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運命の目黒駅

優は目黒駅で恋に落ちた。

彼女は音楽を聴きながら、黒髪のポニーテールを揺らして
リズムに合わせて歩く姿が美しかった。

優は彼女がどこから来て、どこへ行くのか知らなかった。

彼女が何を考えて、何を感じているのか知らなかった。
彼女の名前も、どんな音楽を愛しているのか知らなかった。
優はただ一つだけ知っていた。

彼女が同じ高校の学生である事だけを。

優は毎朝、目黒駅で彼女を見かけるようになった。
優は自分の登校時間を変えて、彼女と同じ時間に駅に着くようにした。

優は高校三年生だった。
受験や進路や将来という言葉が飛び交う季節だった。

それらにまったく興味がなかった。
今はただ一つだけ興味があった。

彼女に話しかけることだけに。

ある日、優はついに決心した。今日こそは彼女に声をかけると。
優は駅で彼女を待った。彼女が現れると、優は緊張しながら近づいた。

優は勇気を振り絞って口を開いた。「すみません」と。

彼女は驚いたように優を見た。
彼女の瞳は深い青色で、優はその中に溺れそうになった。

「あの、あなたに話しかけたかったんです」

と優は続けた。彼女は黙って聞いていた。

「僕は毎日、この駅であなたを見かけているんです。あなたのことが
 気になって、どうしてもお名前を聞きたかったんです」

と優は正直に告白した。

彼女は少し笑って

「私の名前は優花です、制服一緒だし同じ高校だよ」と答えた。

「優花さん」と優は呟いた。
「素敵な名前ですね」と優は褒めた。

優花は「ありがとう」と言って、頬を赤く染めた。

「あなたの名前は?」と優花が尋ねた。

「僕は優です」と優は答えた。

「優くん」と優花は呟いた。

「ねえ、私達の名前って似てるよね」と優花が言った。

「そうだね、両方とも優が入ってるね」と優が言った。

「それって何かの縁じゃない?」と優花が言った。

「そうかもしれないね」と優が言った。二人は目を見合わせて笑った。

二人はしばらく話をした。
音楽の趣味や好きな映画や本など、共通点が多くて驚いた。
二人ともロックが好きで、マイナーなバンドのファンだった。

優は優花が自分と同じ高校に通っていることも知った。
優花は一年生だった。優は自分より二つ年下の彼女に惹かれていった。

「じゃあ、また明日会えるかな?」と優が聞いた。

「うん、会えるといいね」と優花が答えた。

「じゃあ、今日はこれで」と優が言って、手を振った。

「またね」と優花が言って、手を振り返した。

二人は別れて、それぞれの電車に乗った。

優は窓から外を見ながら、幸せな気持ちで満ちていった。

彼女に話しかけてよかったと思った。

彼女も自分のことを好きになってくれるかもしれないと思った。

これが二人の出会いの物語だった。

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