見出し画像

短編小説 きみに渡せなかったアーモンドチョコ

あの時、きみに渡せてたら違ってたのかな。

いや、結局は同じ未来だったのかな。

そう考えてる自分も嫌になっちゃうよ。


最後に君と出かけたあの日、帰る前に、写真を撮ろうって言ってくれて撮ってくれた。


一緒に出かけてる間も、きみは道路側を歩いてくれようとしたり、荷物を持ってくれようとしたり、最後見送りをしてくれたり、最初から最後まで優しかったよね。

そんなきみに、私の想いを伝えたくて、
バレンタインの日に告白をしようと思った。

以前、電話越しで何気なくアーモンドが好きと聞いて、アーモンドチョコレートを作ったにも関わらず、

それに手紙を書いたにも関わらず、

諦めちゃった。

なぜかというと、その人が住む近くに既に仲の良い女の子がいて、引け目を感じてしまった。

こういうときに、遠慮しちゃうなんて。

きみに渡せなかったアーモンドチョコレートは、私の勇気のなさと、きみに対する想いで、
甘くて、ほろ苦かった。


それから9ヶ月後、やっぱり諦めきれない自分に気づいて告白した。

泣いちゃうね。

もうすでに彼女がいるんだって。

「時間をもどせたら、」なんてできないのに、

頭の中で何度もあの日に巻き戻してる自分がいるんだ。


来月のきみは、彼女の手作りチョコレートを食べてるんだろうか。


そして来月のわたしは、自分で作ったアーモンドチョコを思い出して、きっと泣いているだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?