ数年で「トー横」という言葉が聞かれるようになりましたが、「ただそこに行けば誰かがいて、そこでみんなと話しながらお酒が飲める場」としてのトー横(3)をぶん茶研は目指したいのです。
 では、サード・プレイスとしてのサークルとは、どのようなサークルなのでしょうか。次の図を示しながら説明していきます。

 まず、サード・プレイスとしてのサークルは、「変なサークル」としてあるべきだと思います。「普通」という社会の一般常識とはことなる場所であるという意味で、「変」という意味が重要なのです。そして、この「変なことをする」ということは、大学生としての特権だと感じます。社会的な価値観、常識から離れた大学という場所にいるからこそできる活動というのが「変なサークル」なのです。「ぶんぶく茶釜研究会」という、どうかしている名前も「変なサークル」という意味合いを込めています。

北海道大学ぶんぶく茶釜研究会は何をしているのか

 以上のような活動目的を持っているぶん茶研ですが、具体的にどのような活動を行っているのでしょうか。ここではぶん茶研の活動内容について紹介していきます。
①自分の興味のある事柄について発表する
 各自が今、興味を持っている事柄を発表し、皆で議論し合うというものです。これまでのぶん茶研(2023年12月17日現在)では、主にこの活動をメインに行ってきました。
具体的には、
10月18日の例会
「小樽、赤岩信仰について」
11月1日の例会
「ズィヤーラをめぐる考察 エジプト死者の街とインドネシアの比較を通じて」
12月6日の例会
「流行神 流行神の背景と、応仁文明の乱以降の流行神?について」
②読書会みたいなもの
 ①自分の興味のある事柄について発表する、についてはこれまで行ってきましたが、以下②、③はこれからやってみたいことであり、まだ実際には行っていない活動です。
 ②この読書会みたいなものとは、「読書会みたいなもの」であり、「読書会」ではありません。正直、読書会をどのようにするのか、よく分かっていないのですが、おそらく参加者があらかじめ指定された本を読み込み、それぞれが本を読んで思ったことを発表するという形式で行うのでしょう。もちろんそのような読書会も良いとは思いますが、少し面倒くさい。あらかじめ指定された本を読む、つまり予習をするというのは正直、しんどいです。ぶん茶研はとにかく「煩わしさ」を無くすことを活動目的にしているため、このような読書会は極力したくありません(もちろんいわゆる読書会も開いてみたいという気持ちがないわけではないのですが)。
 それでは「読書会みたいなもの」とはどのようなものなのでしょうか。具体的に、「こんな読書会みたいなものをしたい」という具体例を示して説明したいと思います。
・『就活の社会学』『夢と生きる バンドマンの社会学』を読んで、若者論について考えてみる。
 

妹尾麻美『就活の社会学 大学生と「やりたいこと」』晃洋書房、2023年。
野村駿『夢と生きる バンドマンの社会学』岩波書店、2023年。

 現代では、「あなたの将来の夢は何か」「あなたは何になるのか」など「やりたいこと」「夢」を語ることが求められている側面があると思います。そしてその中で、あるひとは学歴に担保された社会的に正しいルート(就活)でそれを語り、またあるひとはその正しいとされているルートを外れてそれを語る(バンドマン)という二つの現象があります。この二つを比べて見えてくるものは何か、ということを主題にした「読書会みたいなもの」です。
 そして、ここからが重要なのですが、このことは大学生、つまり私たち自身が当事者なのです。文系の学生の場合、三年生になるとまさに就活をするわけですし(4)、そして私たちは大学に通っているのですから「学歴に担保された社会的に正しいルート」を歩んでいるわけです。ただ本を読んで感想を言い合うのではなく、「当事者である私たちが普段生活していて思うこと」を話し合うことで、今まで漠然と思っていたことを形にしていくということが、この「読書会みたいなもの」なのです。もちろん、自分の事を他人に話すことは、かなり心理的ハードルの高いものだと思いますが、自分が普段思っていることを話すのですから、わざわざ『就活の社会学』『夢と生きる バンドマンの社会学』を読むという面倒くささはないわけです。
 また、ここ数年のツイッターでは広くさまざまな人たちが「病みツイート」をするようになりました。このような、いわゆる「メンヘラ」やまた「エモ」(5)と言われる現象をも含めて若者論、つまり自分たち自身について話し合う場を作りたいのです。もちろん、若者でない人たち、つまり「若者を経験したことのある人たち」もぜひ参加してほしいです。
③映画観賞会
 
映画鑑賞とは、そのままの意味で映画鑑賞です。ぶん茶研での話し合いの場で話題に上がった映画などを、どこか広い所を借りて鑑賞するということをやってみたいのです。
 具体的には、「『就活の社会学』『夢と生きる バンドマンの社会学』を読んで、現代の若者論について考えてみる。」に関連して、2002年の映画で、塩田明彦監督作品「害虫」(宮崎あおい主演)の鑑賞会をしてみたいです。
 この映画は、家庭や中学校などになじめない北サチ子(宮崎あおい)が、そこから逸脱し自らを破壊していくという物語です。ちなにみ、北図書館に「害虫」のDVDがあります。
④同人誌制作
 同人誌作成もそのままの意味です。何か書きたいものがある人が、書きたいことを書いて本の形にする、そして文学フリマなどで販売するという活動です。
具体的には、
2023年11月11日
東京文学フリマで『グッとくる石仏No1』の販売
2024年1月14日
京都文学フリマで、弊会の機関紙の販売予定

おわりに

 以上が「北海道大学ぶんぶく茶釜研究会とは何ぞや」でした。まだまだできたばっかりのサークルで、活動目的に沿った実践ができているわけではありませんが、興味のある方はぜひ、いらしてください。
おしまい。

注釈

  1. 道外出身者の私にとって、札幌が「帰る場所」になったことが感慨深い。またこの時、「砂箱ブーム」も同時に来ているが、「砂箱ブーム」については『グッとくる石仏No1』を参照のこと。

  2. 赤岩白龍信仰については、『グッとくる石仏No1』を参照のこと。また、『グッとくる石仏No1』にて、赤岩白龍信仰について書いた論考の増補改訂版的な文章を近日公開予定、京都文学フリマでも販売予定。

  3. 佐々木チワワ『「ぴえん」という病SNS世代の消費と承認』扶桑社、2022年、61頁。なお本書は「ただそこに行けば誰かがいて、そこでみんなと話しながらお酒が飲める場」としてのトー横が、どのように変化していったかが書かれている。

  4. 大学院に進学するという選択肢もあるが、そのような選択も主題になりそう。

  5. 大阪大学感傷マゾ研究会『青春ヘラ』などがこのような事柄を扱っている。

なお、北海道大学ぶんぶく茶釜研究会は、
京都大学「サークルクラッシュ同好会」、
中央大学発祥の「だめライフ愛好会」、
大阪大学の「大阪大学感傷マゾ研究会」を参考にしました。



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