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七十二の瞳

本日一時間目のわたしの授業は
景気の話


さて、今日は先週の続きです
みんな前回のプリントを
机の上に出してね
もう出来上がってる?

ま~だで~す……


じゃあ、まず
続きを仕上げてね
何分かかる?

20分!

えっ、そんなに要るかなあ~?
じゃあ、まあ、がんばってやってね。










経済分野は嫌いだ という少年たち
授業は 悪い夢の中を走るように
進まない












ゆっくり あるいは どんより
プリントに取り組む生徒たちから
目を離して
ふと窓の外に目をやる


すると


あれ?
こんなところに
人がいる
窓のすぐそばで
作業している


って

ここ 2階だよね??








ヘルメットに作業着姿の 若い人は、
中庭の構造物のてっぺんで
自分の乗っている構造物を 解体している

先日の学校祭のために建てた構造物を
今 解体しているんだ
こんな高いところで 作業
わっ、怖そう……
何科の何年生だろう?










ねえ、あれ、誰?
と わたし


わたしの声に反応して
みんなは
ぼんやりした目で そっちを眺める……










みんなの目が 急に 
二倍の大きさに 開いた









おいっ、カーテン閉めろっ!!


窓際の席の 少年たちは次々に
カーテンを閉め始める


????????

となるわたし








何ごと?
























生徒かと思った そのヘルメットは
ハンド部のT先生

だれた授業風景を見られると
後で「色々と面倒なことになる」
んだそう







でも、そんなにあからさまに閉めた方が
後で「もっと面倒なこと」にならないですか?

朝からカーテンは不審すぎる……









嘘とごまかしは下手、 な少年たちなのである





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