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薬を欲しがる人たち~ベンゾ系ってなに?


こんにちは、精神科医のはぐりんです。精神科医のリアルな日常とホンネをお届けしています。

以前の記事では、「ほとんどの患者さんは薬を飲みたくないと思っている」と書かせていただきました(精神科医は何を考えて薬を処方しているのか)。

今回はそれとは逆に、薬を欲しがる人たち、と題してご紹介したいと思います。


薬を欲しがる人たちは一定数いると言えます。それも特定の薬に偏って欲しがります。

それは「ベンゾジアゼピン系(以下ベンゾ系)」と呼ばれる薬たちです。

デパスやハルシオン、サイレースといった薬は全てベンゾ系です。マイスリーやゾピクロンといった薬も厳密にはベンゾ系ではないのですが、大差ありません。大麻やLSDのような違法薬物とは違い、ベンゾ系はれっきとした医療用医薬品です。

ベンゾ系の薬がどれほど飲みたくなる薬なのか、幾つかエピソードをご紹介したいと思います。

よくあるのが、こちらが薬を数種類出すと、次の外来で「この薬だけは効果があったので飲みました」と患者さんが仰るパターンです。

「ああ、またか」と内心思いながらどの薬か確認すると、その場合ほぼ決まって、ベンゾ系の薬だけ選んで服薬しています。

なぜかというと、効果を実感できる薬だからです。効果がある分、薬の効果が切れるとまたすぐに飲みたくなります。いわゆる依存状態です。

身体が震えたり、頭痛がしたり(身体依存)、中には寝ても覚めても薬のことばかり考え、あの手この手で入手しようとする方もいます(精神依存)。

もう一例、ベンゾ系にまつわるエピソードを。

ほとんどのベンゾ系は7.8年前から、一回の外来で「30日処方まで」と決められました。それまでは、半年(!)処方とか、薬を失くしたからもらいにきた、といったことが通用していました。

近年は「30日分」しか処方できません。ほとんどの患者さんは律義に通院していただき用法用量を守っています(願望込)が、

中には薬欲しさに複数のクリニックから重複してもらっている方がいました。

その方はあまりにも度が過ぎたため、最終的には保健所から各病院へ、「この方が来院しても薬を処方しないように」と文書で通達されました。(その後、離脱症状を起こし入院になりました)。

他にもネット上で売買されていたり、とにかくあの手この手で入手しようとする、飲みたくなるのが、「ベンゾ系」の薬なのです。

依存状態になっている方は、ずっと以前から服用している方が多く、中々減量するのが難しいのが現状です。こちらが減薬を提案すると、中には怒り出してしまう方もいます。頭では良くない薬とは分かっていても、不安不眠が強く、背に腹はかえられないといった様相です。

一方で、医師ー患者間の信頼関係が出来ている中で、薬の副作用や依存性に関して懇切丁寧に繰り返し説明していくと、すんなりと減薬の提案を受け入れてくれる方も多いです。

今回は、流通している割にはイマイチ知られていない「ベンゾ系」について、書かせていただきました。

今現在ベンゾ系の薬を飲んでいて症状が落ち着いている方は、主治医の先生と相談の上、無理のない範囲で減薬にチャレンジしてもらえたら、と思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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