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■最強の好好爺な先生


私の上司にまさに好好爺の先生がいます。
笑って何でも受け入れてくれる。笑顔で褒めてくれる。医学生の頃にそんな先生に出会っていたら、きっとナメまくって、下手すりゃ自分より下に見る人もいるかもしれません。

でも研修医のときに、私のことを褒めてくれる先生を裏切れるわけがありません。私を認めてくれる先生なんて、私が研修医の頃にはほとんどいなかったのですから。

上司も若いころは血気盛んで短気で怒ってばかりだったそうなのですが、今では想像がつきません。実際に上司の友人に聞けば、上司はまさに火の玉のような、おこりんぼうだったそうです。

上司は「怒ってばっかりだと人は育たないし、何しろ怒るのって自分自身結構疲れるからね」と、起こらなくなった理由を教えてくれました。

■上司のことを尊敬するようになった出来事


上司に論文にまとめるように言われたのですが、ついつい眠さに負けて期日ギリギリになったことがありました。

「いいよ。いいよ。僕がやっとくからさ。いっつも頑張っているから疲れちゃったんだよね。いつも助けてもらっているし」

今まで私が経験した指導医たちであれば、ぶん殴られるか飛び蹴りされていた案件。でも先生はそんなことをするどころか、自分がやっておくと言ってくれたのです。私は驚いて、この先生に迷惑をかけてはいけないと思いました。

それから私は猛省して、「あの先生に迷惑かけちゃいけない」と眠い目を擦ってでも期日を守るようになったわけです。仕上げるということに関していえば、結果論では一緒かもしれませんが、怒られたくないから仕上げるではダメなのです。怒られたくないという気持ちが強いと、どうしても視野が狭くなります。でも、「先生のためにも頑張らないと」と思うと、視野が広がり、仕上げの状態もよくなるというわけです。

■上司に怒られた思い出


そんな私も上司に怒られた記憶は2回あります。

1度は大学対抗野球大会のこと。2塁ベース上にいた私が、上司の打った大飛球が捕球されると思い、ベース上にいたところ、相手選手が落球して3塁までしか進めませんでした。2塁へと進んだ上司が、3塁にいる私に向かって、「何で、本塁まで行かないんだ!」と血相変えて叫んでいたのに驚きました。

結局は、その後の味方の進塁打で勝ち越しましたが、その後ずっと、「負けたら一生赦さないからな」と怒鳴られたことは忘れられません。

また鍵が壊れたトイレの個室に入っていた上司に気づかず、上司がドアを開かないようにしていたのに、思いっきり開けてしまったことがあります。
「何、開けてんだテメェー!」
この話は飲み会でも鉄板です。仕事上で上司に怒られたことはみなさんあると思うのですが、長いつきあいのある私ですら怒られたことが2回しかないのですから、その先生が起こることはめったにないということです。

■敵わない上司はいつもニコニコ


そんな上司が、中学生の職場体験の担当となりました。

「うちの医局のボスは「ひろあき」って言うんだよ。僕の上司も僕も「ひろあき」なんだ。僕は、ひろくあかるく照らすような人になれって意味で、ひろあきって名前をつけてもらったんだ」
「君もそうなの?」
「じゃあ、ひろあきが4人になっちゃうけど、医者になってうちの医局に来ちゃってよ。医者って人を助ける仕事だよ。君に向いているんじゃないの? 真面目そうだしさ」

何て言っているのを医局で聞きながら、「本当に優しいよな。中学生の相手するのは大変だよな」と思ったものです。

そんな、「ひろあき」君は、上司の「医者になっちゃいなよ」って言葉を信じて、頑張って勉強して医師になりました。私も医師となり、指導医となった今思うのは、自然と上司の姿を目標にしているなということです。私はまだ、腑抜けた若い先生にはついつい怒りがちですが……。

いつもニコニコ。いくら頑張っても超えることのできない上司がいることは、私にとって幸せなことだと思います。

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