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【医療コラム】  医師のバーンアウト  20年勤めた病院を辞めちゃいました。

■コロナ禍に起きた変化


20年勤めあげた病院を辞めちゃいました。

コロナ禍で感染対策などの業務が増える中、みなさんの病院でもかなりの医療従事者が辞めていったと思います。理由は様々あるでしょう。これまでの日常とは大きく変わった時期だったので色々とあります。私も、コロナ禍で環境が変わり、本当はすぐにでも辞めたいと思いました。ですがこんな私のような医師でも、私を頼って診療に来てくれる患者さんがいるからこそ、これまで頑張って来られたのですから、簡単には辞められるわけがありません。

20年も勤めた病院ですし、思い入れもあります。だから人間関係が原因で辞めるのってどう思う?などと、誰かに相談できるわけがありません。実際、そういった相談を別の時期にしたこともあったのですが、「もったいないよ」とか、「人間関係について考え過ぎじゃないの?」と言われたこともありました。結局、誰も私の味方にはなってくれない、そういう経験があるからこそ、余計に相談ができなかったというのもあります。

■悩みが尽きない日々


「やっぱり辞めた方がいい」と思いつつも、事務長のところに行けば楽になると思う日もありましたし、「大丈夫だ。まだまだだ」と思っても、やっぱり不安なる日もありました。そんな日が毎日続くと、生まれて初めて絶望して寝られない、食べられないという経験をすることに。自分がそんな風になるなんて、思っても見なかったので驚きました。

ちょうどその頃、私の児童精神科外来で不登校の子どもが増えていました。2020年度から2021年度にかけて、小中学校の不登校児童生徒数が24万4940人と、前年度より4万8813、24.9%増、文部科学省の調査で不登校は9年連続で増えていました。

コロナ禍で登校日がマチマチとなり、不登校へのハードルが下がった、運動会などの行事がなくなり登校意欲が低下したなど理由が考察されましたが、私も論文に考察したように、登校したところで仲のいい友達が来ていなければ、不登校傾向に拍車がかかります。そんな子どもたちと同じで、私も仲のいいスタッフが辞めたことで、病院を辞める意志が固まりました。

しかし、そこまでの過程には、こんなこともありました。児童精神科外来診療に来た不登校の子どもたちと話すうちに、「そうだよね。友達と遊べないと退屈だよね」などと話すうちに、彼らは自分に正直に生きているのだと分かりました。大人だって自分に正直に生きてもいいのではないか、そんな風に教えてもらったのです。

■苦しみの中で見えてきたもの


コロナ禍で業績が悪化して同調圧力で成果を求められる。やりたくない仕事や合わない人間関係を我慢する。大人ならそれぐらい折り合いつけなくてはならないと頑なに思っていました。しかし、自分の気持ちに偽りを続けた結果、様々な不調が出ました。

100人いたら100人の生き方がある。まさに自分の専門とする児童精神科診療に救われたのです。

自分の気持ちに偽ることなく、辞めてしまう。後悔はないわけではないのですが、スッキリしました。再スタートを切るには、友人の支えが必要でしたが、それも今はいい思い出です。

仲間がいれば大抵のことは乗り切れる。大切な人や仲間たちが、色々な形で支えてくれる。人は絡まり合って、支え合って繋がっている。それを身をもって体感しました。

だから今なら自信持って言えます。
病院を辞めてスッキリ!と。

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