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どうやって精神科医になるの?

今日はちょっと話題を変えて、精神科医側のお話しを。肩の力を抜いて読んでいただければと思います。

これから精神科にかかろうと思っている方、いま現在通院されている方、そもそもご自身を診ているお医者さんはどのようにして精神科医になっているのでしょうか?

大学医学部(6年)〜研修医(2年)

まずは大学受験に合格したら医学部で6年間を過ごします。私立でも国立でも、だいたいどの大学も同じようなカリキュラムを組んでいます。というのも医学部6年生の最後に医師国家試験があるため、どこも国家試験に合格できるようなカリキュラムを組むのです。学生のうちから既に将来専攻する診療科を決めている人は感覚的には2-3割くらいでしょうか?医学部の6年間では全診療科の勉強をして、最後に医師国家試験を受けます。国家試験は選択式の筆記試験で、相対評価なので約1万人の全国の医学部生の中で上位90%に入る必要があります。合格すれば晴れてお医者さんになることができるのです。

研修医は2年間、1ー2ヶ月ごとに様々な診療科を回ります。この各診療科を回る制度は20年ほど前から新卒全員に義務付けられた制度です。それまでは国家試験に合格したらすぐに自身の志望する専門科で働くこともできたのですが、やはりある程度は全身を診ることができなければダメだということで義務付けられた制度です。私もこの制度の世代で当然ながらとても忙しかったのですが、(月10回以上当直!なんて月もありました)、今から振り返ると他科の知識や手技を学べるのはこの時期しかなく、今の診療にも役立っています。またよく聞かれるのですが、研修医も医師免許を持ったお医者さんです。所属している病院から給料も出ています。

専攻医(3年間)

研修医を終えるといよいよ希望する診療科に進むことになります。精神科の場合はほとんどの場合、まずは3年かけて精神保健指定医と精神科専門医の2つの資格取得を目指します。専攻医というのは、専門医の取得を目指してプログラムに登録している医師のことを指します。

専攻医の期間は何をやるのかというと、外来では初診の患者さんのインテーク(予診 https://note.com/clean_orchid568/n/n438c5e976231)をとり、それを元に大学病院の教授や他の専門医の先生の診察に患者さんと一緒に入り、どのようにして診察を進めていくかを学びます。また病棟でも入院患者さんを何人か受け持って、毎週カンファレンスや回診を通して学んでいきます。資格の取得には学会発表も必要です。

3年以上の精神科の臨床経験を経ると両資格の受験資格を得ることができ、その上で講習を受けたり、レポート提出や口頭試問、筆記試験を経て資格を得ることができます。専門医試験、指定医試験ともに合格率は70%前後で、例えその年に不合格でも翌年にまた受験し直すことができます。

この二つの資格がないと精神科医として診療していく上で色々と制限がかかります。精神保健指定医は主に法的な面、人権の面で、精神保健福祉法に則り強制入院を決定する権限などを有します。精神科専門医は主に実際の診療の場面で、専門医でなければ処方できない薬があったりします。

いかがだったでしょうか?精神科医になるには、医学部に入学してから足掛け11年、しかも11年はあくまで最短での話しで、途中で留年したり試験に合格できなかったり、中には節目節目で1年間世界旅行に行くような先生も何人かいました。一度他の科を経験してからやっぱり精神科医になりたいと専門を変える先生もいます。精神科医の場合は案外どこかで遠回りしたような先生の方が、人生経験豊富で挫折も経験していたりして良い先生だったりもします。

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