星川まさる

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小説「宇宙犬マチ」 最終話

十八 最終 マチ 僕には、おかあさんとおとうさんという家族ができた。おとうさんも、僕の存在をより大切に思ってくれいているみたい。しばらく、打ちひしがれて、落ち込んでいたおとうさんは、悲しみを胸に持ちつつ、なんとか体調を整えて動き出した。おかあさんの分まで……。 僕はその後も地球と人類の動向を調査し、その成果を宇宙司令に報告を続けた。研究は確実に良い方向に動いていた。世界中の人たちは、手を取り合ってウイルス対策に挑み、共存を図れる体制を構築し、つまらない諍いもなくなっていった。

    • 小説「宇宙犬マチ」 第5話

      十四 改革 マチ 一年が経った。 二十九人の仲間は英知を絞り、力を合わせて人間の改革法に挑んだ。共通の思いは地球上の人と生き物と自然を愛しているということ。手法は見つかりつつあった。 しかし、いきなり大変な事が起きた。世界中に強力な新型ウイルスが、蔓延し人が死に始めた。歴史的にみれば、各国がそろって行動し、新型ウイルスに立ち向かうはずなのに、各国のトップが利権を競い合い、その発生原因をなすり付けるという、醜い争いに発展していった。 ますます国と国、人と人、人種間に不信と諍いが

      • 小説「宇宙犬マチ」 第4話

        十二 思い出 マチ 宇宙犬となって地球に来た僕。これまで八年間のことが頭に浮かんでは消え、それが繰り返された。 本当にいろんな所に行くことができた。一番の思い出は、車に乗って一時間半くらいの所にある犬連れのためのリゾートホテルだ。そこには暑い時期に二回訪れた。 寝室が二つある広い部屋。大きなソファーがあって、広いバルコニーもあり、室内から見ることができるのは緑あふれる林。温泉の出る風呂もあって、外が眺められる。もちろん僕は入られない。濡れるのはちょっと苦手なんだ。 そして、ど

        • 小説「宇宙犬マチ」 第3話

          七 結論 マチ 最終の宇宙司令への報告まであと三日。 地球上にいる三十人もの仲間からの報告は全て届いてきている。 その結果は、誰が見ても明らかだった。 でも、でも…… みんなの報告には注釈が付いている。全てにね。 その多くは、彼らが詳細に調べた国のトップや権力者たちには、利己主義が蔓延していて、 このままいくと地球は近いうちにもっと大きな戦争を起こし、破滅に進む。 そして間違いなく宇宙も巻き込んでいく、というもの。 しかし優しく、愛情が深く、平和を求めている一般の人たちがほと

        小説「宇宙犬マチ」 最終話

          小説「宇宙犬マチ」 第2話

          四 情報 マチ 僕たちはどうして犬に宿ったのだろう? 人間になってしまえば、もっと楽に地球のことがわかったのではないか? でも犬であれば、人間を客観的に見ることができる。 それに感情に支配もされないし、 短い間にいなくなっても不自然じゃない。 きっと、いなくなったら、おとうさんとおかあさんは悲しんでしまうだろうけど。 ハッピー兄さんの時みたいに……。 それを思うと辛い気持になる。初めての感情だ。 おとうさんは僕を連れて、いろんな所に行ってくれる。 車に乗ったり、自転車の

          小説「宇宙犬マチ」 第2話

          小説「宇宙犬マチ」 あらすじ~第1回

          【あらすじ】 宇宙全体に悪影響を与える可能性が出てきた地球。その実態を調査するべく宇宙指令から地球に派遣されたリサーチャーたちは、世界中の犬の中に入り込み地球の調査を開始した。日本ではヨークシャーテリアのマチという宇宙犬が調査にあたることになった。人間によって引き起こされる戦争や自然・環境破壊など多くの問題が蔓延する地球は、明らかに宇宙に悪影響を及ぼす存在であることが判明していくが、マチの飼い主ヒロキなど、各国の飼い主たちのあまりに優しい対応に悩む日々が続く。宇宙指令への報

          小説「宇宙犬マチ」 あらすじ~第1回