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悪夢に悩まされる小児科当直あるある 小児科医が語る

■寝る暇もない当直


大学病院小児科の関連病院で、大学病院に匹敵する規模のある病院があります。それだけ大きい病院ですので当直は寝られません。朝方、ようやく当直室のベッドに入れるような病院です。せめて雨が降ってくれればウォークイン患者は少なくなるのですが。

しかし、重症患者は結局、ウォークインするなり救急搬送されてきますので、当直となるとよっぽど覚悟していなければなりません。だから、当直代は高いけれども、あまり当直したくない病院ではあります。しかし、学びの大きな病院です。

寝られない当直。いつ呼ばれるか分からない当直。くたくたになって、その日の日勤を迎えることになるので、寝られなくとも少しでもベッドで横になるしかありません。そして、この病院の規模ですと若手医師、すなわち研修医を終えた3年目4年目医師が持ち回りで常勤勤務をして、その経験者である若手医師が当直勤務をします。研修医のときは給与が保障されていたものの、研修医が終わると無給助手にならざるを得ない。だからこの病院で馬車馬のように働いて、必死で学びながら、生活していくための給与を得るのです。

■空いた時間に眠ると必ず出てくる悪夢


日勤勤務で疲れているからちょっとの合間で寝られるかというと、不安と緊張で寝られません。この病院で寝られるとなると強運の持ち主、もしくはよっぽどの強者か頭のネジが1本抜けているかでしょう。ですので、当直している小児科医は朝方になるとうつらうつら。寝ているんだか起きているんだか。看護師に病棟で呼ばれたのに寝ぼけて救急外来に行ってしまうことや電話で起こされたのに二度寝をしてしまう。はたまた呼ばれてもいないのに呼ばれたと勘違いして救急外来に行ってしまうことも起きてしまうのでした。

そして、この病院当直であるあるなのは・・・。悪い夢見をしてしまうことです。小児科では子どもの点滴、採血や創傷処置などの処置をするときに、看護師が腕を押さえたり、抑制帯をつけて動いたり暴れたりしないようにします。それは、当然、そうしないと危険であるから。必要があってするわけです。

しかし、子どもは痛いのが嫌なので、たとえ必要だとわかっていても必死で抵抗します。その子どもに自分がなってしまう夢を見てしまうのです。自分が押さえつけられて処置をされる夢や俯瞰でそれを見ている夢。しかも、小児科部長が一緒にいたもしくは小児科部長の声がしたなんて逸話も出てしまうのでした。

■悪夢を見なくなることはいいことだが…


「子どもたちのために処置は絶対に失敗するな! 手術と一緒だ。失敗していい処置などないのだ!」と何度も小児科部長に諭され教わり、そう学んでいたから処置のミスを悔いたる思いが出るのでしょう。

翌日、小児科部長に、「どうだった? 昨日は忙しかったか?」と聞かれ、「はい。やはり、忙しかったです。そして小児科部長に教わったことを思い出しながらしっかりと勤務しました」と答えると、小児科部長は満面の笑顔で言うのでした。
「そうか。よろしい。では、回診だ」
白い巨塔のような総回診ではありませんが、当直医のため小児科部長は一緒に朝回診をしてくれるのです。小児科部長ほどの医師と2人きりで接する時間が長いと学ぶことも多いし、濃くなります。

何せ、夢にまで見てしまうほどですから。みな小児科部長を参考に、小児科医は学んでいました。2024年医師の働き方改革は、このような機会も減らしてしまうことでしょう。若手医師はこの道で生きていくなら必死で医学を学び、やり遂げる覚悟が必要です。医師の学びに、この改革はどう影響するのでしょうか? もともと小児科当直はコンビニ受診で寝られないものです。この病院で一冬越せたら1人前だ。なんて日本酒みたいに言われているのです。少なくとも、この病院で悪い夢見をすることはなくなるのでしょうか。

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