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ヨガ教室で泣いた日 ◇うつ闘病記 その6◇

時短勤務になり、17時には帰宅するようになったが、早く帰れて時間ができたからといって、心が休まるわけではなかった。
家で布団をかぶって寝ていても、時間の流れがあまりに遅く、それはそれでつらい。

◆◆◆

活字を読むのはきつかったが、うつ改善法を探す時は別だった。血まなこになってスマホで探していると、ヨガで回復した人の体験談を見つけた。

発症前、毎週日曜日にヨガ教室に通っていた。私が受けていた初心者向けクラスの先生が、なんとも表現しがたい素敵な波動を発している女性で、毎回レッスンを受けた後は幸福感で満たされた。
2年ほど通っていたが、うつを発症してから続けられなくなって解約し、ヨガから離れてしまった。

家で体を休めていても苦しいのなら、ヨガ教室に行って体を伸ばしたり、呼吸を整えたり、瞑想の時間を持ったりするほうが、回復への道が開けるんじゃないだろうか。
そう思い、ヨガを再開することに決めた。

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とりあえず再入会はせず、単発で参加してみることにした。
16時に会社を出て、なんとか時間をつぶし、19時からのレッスンに向かった。電車に揺られながら、乗客の誰もが平常心を保っていることが不思議でたまらなかった。
朦朧としながら、スタジオのある有楽町駅に降り立った。

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ウェアに着替えて隅っこのソファーに座り、開始時間まで待つ。同じく準備を整えて、談笑しながら待機している女性たちが輝かしく見える。

自分と他人との距離が果てしなく遠く感じる。同じ空間にいても、自分だけ別世界にいるような、不思議な感覚だった。

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久しぶりに会う先生が笑顔で迎えてくれて、少しほっとした。
ヨガマットの上に座り、放心状態で開始時刻を待つ。1時間15分のレッスンの間、平常心を保てるだろうか。

ヨガマットとブロック、床の木目、BGMを流すステレオ、ペットボトルの水、タオル、観葉植物、天井・・・。
どこを向いても、何を見ても、目に映るものすべてが怖いのは相変わらずだった。

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先生の心地良い声を聞きながら、おそるおそるゆっくりポーズをとっていく。少しずつ体がほぐれて身も心も落ちつくかと期待したが、一向に変化は表れない。
自分の体が自分のものであるという確かな感覚がない。

◆◆◆

最後にあお向けになってシャバーサナ(屍のポーズ)に入っても、状態は良くなっていなかった。
マットとブロックを片づけ、教室を出る前にヨロヨロと先生に近づいていった。

「このところ体調が良くなくて・・・自律神経が乱れているみたいで・・・」

先生は優しく包みこむように話を聞いてくれるが、うつ病という言葉を発することはできず、思わず涙があふれ出た。

若い女の子が2人、「あ、泣いてる」「どうしたんだろう」というように、遠くからこちらを見つめていた。

◆◆◆

ヨガを続けてうつを治すと決心した。
「これからは毎週通います。週2日ぐらい来ようと思います」
そう先生に伝えたが、結局その1回きりで終わってしまった。

続けなければ効果が出るはずはないのだが、定期的にヨガレッスンに通える状態ではなかった。

◆◆◆

動いても地獄、寝ていても地獄。

どうすればいいのだろう・・・。


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