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【読録】あおいけあ物語/加藤忠相

世の中は超高齢化社会が到来しているけど、介護の世界ってまだ40代の僕にはどこか他人事でした。
数年前に父が他界しましたが、それまで訪問介護員の方がとってもよくしてくださって、父もその方と会うのを楽しみにしていました。
この漫画を読んでふとその時の光景を思い出しました。

○知らなかった介護の常識

ごく一部の施設で利用者への虐待などが問題化しているけれど、一般的な介護施設は利用者に寄り添った介護がなされているものだと思っていました。
でも「寄り添った介護」の本質を考えるとき、食事から睡眠、排せつまですべてが管理されている介護って利用者が本当に求めていることと言えるでしょうか。
どんな状態にあっても自分の意思で行動したいし、好きなことをしたい。
自分だったらそう思うだろうな。
でも現実の介護の世界は少ない人員で効率的に「業務」をこなさなければならないためか、支配管理型のサービスが一般的だそうです。

〇「あおいけあ」の介護

そんなことへの疑問から、マニュアル化しない介護に取り組んでいるのが、この漫画を監修した加藤忠相さんが運営する「あおいけあ」です。
認知症ケアをマニュアル化せずに、一人ひとりの心を掴んでその人の「正解」を探し求めていくそうです。
だから酒もタバコも禁止していないし、入浴や食事を強制することもない。
さらに素晴らしいのは本当の意味での自立を支援しているところ。
その人ができることを探して、徹底的に支えるそうです。できないことをできるようにするのではなくて、元々その人がもっている特技や経験などを含めたパーソナリティに基づいて、やりたいこと、できることをできるようにするのが「あおいけあ流」の介護なのです。

〇自分の仕事に置き換えてみると

「あおいけあ」の考え方を私の仕事である地方公務員の仕事に当てはめてみました。
スタッフと施設利用者の関係は公務員と住民の関係に似ています。サービスを提供する方と受け取る方の関係です。
従来の「支配型・管理型」の介護は、住民のために、と言って多額の税金を投入して画一的な行政サービスを浅く広く提供するよくある行政のスタンスにそっくりです。
良かれと思って様々なところに介入して補助金やら交付金やらハンズオン支援やらを実施するのですが、行政に頼ることが普通になってしまった住民は、自分たちで考え、行動し、問題を解決する力がなくなっていってしまうのです。
結果として地域のコミュニティはバラバラになり、街としての機能も喪失していくことになります。
だから「支配型・管理型」の行政から脱却し、住民が自立して都市を経営していくことを支えることに徹していくことが、これからの行政に求められることなのではないかと考えます。
もちろん行政にしかできない仕事はきっちりとしたうえで。
住民の自立支援をそれぞれの地域に寄り添ってやっていくこと、地域に不足していることを補うことばかりに注力するのではなく、地域のストロングポイントを見極めて生かせるようにアシストすることこそ行政の役割だと思うのです。

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