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医者がほとんど役に立たなかった入院ケース

こんにちは、精神科医のはぐりんです。精神科医のリアルな日常とホンネをお届けしています。
※2分で読めます。

「ちょっと休みたい」、患者さん自らがそう仰って入院になるケースがあります。本人だけでなく、その介護者、双方にとって時に休息が必要となることが実際にはあるのです(レスパイト入院と言います)。

先日レスパイト入院していた、とある患者さん。当初は2.3週間ほどの入院の予定でしたが、何日経っても「もうちょっとかな」と退院を渋ります。話をしていても表情は冴えません。

薬を変えたわけでもありませんし、血液検査など何処か体に異常がある様子もありません。

そんなある日、地域の関係者が集まって、今後の方針について会議を開く機会がありました。その際に本人が通所しているB型事業所の職員が、入院前の本人の様子から就労日数を減らす提案を本人にしたところ、

「嬉しいな、ちゃんと俺のこと考えていてくれたんだ」

と今までに見せたことのないような安心された表情で言われたのです。年を重ねるに連れて(over 60)、知らず知らずのうちに就労が負担になっていたのですね。

地域で実際にどのように生活していて、何が問題となっているのか、普段から関わっている事業所の職員だからこそ気づけた点だったと思います。

入院中に私が気づくべきだったのかもしれませんが、どうしても症状や薬の話に偏りがちで、正直に言うと短期間でそこまで話してくれる関係性にまで至らなかったというのもあります。

我慢強い方や、周りに迷惑をかけたくない、という患者さんだと中々本音を切り出せないし、自身でもなにが問題なのかいまいち把握できていなかったりもします。

「医師が絶対的なリーダーとしてコメディカルに指示を出す時代から、多職種スタッフの視点で色々な考え方を取り入れていく時代に変わりつある。そのためには多職種スタッフに対する理解と尊敬が必要である」(多職種でひらく次世代のこころのケアより)

まさにこれを実感したケースでした。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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