「とある場所」に幸福が住んでいた。
「とある場所」とは「楽園」のこと

ある日、「どこからともなく」
「悲しみ」が「名もない場所」からやってきた
幸福は悲しみに立ち去るように頼んだ

「とある場所」と呼ばれる場所から
「悲しみ」は「名もない場所」にもどり
それ以来、人の心に住み着くようになった

親切で思いやりのある人の心に
彼らは誰かを追い出すようなことは決してできないから

だからあなたが痛みを感じたら

正気を失った人の苦しみを思って心が痛むなら

誰かの目に涙が浮かんでいるのを見て心が痛むなら

そういう人を受け入れて力になりたいという気持ちがあるなら

あなたはまちがいなく
心のなかに「悲しみ」をかくまっている

『ぼくは考える木―自閉症の少年詩人と探る脳のふしぎな世界』より
詩8「考える木」
ティト